ミックス/マスタリングに特化したソフトやポストプロダクション向けのオーディオ・リペア・ツールなど、iZotopeの製品は多岐にわたる。ここでは国内外で活躍する8名のクリエイター/作曲家/エンジニアに登場いただき、普段彼らがどのようにiZotope製品を使用しているかを語ってもらった。既にiZotope製品を使っているユーザーから未体験の読者まで、iZotope製品を試してみたくなるようなTips/ノウハウ集をお届けしよう。
Kuniyuki Takahashi
Recent Work
レコード需要が高い昨今、アナログ用のマスタリングにかかわる人も増えています。ここでは、レコード用のマスタリングに使えるTipsをお届けしましょう。登場プラグインは、iZotope Ozone 9のEqualizer/iZotope Insight 2です!
Equalizerでハイカットを入れてレコード用にマスタリング
20kHz付近からハイカットを入れる
私はよくレコード用にマスタリングをするのですが、手元に届いた音源を確認すると、高域に結構なレベルが乗っていることが多いのです。このことはCD/デジタル配信では特に問題無いのですが、レコードの場合だと音圧を突っ込むのが難しくなるというデメリットになり、再生時には雑音となることがあります。そこでこの問題を解決するときに使うのが、マスタリング・ツールOzone 9のEqualizerです。
まずは、16〜20kHz辺りにハイカット・フィルターを施します。また、アナログ・リズム・マシンのハイハットやシンバルなどが多い楽曲だと、17〜18kHz付近に特定のピークがあることが多いので、ベル・タイプのEQでディップします。この辺りは、実際に聴いて耳に付くところを探っていくのも大切でしょう。
Ozone 9の良いところは、EQの精度が高く、程良く効いてくれるということろ。だからずっと愛用しているのかもしれませんね。
Insight 2のベクトル・スコープで低域の位相ズレをチェック
位相ズレの周波数帯域をEQで探す
レコード用のマスタリングで気を付けることの2つ目は、低域の位相ズレ。低域から中域、具体的には20〜300Hz辺りの帯域に逆相成分が入ってしまうと、レコードで再生したときに針飛びの原因となってしまいます。そのため、これは必ずチェックしないといけない項目なのです。
ここでは、先述のEqualizerと高機能なメーター・プラグインInsight 2、そしてOzone 9のモジュールでもあるステレオ・イメージャーImagerを使います。まずはマスター音源にInsight 2をインサートし、ベクトル・スコープを見ながら楽曲を再生してみましょう。ベクトル・スコープが大きく左右に振れたところが、逆相成分のある個所となります。
今度はこれがどの周波数帯域にあるのかを確認したいので、ループ再生しながらOzone 9 Equalizerの画面を開きます。そしてスペクトラム・アナライザー上で、Q幅を狭めたベル・タイプのEQをマウスで動かしながら、問題の帯域を探していきましょう。このとき、キーボードの“option”キーを押しながらスペクトラム・アナライザー上のEQポイントをクリックすると、その部分だけソロで聴くことができて便利です。
自身で録音した素材の位相ズレに注意
一通り調べた結果、位相ズレは307Hz付近で起こっており、キックが原因だったということが分かりました。仕上げにImagerを追加して、低域のステレオ感を狭めたら終了です。念のためにもう一度、Insight 2のベクトル・スコープで確認すれば、なお良いでしょう。これでレコードの針飛びの原因となる、中低域の位相チェック&修正が完了しました。
ダンス・ミュージックに関して言うと、市販のサンプル素材を使っている場合、位相ズレを心配する必要はないでしょう。どちらかというと、自身でマイクを立てて楽器をレコーディングしたオーディオ素材の方が、位相ズレが起きる確率が高いように感じます。そのため、自身で録ったオーディオを楽曲に使うときは、その辺りにも気を付けてみるとよいでしょう。
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