実戦編! yasu2000独自のコンボを紐解く EQ&コンプで作る最強コンボ 〜プラグインが織りなす相乗効果を狙え!(4)

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EQとコンプのプラグインは、最新のデジタルからビンテージのアナログ機材をモデリングしたものまで、非常に多くの製品がリリースされています。しかし、その中から自分に最適なものを選ぶのは、とても難しいことですね。この特集では、ミックス・エンジニアのyasu2000氏がEQとコンプの多彩な組み合わせ方を、音源と併せて紹介。プラグインそれぞれの特性を生かし、あなただけの音作りを叶える最強コンボについて考えてみましょう!

実戦編! yasu2000独自のコンボを紐解く

yasu2000

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 最後に、僕が使用しているEQとコンプの組み合わせを紹介します。先にコンプをかけて抜けが悪くなった場合はEQでコンプを挿す前の印象に戻します。一方、先にEQでブーストしてクリップした場合は、コンプでEQ前のレベルに戻します。このように、お互いが削ってしまう部分を補足し合うのが、EQとコンプを組み合わせるのがコツです。プラグインのコンボは量よりも質で勝負しましょう!

↓START↓

赤文字】色付けの強いプラグイン
青文字】無色/色付けの少ないプラグイン

ボーカル

仕上がりが丸く磨かれるコンプ同士は
音色がナチュラルに組み合わさる

 素材のボーカルはダイナミクスがありハスキーなイメージなので、アナログ・モデリングのひずみを多めにかけます。コンプを2段階かけることを想定し、UAD-2 Neve 33609 Compressorのリダクションを薄めに設定。このとき、もう少しアタックを速くしたいときはリミッター・モードを使用します。このリミッターは傾向としては遅めなので、もはやレシオが高めのコンプのようです。エアがひずんで粘り気のあるグルーブを付加できたら、UAD-2 Fairchild 670で真空管のひずみを加えます。お互い丸型同士なので、この組み合わせはしっくりと噛み合いました。

 

 色付けとひずみが加わったので、無色系EQのUAD-2 Pultec Pro Equalizers(Legacy)とUAD-2 Pultec MEQ-5で大まかな形を作ります。固定周波数も的確なポイントなので、倍音が残されたまま自然に高域が伸びました。この状態を崩さないまま、UAD-2 Neve 33609 CompressorとUAD-2 Fairchild 670の間にInfinity EQを挟み、立体的な形になるよう微調整。最後にVintageWarmer2のテープ・サチュレーション付きEQで、1.5kHzと170Hz辺りを少しずつ上げます。色付けやひずみを生かしつつ、輪郭を鋭く際立たせることができました。

 

 

★プラグイン・チェイン - 6 Combo!

ダイオード・ブリッジ式コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 33609

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デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

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(黄枠)Infinity EQで300Hzや500Hz辺りや、10〜20kHzの高域成分を3〜4dBほどブーストするなどUAD-2 Pultec Pro Equalizers(Legacy)で行うよりも細かな処理を担う

真空管コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Fairchild 670

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パッシブEQ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Pultec Pro Equalizers(Legacy)

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パッシブEQ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Pultec MEQ-5

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アナログ・モデリングEQ:PSP Vintage Warmer2

 

コーラス

色付きコンプでダイナミクスを
無色のEQで空間を操作

 自然ですがファットに仕上がる、UAD-2 Fatso Jr./Sr.の1176トラッキング・モードをONに。薄くかけてダイナミクスを落ち着かせます。メイン・ボーカルと周波数帯域がかぶらないようにUAD-2 Pultec Pro Equalizers(Legacy)で8kHzを高い位置に持っていき5kHzをアッテネート。300Hzを上げてボディをふくよかにします。ここからInfinity EQでM/S処理をしてSide側を持ち上げ、メイン・ボーカルの両脇のすき間に埋めていきます。次にOzone 9 Dynamicsを一番最初に挿して、奥行きを持たせます。VintageWarmer 2で味付けをして完成です。

 

 

★プラグイン・チェイン - 5 Combo!

