「ULTRASONE Tribute 7」製品レビュー:上質な素材を存分に使用した密閉型高級ヘッドフォンの復刻版

ULTRASONETribute 7
今回チェックするのはULTRASONEの密閉型ヘッドフォンTribute 7。他社製品と根本的に違うのはS-Logicという独自の構造をベースとしている点。ドライバーと耳の間に穴の空いた金属板を設け、聴き疲れしないように直接音を避ける工夫がしてあるのだ。

アルミ削り出しのハウジング
低域電磁波を低減するULEテクノロジー

Tribute 7は2004年から限定生産されたEdition 7の復刻版である。今回の限定数は世界で777台。外箱を開封した途端にチェリー・ウッドの香りが漂いだした。この木製の専用収納ボックスはEdition 7に付属していたものを再現。さらに持ち運び用として別途セミハードキャリング・ケースも付いている。最も印象的なのはアルミ削り出しの青いハウジング。左右真ちゅうプレートのエンブレム下方には、自分だけのシリアル番号が刻印されている。大きさと形状は音楽制作上のスタンダード機そのものだが、各パーツには非常にぜいたくな素材を採用。イア・パッドは希少なエチオピアン・シープ・スキン・レザーで、さらりとしながらも適度な温かさを感じ、かつ遮音性がいい。ヘッド・バンドのアルカンターラ素材は天然スウェードに似た触感で耐久性も高い。重量はコードを含まないで399gとややずっしりとした重さで、側圧のバランスは絶妙だ。

11段調整のスライダーはハウジングの位置を細かく調整し、音漏れが最小限となるようにアジャストできてマイク録音の際も安心。90°横回転ができる自由度の高いアーム・ジョイントはDJ用途にも万全で、左右ともハウジングをヘッド・バンドにくっつくくらい縦方向に織り込むことが可能だ。高級機とは思えない携帯性の良さに驚かされる。

着脱式コードは3mと1.2mの2本。どちらも編み込み構造のOFCフレックス・ケーブルでシルバー・コーテッドの質感は写真で見るよりずっと高級感があり、外出時にはとても見栄えがいい。取り回しはかなり良好でかさばらず、柔軟性がありタッチ・ノイズが生じない点でも文句が無い。

本機のもう一つのセールス・ポイントが低域電磁波を低減するULEテクノロジーだ。S-Logicを構成している金属版の素材が電磁波を吸収しやすいミュー・メタルであり、ドライバーからの電磁波が頭部に届くのを防いでくれる。以上のようにどのパーツも理想に近い素材であり、“希少性と実用性を高次元で融合”という、うたい文句通りの仕様だと思う。

モバイル機器との相性も良好
打ち込み音楽にぴったりのサウンド

まずはオーディオI/Oのヘッドフォン端子でチェックすると、一聴してスピード感あふれる元気なサウンドが聴けた。ジャンル的には打ち込み音楽が非常にかっこいい。500Hz辺りの中域をなだらかに抜いたいわゆるドンシャリ系であるが、耳障りな3kHzがしっかりとディップしているので適度に落ち着きもある。ドライバーからの直接音を抑えた構造とは思えないほどビートの切れは良く、上モノもシャープに迫って来る。

次にヘッドフォン・アンプを業務用のDATに変えてみると、ぐっと音像が大きくなり、リッチな低域となった。本機には周波数特性を一台一台測定してグラフ化した“Headphone Test Report”という紙資料が同封されており、そのグラフでは50Hzを聴かせるためにその前後に小さな谷があるのが分かる。キックの風圧がありながらもだぶついていないのはこの辺りの工夫の成果であろう。タイトな中低域のおかげでドライな音作りでも説得力があり、シンプルな曲のシンセ音源に含まれる希薄なリバーブ成分でもしっかり味わうことができる。

APPLE iPodではややスピード感は落ちるが、軽い音になりがちな携帯プレーヤーとしてはむしろ相性がいい。40mmのドライバーはネオジム・マグネットであるが、インピーダンスが30Ωなので十分にドライブでき、音量は不足しない。出力音圧レベルは標準的な96dBで普段より少しボリュームが上がる程度だ。十分シャープな高域なのに長時間聴いても疲れないのはS-Logicの効果であろう。前方定位と言えるほどではないが頭内に音像が来る機種よりはずっと自然な定位感だ。さらに7インチ・タブレットではこれに低域の量感が加わり、意外に温かいサウンド。オーディオI/Oよりもモバイル機器の方が幅広いジャンルで楽しめるサウンドだと思う。

総合すると声の帯域である6kHzがピークになっているのでとても歌が聴きやすい。子音として気になる9kHzがディップしている一方で、エッジとなる10kHzは確保。このように本機は高域から低域までかなり細かく制御されていることから、創業者が音楽制作者であることが理解できた。

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ぜいたくに採用された各種高級パーツがデザイン的な豪華さだけでなく実用性も高いことには驚いた。価格だけ見れば鑑賞用と思われそうな本機だが、もうこれは立派な音楽制作仕様と言ってもいいだろう。特に打ち込み系の音楽にお薦めしたい。ぜひ店頭でその完成度の高さをチェックしてみてほしい。

▲付属のチェリーウッド製のボックスには、ヘッドフォン本体以外に3mと1.2mのロック式プラグ採用の着脱ケーブルを収納できる ▲付属のチェリーウッド製のボックスには、ヘッドフォン本体以外に3mと1.2mのロック式プラグ採用の着脱ケーブルを収納できる
▲専用のセミハード・キャリング・ケースも付属する ▲専用のセミハード・キャリング・ケースも付属する

製品サイト:http://ultrasone.jp/extra/tribute7.html

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年9月号より)

ULTRASONE
Tribute 7
オープン・プライス(市場予想価格:360,000円前後)
▪型式:密閉ダイナミック型 ▪周波数帯域:8Hz〜35kHz ▪出力音圧レベル:96dB ▪インピーダンス:30Ω ▪重量:399g(コードを除く)