
90°単位で指向特性を選択できる
ローテータブル・ホーン
XPRS 12は1インチ・スロートのツィーターと12インのウーファーという構成。サブウーファーのXPRS 215Sは15インチのウーファーを2基搭載しています。
XPRS 12の仕様をさらに見ていきましょう。エンクロージャーは、15mmのバーチ・ウッドを使用してバスレフ型に組み上げられています。キャビネット内部の設計には、PIONEER PRO AUDIOが新たに開発した特許技術、AFASTテクノロジーを採用。音のこもりの原因となるスピーカー内部の定在波を、音響菅を使用して制御することで、キャビネット内部の吸音材を減らし、内部容積が増えてエネルギー・ロスを最小限に抑える構造です。
また、同価格帯のアクティブ・スピーカーでは珍しい90°×60°の定指向性を持つローテータブル・ホーンを採用。設置条件に応じて90°単位でホーンを回転できるので、施設への導入はもちろん、ウェッジ・モニター使用時にも役立ちますね。
リア・パネルは非常によく考えられているなという印象です。入力はMIC/LINE 1(XLR/フォーン・コンボ)とLINE 2(XLR/フォーン・コンボ、RCAピン)の2チャンネルを用意。MIC/LINE1ではGAINつまみの設定でマイクとラインを切り替えられます。マイクと音源ソースなどを同時にスピーカーに入力してミックスできる仕様です。さらに4つのEQモード(FLAT/BASS+/SPEECH/WEDGE)で最適なバランスに変更可能なので、さまざまなシチュエーションでの活躍が期待できます。
下腹部に来るパワフルな低域
耳を突くことの無い明りょうな中高域
今回はPIONEER DJの社内スタジオで製品テストをしました。セッティングはシンプルで、XPRS 12のLINE OUT(XLR)からケーブルをXPRS 215Sのインプット(XLR)に差し込み、XPRS 12のリア・パネルにあるローカット・スイッチをON。DJミキサーからは余計な機器を通さず直結するという、まさにプラグ&プレイです。
USBメモリーから音源ソースを流してみると、下腹部に来るパワフルな低域と、決して耳を突くことの無いクリアな中高域。ハウスやテクノなどのダンス・ミュージックを再生するにはパーフェクトなバランスです。
次に、比較のためスタンバイしてあったXPRS 15(オープン・プライス:市場予想価格165,000円前後)のみで試聴。こちらは15インチ・ウーファーを搭載しているので、XPRS 12に比べると低域のレンジがだいぶ広がります。DJモニターとしての使用ならば別途サブウーファーを用意する必要は無いのではないでしょうか? このタイトでパワフルな低域はAFASTテクノロジーのおかげと推測します。また、不要な共振も感じられませんでした。
搭載されているPOWERSOFT製のアンプ・モジュールは、小型発電機などの電圧が安定しない環境でも問題無く動作するので本当に信頼が置けます。またXPRSシリーズは高性能なDSPを内蔵。過大入力や過電流、高熱などのリスクからスピーカーを守ってくれるので、野外フェスにはもってこいですね。
また、このシリーズはセッティングのしやすさが特徴で、ハンドル部の設計は3Dプリンターで何度も試作を重ねたらしく、持ち運び時には実際のスピーカーの重量よりも軽く感じました。僕みたいな華奢(きゃしゃ)な体でもXPRS 12を簡単にスタンド・マウントすることができます。XPRS 12と15は0°と下ぶりに7°の2通りの角度で設置可能で、現場の状況に柔軟に対応できるでしょう。またXPRS 215Sは、ねじ込み式のポール・ソケットを採用しているで、マウントするスピーカーへの振動伝達を抑えているところにもこだわりが伺えます。それからキャスターを標準装備している点もうれしいポイントですね。
§
PIONEER DJは現場のフィードバックをきちんと製品に反映してくれます。今回も本当の意味で使える製品に仕上げてくれたことでしょう。XPRSというシリーズ名の由来となった“EXPRESS”には2つの意味があります。高音質による“表現”と、容易なセットアップ=“急行”ですが、まさしくその名の通りの製品だと思いました。


製品サイト:http://pioneerproaudio.com/ja/sound/xprs/xprs_12.html
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年8月号より)