デジタル・コンプ:IZOTOPE Ozone 9 Dynamics

デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

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(赤枠)MidとSideの度合いを調整でき色合いで区別できる。青がsideで黄色がMid

アナログ・モデリング・コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Fatso Jr./Sr.

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パッシブEQ :UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Pultec Pro Equalizers(Legacy)

アナログEQ:PSP VintageWarmer2

 

エレクトリック・ピアノ

テープ感とひずみを加えてから
無色のEQでオケとミックス

 WURLITZER系のソフト音源は高域が少なく埋もれがち。UAD-2 Fatso Jr./Sr. Analog Tape Simulator & Compressorの“TRANNY”というテープ・サチュレーションでテープ感とひずみをプラスし、高域の倍音を増やして抜けをよくします。1176トラッキング・モードに設定し、Warmthというスイッチでひずみを足します。今回はあまりコンプ感が無い方がよかったので、サイド・チェイン・フィルターで120Hz以下の低域を切ってかかりをうすくします。その後は無色のinfinity EQで調整し、Vintage Warmer2で味付けです。

 

 

★プラグイン・チェイン - 3 Combo!

アナログ・モデリング・コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Fatso Jr./Sr.

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デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

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アナログ・モデリングEQ:PSP VintageWarmer2

 

エレキギター

アタックの微調整後に
明るめのEQでエッジを立たせる

 FENDERのギター・アンプBlues Juniorで鳴らしたカッティングの音を、ダイナミック/コンデンサー・マイクの2本で録って混ぜたもの。UAD-2 1176で、アタックを残しつつボディにコンプがかかるように設定します。次に切れが良く、ウォームなひずみが加わるUAD-2 API 550Aで7kHzを上げます。高域を上げ過ぎるとアンプ・ノイズが増幅して、耳に痛い成分が出るので程々に。密度を高めるために1.5kHzを、埋もれがちな低域を鳴らすために300Hzを上げて、全体の輪郭をくっきりとさせます。API 550Aの質感を残すために、前段にInfinity EQを7kHz辺りのひずみの質感を若干明るくしたかったので、台形型でほんのりと上げます。API 550Aで補えなかった100Hzも少し足しました。

 

 

★プラグイン・チェイン - 3 Combo!

FETモデリング・コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 1176

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デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

アナログ・モデリングEQ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 API 550A

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シンセ・リード

色付けの少ないコンプとEQ同士で
素材の音色を生かす処理

 元の素材が色付けされているので、プラグインは無色で統一しましょう。高〜低域まで四角く圧縮された明るいイメージにするために、VCAコンプを再現したTanを使います。アタックは遅めで、一番右のプリアンプで温かみを追加。最後にSHMODという珍しいパラメーターでアタックの挙動調整をします。Infinity EQで5kHz以上の高域をぐいっと上げて、高さのある音にするために8kHzを台形型で上げます。アナライザーで良い具合の中域が既に出ていますが、50Hzから150Hzまでがくぼんでいるので、台形型で増加しました。

 

 

★プラグイン・チェイン - 3 Combo!

VCAモデリング・コンプ:ACUSTICA AUDIO Tan

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デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

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アナログ・モデリングEQ:PSP VintageWarmer2

 

エレキベース

音の輪郭を作ってから
1176系コンプでタイム感を調整

 高域が少ない素材に輪郭を持たせるには、VintageWarmer2が最適です。ニーを上げてテープ・サチュレーションを強調し、100Hzも上げて厚みを出します。その後UAD-2 1176でアタック/リリース・タイムを微妙に遅めにして、キックとタイム感を分割させましょう。素材はレイドバックしたノリなので、少し多めに遅らせました。重厚感のあるベースにするために30Hzと芯となる60Hzを上げつつ、くもりがちな50Hz辺りを少し下げます。一方EQでは、ベースは基音の幅が太いので、アナライザーを見ながら鳴っている帯域に合わせてQ幅の柱のような形にするとうまくいきます。

 

 

★プラグイン・チェイン - 3 Combo!

