Part④ User's voice〜松浦雅也&瀬川英史

本特集の最後は、Seaboardをいち早く手に入れ、仕事にも活用しているクリエイターへアンケートを実施した。今後ますます多くのユーザーへ浸透していくであろう本機。まずは実際に本機を試奏してみてはいかがだろうか。

コンティニュアスなデータ入力に
フィジカルなニュアンスを加えることができる

松浦雅也:音楽家/プロデューサー。1983〜96年、PSY・S(サイズ)で活動後、1996年にリズム・ゲームの礎、『パラッパラッパー』をプロデュース/考案する。2014 年には、配信付アナログ盤『beyooond!!!』をリリース。2016年にiOS、Android両対応の音楽ゲーム・アプリ『古杣(furusoma)』を発表した 松浦雅也:音楽家/プロデューサー。1983〜96年、PSY・S(サイズ)で活動後、1996年にリズム・ゲームの礎、『パラッパラッパー』をプロデュース/考案する。2014 年には、配信付アナログ盤『beyooond!!!』をリリース。2016年にiOS、Android両対応の音楽ゲーム・アプリ『古杣(furusoma)』を発表した

Q1 所有しているSeaboardのモデルは?

A1 Seaboard Grand Studioです。

Q2 手に入れたきっかけ、購入の決め手は?

A2 キーボードでの演奏表現を飛躍的に拡張できそうだったから。

Q3 手に入れてからどんな使い方をしていますか?

A3 ライブでは使用していますが、普通の鍵盤とは異なる奏法での表現となるの、その緊張感/失敗感を楽しんでいます(笑)。音源制作ではまだ使用していません。

Q4 特に活用している機能、便利(革新的)だと思う機能を教えてください。

A4 見た目のインパクトもさることながら、単なる“おもちゃ”に終わらないために付属しているEquatorの存在は重要で、Seaboardの機能や構造について非常によく考えられたソフトウェアだと思います。ある1つの音色プログラムを単に1オクターブ・トランスポーズしようとしたら、その音のキャラクターにひも付く要素がたくさんあって、簡単にはできないことも分かりました。

Q5 実際に使ってみて、こんなミュージシャンにオススメしたい、という特徴がありましたら教えてください。

A5 ある程度鍵盤が演奏できる人ならすぐに生かせると思いますが、私の場合、各指がいかに均質に打鍵していなかったがよく分かりました。また、演奏できない人でも、今までグラフィカルに描いていたコンティニュアスなデータ入力に、もっとフィジカルなニュアンスを加えることができるでしょうね。ちょうどCGアニメーションで言う、“手付け”と“モーション・キャプチャー”の歴然とした違い、と言ってもいいかもしれません。

Q6 今後Seaboardを、どう活用していきたいですか?

A6 私のような演奏スタイルには多分Riseの方が向いていると思うのですが、左手でコントローラーを操作してしまうと元の木阿弥な気もしてですね……その辺り思案中です。また、Equatorにプログラムされているスペーシーな音色がとても魅力的なのですが、あまりそのような音を自作では使用していないので、このミスマッチをどうするか、も思案中です。

▲2015 年9月にグローリアチャペル キリスト品川教会にて行われた松浦のソロ・ライブ“Live Machinger”。こちらで松浦は、Seaboard Grand Studio を使用した ▲2015 年9月にグローリアチャペル キリスト品川教会にて行われた松浦のソロ・ライブ“Live Machinger”。こちらで松浦は、Seaboard Grand Studio を使用した

 

手を離さず複数のシンセのパラメーターに
アクセスできるのが革新的

瀬川英史:1986年CM音楽の作曲家として活動開始、現在までに2500本以上のCM音楽を手掛ける。執筆活動にも積極的に取り組み、近年は劇伴作曲家としての活動の場を広げている 瀬川英史:1986年CM音楽の作曲家として活動開始、現在までに2500本以上のCM音楽を手掛ける。執筆活動にも積極的に取り組み、近年は劇伴作曲家としての活動の場を広げている

Q1 所有しているSeaboardのモデルは?

A1 Seaboard Rise 49です。

Q2 手に入れたきっかけ、購入の決め手は?

A2 Seaboard Grandが発表されたときから、コントローラー好きとしてはずっと気になっていたんです。ただ5D Touch以外にフェーダーなどのコントローラーがないと実際の仕事では使い難いかなと思って見送りました。88鍵サイズがドーンと仕事部屋に来ても、置く場所もないですし、ピアノ鍵盤の変わりに使うのはやっぱり無理があるかなと思っていたので。その後Riseが出て、49鍵サイズという大きさと左側にコントローラーが付いたことが主な購入の決め手です。試奏せずに注文しました。

Q3 手に入れてからどんな使い方をしていますか? 

A3 主にパッド系で使っていることが多いと思います。シンセのモジュレーション・ホイールを触らずに鍵盤からビブラートのデプスやLFOのコントロールをできた方が自然なのになと、ずっと思っていたので。Pressをフィルターにアサインすることが多いですね。意外とマリンバ系の音色とかプラック系の音色を鳴らすときに“たたいて”倍音を変化させるプログラムを書いても使いやすいです。後はワブルベースのLFOのコントロールにPressやSlideを使うと気持ちが入りやすいです。

Q4 特に活用している機能、便利(革新的)だと思う機能を教えてください。

A4 Keywareから手を離さずに、複数のシンセのパラメーターにアクセスできるが革新的だと思います。昔から、ブレス・コントローラーやエクスプレッション・ペダルなどがありましたけど、どれもすぐに飽きてしまって……。RiseのKeywaveを押し込む柔らかさと深さは本当によくできていると思います。

Q5 実際に使ってみて、こんなミュージシャンにオススメしたい、という特徴がありましたら教えてください。

A5 僕のように本来はギター弾きなんだけど、仕事はキーボードでデータを作っているような人に向いてると思います。弾いた後に、もうワン・アクション、ツー・アクションしてサウンドを変化させるのは、個人的にはギターのフィーリングに近いと思うんです。

Q6 今後Seaboardを、どのように活用していきたいですか?

A6 最近、EXPERT SLEEPERSのFH-1を使ってモジュラー・シンセをコントロールすることを始めました。RISEもモジュラー・シンセも実際とてもフィジカルなデバイスなので相性は良いと感じています。

▲瀬川のプライベート・スタジオにおかれたSeaboard Rise。最近はUSB MIDIホストのモジュール、EXPERT SLEEPERS FH-1と接続し、モジュラー・シンセをコントロールしているという ▲瀬川のプライベート・スタジオにおかれたSeaboard Rise。最近はUSB MIDIホストのモジュール、EXPERT SLEEPERS FH-1と接続し、モジュラー・シンセをコントロールしているという

 

サウンド&レコーディング・マガジン2016年8月号掲載)