ミックス/レコーディングから作曲まで幅広く活躍するNagie氏。AI搭載型のプラグイン・エフェクトを多用する彼に、これらの使い方のほか、未来系プラグイン・エフェクトに対して思うことなどを伺った。
AI搭載型などのマルチプラグインは便利ですが、それがどのような処理をしたのかを分析するのが大切
【Profile】レコーディング・エンジニア/プログラマー/作編曲家。aikamachi+nagie、ANANT-GARDE EYESとしても活躍。Vocaloid『IA-ARIA ON THE PLANETS』の開発に携わる。
ーAI搭載型やマルチエフェクトなど、年々便利なプラグインが増えてきたように思います。
Nagie そうですね、特にワークフローを効率化してくれるプラグインは重宝しています。AIが自動で音作りしてくれる機能は、それぞれの癖を知った上で、適材適所で使うのがお勧めです。例えば、IZOTOPE Ozone 9を使うと、どの楽曲でも似たような雰囲気のサウンドになるため、私はそのほかのエフェクトでさらに癖を付けています。
ーずばり、Nagieさんのお気に入り未来系プラグイン・エフェクトは?
Nagie SONIBLE Smart:Compです。サンレコの製品レビューがきっかけで存在を知り、試したら良かったので購入しました。AIが2,000以上の周波数帯域にわたって入力信号を分析し、常に最適なパラメーター設定を自動で行ってくれるのですが、それがとても自然なサウンドになるんですよ。
ーどのように使っていますか?
Nagie ボーカルをトリガーにしたサイド・チェイン・コンプをシンセやギターなど、ボーカルの帯域とカブリそうなパートにかけています。ボーカルをくっきりと聴かせたいときに便利です。このときのポイントは、サイド・チェイン・コンプを深くかけ過ぎないということ。あくまでも自然にやることが大事です。コンプのかかり具合はSensitivityノブで調整でき、最大値の150%に設定すると、マルチバンド・コンプの効果をかなり実感できます。
ーそのほかでお薦めの未来系プラグインは?
Nagie マルチエフェクトのOUTPUT Movementは面白いですね。またIZOTOPE Neutron 3、RX 8、Ozone 9は、まさに未来系プラグインにおける“3種の神器”。特にNeutron 3のTransient Shaperはアタックを調節したいパートに対して自由に処理できますし、EQとコンプを一緒に使うような感覚なので、非常に扱いやすいです。
ー主にどのようなパートに使っていますか?
Nagie ドラムのキックです。3バンドに分け、低域のアタックを強調してリリースは控えめにします。中域では主に7〜800Hz辺りの出し具合を調節し、高域ではリリースを抑えていますね。Transient Shaperだけでうまく音作りができれば、EQやコンプなどほかのエフェクトを使わずにミックスを済ませることも多いです。
ーこれからの未来系プラグインについて思うことは?
Nagie 個人的には、ボーカルのリップ・ノイズやブレスなど、余計なノイズ成分を適切に除去してくれる機能の精度がもっと向上してほしいと思います。
ー未来系プラグインを使うにあたって、大切なことは何ですか?
Nagie AI搭載型などのマルチプラグインは便利ですが、実際はそれがどのような処理をしたのかを分析するのが大切です。また、その処理を別のプラグインで再構築すると、個性が出せて面白いのかもしれません。手軽に“良い音”を作ってくれるので素晴らしいのですが、その一方でサウンドが似たり寄ったりになりやすく、個人的には飽きてきています。今後は個性的なミックスというのも決め手になるのではないでしょうか。