「SENNHEISER MD 435 / MD 445」製品レビュー:大口径ダイアフラム採用のダイナミック・マイク2機種

「SENNHEISER MD 435 / MD 445」製品レビュー:大口径ダイアフラム採用のダイナミック・マイク2機種

 1945年創業というルーツを持つドイツの老舗マイク・メーカーSENNHEISERから、ライブ・ボーカル用ハンドヘルド型ダイナミック・マイクのMD 435とMD 445が発売された。今でもなお定番のマイクであるMD 421(1960年に発売開始)をはじめ、歴史のある“MD”の名を冠したモデルである。早速チェックしてみよう。

軽量アルミニウム銅ボイス・コイルを搭載

 本機の第一印象は、同社のE935/E945のデザインを踏襲しつつ、全体がつや消しの黒色で落ち着いたデザインということ。どちらもグリップ部分は若干細くなった感じで手になじむが、グリル上部はMD 445の方がより扁平になっている。

 

 MD 435が47.5(φ)×181(H)mmで350g。MD 445は47.5(φ)×174(H)mmで329g。そのため、MD 445の方が若干長さが短いかつ軽いが、どちらもボーカル用マイクとしては標準的な重さだ。

 

 構造はどちらも大口径ダイアフラムを採用したダイナミック・マイクで、指向性はMD 435がカーディオイド、MD 445がハイリジェクション・スーパー・カーディオイド。出力端子はXLR(バランス)になっている。いずれも周波数特性は40Hz〜20kHz、インピーダンス245Ω、最大SPLが163dBという数値だ。

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MD 435に採用されている大口径ダイアフラム

 付属品はマイク・ポーチとマイク・ホルダー、さらにウィンド・スクリーン用ポップ・フィルターを5個付属している。コロナ禍で現場ごとに洗浄が必須になっているので、非常に助かる個数だ。

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ウィンド・スクリーン内に装着するポップ・フィルターは5個付属している。ポップ・フィルターのみの販売も予定されているとのこと

 MD 435は同社のワイアレス・システムDigital 9000/6000で採用されていて実績のある、ワイアレス用カプセルMD 9235から音響特性と信頼性を継承しているという。ハイエンド・モデルとされるMD 445には、洗練されたサウンド・チューニングを施されており、ボーカルの近接性が格段に向上。ハイリジェクション・スーパー・カーディオイドというピックアップ・パターンを採用し、フィードバックからのマージンを確保しているのだという。どちらもレスポンスの速い軽量アルミニウム銅ボイス・コイルを採用。ハンドリング・ノイズを軽減するスプリング・マウント式カプセル、電磁干渉を排除するためのハム補償コイルにより、外部からの影響を受けにくい構造だ。また頑丈なメタル・バスケットを採用している。

タイトな響きの音響機器と相性の良い音像

 今回は渋谷クラブクアトロで、とあるバンドのワンマン・ライブのサウンド・チェックの、スピーカー・チューニング中に行う“ワン・ツー”で比較してみた。第一印象は、どちらのマイクも若干ハイ上がりであること。こちらは最近のマイクらしい特性だ。音の立ち上がりが速いためスピード感があり、音像もぼやけることがなく、近年のラインアレイ・スピーカーのタイトな音像にマッチしそうなのが好印象だ。

 

 MD 435は、よりふくよかな中低域を感じる。一方、MD 445は、低域の音像がタイトで締まっている印象だ。グリル・ボールを外してみると、その高さが低いMD 445の方がダイアフラムとの距離が接近していることが分かった。そのためかどうか分からないが、声が近く感じた。逆にMD 435は程良い近接効果があり、低域がブーストされるため存在感がある印象だ。E935と聴き比べてみると、声が近く感じ、より歌詞がよく聴き取れるだろうと思う。どちらもハンドリング・ノイズは少なく感じたが、指向性が鋭いのかオンのときから横にずらしてみたところ“スパッ”と無くなる印象が強かった。

 

 今回はチェックできなかったのだが、フィードバックに対するマージンが多いとのことなので、バンド・サウンドの中での使用感も気になる。また、同じ435/445の型番を採用しているDigital 9000/6000やEvolution Wireless G4システムで使用可能なワイアレス・マイク用カプセルMM 435/MM 445もリリースされており、こちらも大いに期待できる。

 

 近年ライブ用のボーカル・マイクとしてさまざまなモデルが使用されるが、SENNHEISERの中ではE935/E945などが使われることが多くなっており、LSDエンジニアリングが受け持つ野外フェスのステージでも、乗り込みのPAエンジニアが持ち込む機会も多い。そんな中で本機は、伝統の“MD”の名を受け継ぎつつ、近年のデジタル音響機器の特性とのマッチングを押さえている。奇をてらうことなく、新たな定番マイクを打ち出す老舗としての意気込みを感じた。

 

遠藤幸仁
【Profile】東高円寺にあるPAカンパニー、LSDエンジニアリングの代表でサウンド・エンジニア。Lucky Kilimanjaro、Lillies and Remains、ELEKIBASSなどのライブ・オペレートを手掛けている。

 

SENNHEISER MD 435 / MD 445

オープン・プライス

(市場予想価格:各81,400円前後)

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SPECIFICATIONS
●MD 435
▪指向性:カーディオイド ▪感度(@1kHz):1.8mV/Pa ▪等価ノイズ・レベル:17dBA ▪外形寸法:47.5(φ)×181(H)mm ▪重量:350g

●MD 445
▪指向性:ハイリジェクション・スーパー・カーディオイド ▪感度(@1kHz):1.6mV/Pa ▪等価ノイズ・レベル:18dBA ▪外形寸法:47.5(φ)×174(H)mm ▪重量:329g

●MD 435/MD 445共通
▪周波数特性:40Hz〜20kHz ▪最大SPL(@1kHz):163dB ▪出力インピーダンス(@1kHz):245Ω

製品情報