「OUTPUT Movement」製品レビュー:リズミックな変調に特徴がある6種のマルチエフェクト・プラグイン

OUTPUTMovement
OUTPUTはハリウッドに拠点を構える新進のデベロッパー。筆者も同社の逆回転サウンドを収録したユニークな音源Revを使用していますが、その洗練されたサウンドは商業音楽やサウンド・デザインをはじめ幅広く使えます。そのOUTPUTが初のプラグイン・エフェクトとなるMovementをリリース。早速その実力をチェックしていきましょう。

ユニークなrhythmセクション
3つの方式でエフェクトの変調が可能

MovementはMac/Windowsで動作し、VST/Audio Units/AAXフォーマットに対応します。インターフェースはスタジオ機材を模したと言うより、iOSアプリのような分かりやすさを優先した設計。Movementに入力された信号は、画面左右に分かれた2系統の“Engine”に並列して流れます。このEngineはミキサーで言うチャンネルにあたり、各Engine内部では計6種類のfx(エフェクト)をそれぞれ4つまでインサートできます。最大の特徴と言えるのが、fxのパラメーターを変調させる“rhythm”セクション。各Engineの上部に2系統ずつ搭載されており、変調の方法も“Step”“Lfo”“Sidechain”の3種類から選択可能です。

ダブの世界では“エフェクトのパラメーターは積極的に変化させるべし”という格言がありますが、このrhythmも機能が充実しています。“Lfo”の波形はよく使われるものを12種類用意し、波形のスタート・ポイントをオフセットすることもできます。“Step”はステップ数を5や12にできたり、パターンのプリセットやスウィングなど機能が充実。“Sidechain”はほかのトラックのオーディオ信号をトリガーにして変調させるもので、キックをトリガーにしたうねるようなサイド・チェイン・コンプがよく知られています。Movementにはそうしたプリセットも収録されていますが、ダッキングの方法やエンベロープなどを設定できるので、柔軟な変調も可能です。

バリエーション豊富ながら上品なサウンド
オールラウンドに使える

それでは実際に音を出してみましょう。プリセットは300種類用意されており、タブ式のブラウザーでキーワードを元にサクサク切り替えが可能。まずドラム・ループにかけてみましたが、細切れになったりスペイシーになったりと、バリエーション豊富なサウンドが得られます。とはいえサウンド自体のキャラクターはオーソドックスかつ上品。オールラウンドに使える印象です。

それでは実際に音を作ってみましょう。まずは各Engineでかけられるfxから。“delay”はディレイ・タイムを変えるとピッチも変わるテープ・エコー・タイプ。ここでディレイ・タイムを変調させる場合は、rhythmを対象の“Time”ノブにドラッグ&ドロップ。するとTimeノブの周りの針が動いて変調が始まります。変調の量はTimeノブ下部をドラッグすることで調節可能(画面①)。ドラッグ&ドロップ主体の直感的な操作体系となっています。

▲画面① rhythmを変調させたいfxのパラメーター・ノブにドラッグ&ドロップするだけでアサインは完了する ▲画面① rhythmを変調させたいfxのパラメーター・ノブにドラッグ&ドロップするだけでアサインは完了する

次は6種類のタイプを持つ“filter”。サウンドのキャラクターはピーキー過ぎず扱いやすく、ベースにかけてrhythmで変調させると、程良くジェントルな揺らぎからウォブル・ベースまで作れます。“reverb”も同様のオーソドックスなキャラクター。面白いのは“PreDelay”のパラメーターで、リバーブのアタック部分の音程が変化します。ここをrhythmで変調させるとスペイシーなサウンドを作る際などに重宝しそうです。

2バンドEQは、タイプをフィルター寄りの“shelving”と音質のトリートメントに便利な“parametric”で切り替えが可能。FrequencyやGainをrhythmで変調させても面白いでしょう。ほかには汚し系の定番“distortion”も用意。ハイパス/ローパス・フィルターも搭載しており、変調させるとサウンドが大胆に変化します。

最後はVCAタイプのcompressor。こうした複合エフェクトは意図せず大音量が出てしまうことがあるので、ピークを抑えるのに便利です。また“Ratio”をrhythmで変調させることで、つぶれ具合を変化させても面白いです。Movementのrhythmで変調させる際はパラメーターの名前で先入観を持たずに、“取りあえず動かしてみる”のがいいでしょう。また、これらのfxをrhythmではなく自分の手で制御したい場面もあると思います。その際は、画面中央に現れる“XY-Pad”がマクロコントロールの役割を果たします。筆者は今回アプリのZERODEBUG TouchAble3を使って操作してみました。XY-PadへのfxやEngineのパラメーターのアサインは右クリック(Macはcontrol+クリック)で行う簡単設計です。

Movementは、トラックに上品でありつつ隠し味的なエグさをしのばせたい場面などで役立ちそうです。当初、fxが6種類というのは少ないかな?という懸念もありましたが、rhythmと組み合わせて使ううちに十分だと感じました。最近のプラグイン・エフェクトはスタジオで使われるアウトボードをエミュレートしたものが多いですが、Movementのような、プラグインならではの加工ができるエフェクトもやはり楽しいですね。

製品サイト:http://sonicwire.com/product/A0397

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年8月号より)

OUTPUT
Movement
15,959円(価格は6月13日現在。為替相場によって変動)
REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.7以降 ▪Windows:Windows 8/10 ▪共通項目:500MB以上のハード・ディスク空き領域、4GB以上のRAM