アナログ・モデリングEQ:PSP VintageWarmer2

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FETモデリング・コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 1176

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デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

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キック

ビンテージの質感が加わるEQとコンプで
濃い色付けを行いオケでの存在感を演出

 バス・ドラムのカッティング・ホールにダイナミック・マイクを半分ほど突っ込み、打点を狙った素材。キックのように高域が目立たない音はオケに埋もれがちなので、VintageWarmer2のニーを上げて1.5kHzをぐいっと上げました。次に、真空管コンプを再現したUAD-2 Fairchild 670で濃い色付けをします。鋭い音にするためリダクションは−1.2dB程度で、アタックを残しつつ真空管の質感のみを付加しました。この段階で、UAD-2 Fairchild 670の前にInfinity EQを挿して調整。キックはボーカルぐらい前に出て来てほしいので、レベルはかなり大きくする必要があります。ピークを抑える意味で前に挿しました。キックに重要な60Hzのカーブを柱のような形にして思い切り上げます。

 

 僕は、この後にUAD-2 Neve 33609をインサートしたドラムのグループ・トラックに10%だけセンドしたりします。基本的にキックは独立で鳴らしたいですが、ほんのりとドラムの塊に参加させるのがグルーブのポイントです。

 

 

★プラグイン・チェイン - 4 Combo!

アナログ・モデリングEQ:PSP VintageWarmer2

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デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

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真空管モデリング・コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Fairchild 670

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ダイオード・ブリッジ式コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 33609

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スネア

チャンネル・ストリップの色を出す前に
1176系コンプでボディを太くする

 スネアの上からダイナミック・マイクで録音した素材です。UAD-2 1176でアタックをやや速めに、ボディの断面が半分見える程度の設定で太くします。次にUAD-2 Neve 1073のマイクプリでビンテージらしいひずみを加えながらEQでも倍音を増やします。ここでUAD-2 Neve 1073の前にInfinity EQを挟んで、キックやタムとかぶる低域をカット。ポンポンと鳴る共鳴ポイントも減衰させます。キック以外はグルーブに統一感が欲しいので、UAD-2 Neve 33609をインサートしたドラムのグループ・トラックに送ります。

 

 

★プラグイン・チェイン - 4 Combo!

FETモデリング・コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 1176

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デジタルEQ:SLATE DIGITAL Infinity EQ

アナログ・モデリング・チャンネル・ストリップ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 1073

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ダイオード・ブリッジ式コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 33609

 

ハイハット

ドライでありつつ痛くない音を作るために
テープの質感が加わるEQの後でコンプ

 ハイハットはザラザラと乾いた質感が好きなので、VintageWarmer2のEQで11kHz付近を上げます。強調し過ぎると痛くなるので、コンプを後にかけましょう。UAD-2 1176でアタックを速めに圧縮。生演奏のハイハットは、スネアとのかぶりに気を配り薄っすらリダクションをする程度にします。元の素材を生かすためには、EQやコンプをしないというのも一つの手段です。この後は、UAD-2 Neve 33609をインサートした先述のドラム・グループ・トラックにそのまま送ります。これで、キック/スネア/ハイハットのグルーブに統一感も生まれました。

 

 

★プラグイン・チェイン - 3 Combo!

アナログ・モデリングEQ:PSP VintageWarmer2

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FETモデリング・コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 1176

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ダイオード・ブリッジ式コンプ:UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Neve 33609

 

 

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yasu2000

【Profile】big turtle STUDIOSのレコーディング/ミックス・エンジニア。NYのInstitute of Audio Research卒業後、ブルックリンのBushwick Studioを経て、2005年に帰国。現在はorigami PRODUCTIONS所属のアーティストのほか、あいみょんなどを手掛けている。

 

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