現代の音楽制作に無くてはならないソフト音源。オールマイティに使えるものから特定のジャンルを象徴する製品、他者との差別化を図れる斬新な音源までそろい、まさに百花繚乱です。そうした数多くの選択肢の中から、プロの現場でリアルに重宝されているものとは何なのでしょうか? 本特集では、著名クリエイター18名に“マイ定番ソフト音源”を挙げていただき、その活用方法を語ってもらいます。
松浦雅也
[松浦雅也]アーティスト/ゲーム・デザイナー。1980~90年代にPSY・Sのリーダーとしてサウンド制作の核を担う。1993年にはゲーム/音楽制作会社の七音社を立ち上げ、以降SONY PlayStation用ソフト『パラッパラッパー』など数多くのタイトルを開発
NEIL THAPEN Pink Trombone
NEIL THAPEN Pink Trombone
(無償)
チェコの数理研究所(Institute of Mathematics, AS CR)の調査員、Neil Thapen氏が手掛けたソフトウェア。人間の声道をモデルにしており、マウスや指などで操作画面に触れて、各部を動かすことで発音します。その操作画面は、口からのどにかけての断面図のようなグラフィックで、右がくちびる側、左がのど側。表記は上から、nasal cavityが鼻腔、lipはくちびる、hard palateは硬口蓋(口内上部の手前側)、soft palateは軟口蓋(口内上部の奥の方)、oral cavityは口腔(口蓋と舌の間の空間)、throatはのど、tongue controlは舌となっています。tongue controlでは母音の鳴り方を調整でき、oral cavityを狭めれば子音が強まりますが、完全に閉じると無音に。lipやthroatを動かして音色変化させることも可能で、画面下部のvoice box controlではピッチなどの変更も行えます。インターネットで公開されているので、興味のある方はチェックしてみましょう。
何のために使うソフトなのかは不明ですが
余人をもって代えがたいところが魅力だと思います
Pink Tromboneは、人間の口腔形状をシミュレートすることに特化したものです。これにしか無い独自の部分と思えるのは、人間の口腔がどのように発声しているのかを視覚的にも観察することができるところ。そしてオープン・ソースであり、余人をもって代えがたい部分に魅力を感じています(笑)。
音楽の制作には今のところ使ったことがありませんが、今後、使用する可能性はゼロではありません。そもそも音楽の制作にソフト音源をほぼ使っていません。そこに関しては、むしろソフト音源からはどんどん遠ざかっているように思えます。正直、このPink Tromboneは、本来何のために使うソフトなのかは不明なので、何をやっても変わった使い方になるような気がします。
製品情報
DAWに立ち上がる“マイ名機”の使い方
これが私の定番ソフト音源!
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