iZotope 私はこう使う! D.O.I. × Neutron 3&VocalSynth 2

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 ミックス/マスタリングに特化したソフトやポストプロダクション向けのオーディオ・リペア・ツールなど、iZotopeの製品は多岐にわたる。ここでは国内外で活躍する8名のクリエイター/作曲家/エンジニアに登場いただき、普段彼らがどのようにiZotope製品を使用しているかを語ってもらった。既にiZotope製品を使っているユーザーから未体験の読者まで、iZotope製品を試してみたくなるようなTips/ノウハウ集をお届けしよう。

 

D.O.I.

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【Profile】Daimonion Recordingsを拠点に活動するエンジニア。ヒップホップを中心に多彩な音楽に精通し、国内外のさまざまなプロダクションに参加している

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 私はミックス時にiZotope Neutron 3のマスキング機能とEqualizerのダイナミックEQを組み合わせ、キックとベースを一体化させるテクニックを使っています。またiZotope VocalSynth 2を使った簡単なTipsも紹介しましょう。

 

キックとベースをすみ分けるNeutron 3のマスキング機能

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チャンネル・ストリップ・プラグインのNeutron 3。Equalizerにはマスキング機能が搭載され、マスキングが頻発する周波数帯域を視覚的に確認することができる

マスキングされた周波数帯域を視覚的に確認

 音のカブリ=マスキングと言えばドラムのキックとベースが定番ですが、これまで私はキックをトリガーとしたサイド・チェイン・コンプをベースにかけてマスキングを解消していました。しかし、これではサイド・チェイン独特のうねりが強過ぎたりして、狙ったサウンドにならないことが多かったのです。そこでチャンネル・ストリップ・プラグインNeutron 3に内蔵されたマスキング機能を使って、キックとカブっている周波数帯域を視覚的に確認し、その帯域にのみベースがリダクションするような処理を施します。具体的には、Neutron 3に搭載されたEqualizerのマスキング・メーターを使ってマスキングが頻発する周波数帯域を見つけ、そこにダイナミクスEQをかけるということです。

 

EqualizerではDynamicモードを使用

 まずは下準備として、キックとベースのチャンネルにNeutron 3をインサートし、Equalizerを立ち上げます。ベースにおけるEqualizerの画面では、上部中央にあるマスキング・メーターの操作項目(赤枠)からマスキングしたいチャンネル、ここではキックを選択しましょう。

 

 曲を再生すると、ベースにインサートしたEqualizerのスペクトラム・アナライザーにベースとキック、それぞれの周波数特性と、オレンジのハイライトが表示されます。オレンジ色のラインがベースで、グレーのラインがキックです。またオレンジのハイライトが明るいほどマスキングが強く発生していることになるので、そこをEQで調整します。ここでは、DynamicモードとSidechainモードをオンにし、スレッショルドをちょうど良い値に設定することがポイント。この例ではキックが鳴るたびに、マスキングの強いベースの86Hz付近がリダクションされるようになります。

 

ハイライトの感度は調整可能

 これで通常のサイド・チェイン・コンプをかけたのとは一味違う、キックとベースが一体化したようなサウンドを作ることができます。ベースの音量変化が少なくなり、キックとベースの良さを生かしたミックスが可能なのです。

 

 ちなみにマスキング・メーターの操作項目にあるSensitivityをクリックすると、ハイライトの感度を調整することが可能です。感度が高いほど、ハイライトに表示されるマスキングの量が増えていくので、分かりやすいですね。いろいろな感度で調整してみるといいでしょう。

 

上モノとのカブリを解消しボーカルを明りょうに聴かせる

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シンセで鳴らしたコードに使ったNeutron 3のEqualizer。ボーカルとのマスキングが強く表れている500Hzと2kHz、3kHz付近では、ダイナミックEQでの処理が施されている。ボーカルの入力信号によってゲインが変化する設定だ

Jポップのサビでも効果的

 先述のキックとベースの低域でのマスキングを解消するテクニックを、ボーカルと上モノに対しても応用することができます。例えばJポップのサビでは、ボーカルの後ろでギターやピアノ、シンセ・パッド、ストリングスなどが重なる場合も多いでしょう。オケが分厚過ぎてこれではボーカルがどうしても抜けてきません。

 

 ここではコード弾きのシンセとボーカルのトラックにNeutron 3をインサートして、両者にEqualizerを立ち上げます。ボーカルにおけるEqualizerの画面では、マスキングしたいシンセを選択しましょう。

 

ダイナミックEQで双方の音量変化を最低限に

 あとは曲を再生して、ボーカルにインサートしたEqualizerの画面でオレンジのハイライトを確認し、EQ処理をしていきます。EQではDynamicモードとSidechainモードをオンにしたEQを、500Hzと2kHz、3kHz付近にセット。これで曲を再生して見ると、ボーカルが一気に明りょうに聴こえ、かつ後ろのシンセ・コードもしっかり聴こえるようになりました。

 

 この方法の良いところは、マスキング機能で識別した帯域のみをダイナミックEQで処理するので、両者の音量変化を最小限にとどめられることです。手順も簡単なので、ぜひNeutron 3を使ってみてください。

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歌声を格上げするVocalSynth 2のモジュール群

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ボーカルをロボット・ボイスやトークボックス・サウンドなどに加工できるマルチエフェクト・プラグイン、VocalSynth 2。画面最上段の中央にあるAuto Modeをクリックすると、MIDIモードやSidechainモードに切り替えることができる

Biovoxでボーカルに倍音成分を付加

 最後は、iZotope VocalSynth 2のTipsを2つ紹介。VocalSynth 2は、ボーカルをロボット・ボイスやハーモニー、ボコーダー、トークボックス・サウンドなどに加工できるプラグインです。画面上段には5種類のモジュールが搭載され、それぞれ単体や複数で使用することができます。

 

 まずは画面上段の左端にあるBiovoxから。Biovoxは鼻音やブレスを足すことができるモジュールです。ここでよくいじるパラメーターはBreathで、これをボーカルにかけると、歌声を良い感じに盛ることができるのです。Breathの量は上げ過ぎると極端に変わるので、オケ中で聴いてもあまり気付かない程度で十分でしょう。よく世間で歌がうまいと言われる歌手の声には倍音成分が入っていることが多いので、それを参考にしました。簡単にボーカルを上手に聴かせることができます。

 

機械的なハーモニーを生成するPolyvox

 次は画面上段の右端にあるPolyvox。これは、ボーカルに基づいてハーモニーを生成する音声ジェネレーターです。ここではFormantやCharacterをいじると機械的でトリッキーな効果が得られます。

 

 最近よくある、すき間の多いプロダクションにおけるボーカルなどに、このようにPolyvoxをうっすら重ねてあげると、すごく近未来な雰囲気が演出できますね。曲の構成を考慮して、“Aメロ→Bメロ→サビ”のBメロなどで使用すると、曲にメリハリが付くのでよいでしょう。

 

 ちなみにVocalSynth 2にはMIDI情報を元にするMIDIモードや、サイド・チェインの入力信号に基づくSidechainモードがあります。これらを使うと、ボン・イヴェールやカニエ・ウェストが使っているような多重コーラス・エフェクトも作れますので、ぜひチャレンジしてみてください!

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