Mission 1:EQを使い分けろ! EQ&コンプで作る最強コンボ 〜プラグインが織りなす相乗効果を狙え!(1)

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EQとコンプのプラグインは、最新のデジタルからビンテージのアナログ機材をモデリングしたものまで、非常に多くの製品がリリースされています。しかし、その中から自分に最適なものを選ぶのは、とても難しいことですね。この特集では、ミックス・エンジニアのyasu2000氏がEQとコンプの多彩な組み合わせ方を、音源と併せて紹介。プラグインそれぞれの特性を生かし、あなただけの音作りを叶える最強コンボについて考えてみましょう!

Mission 1:EQを使い分けろ!

yasu2000

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 エンジニアのyasu2000です。僕はミックス時に音を立体的に見るようにしています。空間の中で音の“形”を整えるのと同時に、良い質感にするのです。そのためには、EQとコンプの組み合わせが最も重要と断言します。本企画では、僕がこれまで試してきたことと、組み合わせによって生じる相乗効果をお伝えします。まずはEQを使い分ける方法とその理由を一緒に考えていきましょう!

↓START↓

 

ヒント

EQでは主に次の効果が得られる

★各パートをすべて聴こえるようにすみ分ける
★不要なノイズや音のカブりを目立たなくさせる
★音の“形”を整える
★音の質感を調整して印象を変える

 

音と感覚をリンクさせながら操作する

 EQの種類を大きく2つに分けると、固定周波数で調整するグラフィックEQ(通称グライコ)と、どの周波数も調整できるパラメトリックEQ(通称パライコ)があります。まずはDAW上で最も使われているパラメトリックEQについて解説していきましょう。

 

 プラグインのパラメトリックEQは大きく分けて、2つのタイプがあります。一つは、各バンドの中心周波数を自在に動かせるデジタルのもので、縦を音量、横を周波数としたグラフが用意されていることが多いです。もう一つがアナログEQのモデリングで、画面もパネルをそのまま再現したもの。これらはビジュアルだけでなく、サウンドや役割が異なります。まずはアナログ・モデリングEQの使い方を理解するために、デジタルのパラメトリックEQを正しく理解しましょう。

 

1stアイテムパラメトリックEQ(例:AVID Pro Tools付属のEQ Ⅲ)

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インプット/アウトプット
ここでは、EQ処理前/後のゲイン・コントロールが行える。どちらもレベル・メーターで視覚的にチェックが可能。インプットのセクションには位相反転スイッチを装備

 ハイパス/ローパス・フィルター
ハイパスでは高域を、ローパスでは低域を通す。EQ IIIではそれぞれにノッチ・フィルター機能を搭載しており、指定した周波数付近のみカットすることも可能

イコライザー
ロー/ローミッド/ミッド/ハイミッド/ハイの5バンドを装備。バンド数はプラグインによって異なる。ロー/ハイでは、EQカーブをピーキングとシェルビングで切り替えて使うことができる

Q
Qは、ブースト/カットする周波数カーブの幅のこと。値が大きくなればなるほど幅は狭くなり、逆に小さければ広い範囲を調整できる。グラフの付いているデジタルEQの場合は、ノブや数値でコントロールしたものを視覚的に確認したり、グラフ上で操作できるのがメリットだ

 

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EQカーブ
EQカーブはピーキングとシェルビングを用意。ピーキングは指定した周波数ポイントを頂点とする山型のカーブ。シェルビングが指定した周波数のポイントから上もしくは下をブースト/カットするカーブだ

フリケンシー
ブースト/カットする周波数を設定する。デジタルEQでは小数点単位まで設定できるため、アナログEQよりもより微細な位置のコントロールができる

ゲイン
指定した周波数帯域をブースト/カットする量を調整する

 

 デジタル・パラメトリックEQのメリットは、視覚的に分かりやすいので、不要なノイズや耳に痛い周波数を見付けるのが簡単ということです。また、中心周波数の移動や調整する周波数帯域の幅=Q幅を小数点単位の細かい値で設定可能。レベルも小数点単位で上下できます。ただし、いじり過ぎると不自然な音になりがちなので気をつけましょう。操作のコツは、実際の音と自分の感覚をリンクさせること。周波数レンジ=低域から高域を“下から上”で縦にとらえるように研ぎ澄ましてください。自分の目の辺りが1kHz、地面が30Hz、天井が8kHz辺りという具合にイメージすると、頭の中で立体的に聴こえてきませんか?

 

音の良さと効率の両方を追求

 自分がお決まりで処理する周波数が特定できたら、その数値を覚えておきましょう。アナログ・モデリングEQを操作する上で活躍します。アナログ・モデリングEQでブースト(上げること)やアッテネート(下げること)を行うメリットは、倍音豊かなサウンドになること。例えば、パッシブ型パラメトリックEQのモデリングUNIVERSAL AUDIO UAD-2 Pultec Pro Equalizers(Legacy)で3kHz以上の周波数をブーストすると、倍音ごと自然に上がるのできつく上げても耳に痛くなりません。なぜならパッシブ型EQは、ブーストしてもひずみを発生させないからです。ほかの例を挙げるならば、なかなか抜けてこないスネアの高域をUAD-2 Neve 1073で上げてみてください。ひずみと倍音が増えて、抜けの良い音に変わります。

 

 また、アナログ・モデリングEQは、いじり過ぎても不自然な音になりにくいので安心です。その代わり、中心周波数の選択肢とQ幅が限られるので、自由度は低いと言えるでしょう。これで処理し切れない部分が出てきたときが、デジタル・パラメトリックEQの出番。つまり、大まかな形と質感をアナログ・モデリングEQで決めて、細かい調整をデジタル・パラメトリックEQで行うとスムーズです。このとき質感を壊さないように、デジタル・パラメトリックEQはアナログ・モデリングEQの前に挿して調整するのをお勧めします。

 

 ということで、複数の種類のEQを組み合わせる理由は以下です!

● 良い音質と繊細な処理の両方を追求しやすいため
● 目的別に使い分けることで作業効率がアップするため

 色付けのあるアナログ・モデリングEQと無色透明で自由度も高いデジタルEQの組み合わせは、音質的にも作業効率的にもメリットが多いですよ。

 

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yasu2000

【Profile】big turtle STUDIOSのレコーディング/ミックス・エンジニア。NYのInstitute of Audio Research卒業後、ブルックリンのBushwick Studioを経て、2005年に帰国。現在はorigami PRODUCTIONS所属のアーティストのほか、あいみょんなどを手掛けている。

 

特集「EQ&コンプで作る最強コンボ」

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