モノンクルがAbleton Liveを使う!ライブ実用例~Push 2を活用した演奏&マニピュレート

モノンクルがAbleton Liveを使う!ライブ実用例~Push 2を活用した演奏&マニピュレート~

楽曲制作に限らず、マルチプレイヤーの中核を担うシステムやバンド編成を問わない表現ができる楽器として、ライブ現場でも目覚ましい活躍を見せるDAWソフトAbleton Live。ここでは、アーティストによるその実用例を紹介していく。角田隆太(b)と吉田沙良(vo)によるソングライティング・デュオ=モノンクル。ライブでは、デュオでの演奏スタイルからサポート・メンバーを迎えたバンド・スタイルまで展開。その表現の幅をさらに広げたのが、角田が1年半ほど前から導入したLive専用コントローラーAbleton Push 2だ。角田が“大好きな楽器”と表現するPush 2を使ったライブ・スタイルに迫る。

Photo:Kenju Uyama

モノンクル × Ableton Live ライブ・セッティング

 角田は、対バン・ライブなどにおける短い転換時間でのセッティングに対応できるよう、システムを極力シンプルに構築。シンセなどの演奏やパフォーマンス、マニピュレートといったLiveの操作は基本的にAbleton Push 2のみで行う。APPLE MacBook Proには、Push 2とアナログ・シンセのBEHRINGER Model DをUSBで接続。Model Dは、Push 2からのMIDI信号で演奏する。オーディオI/Oは、APOGEE Element 24を使用し、シーケンスとクリックの出力を分けてPAへと送っている。

f:id:rittor_snrec:20211125165238j:plain

MacBook Proとアナログ・シンセのBEHRINGER Model D、オーディオI/OのAPOGEE Element 24はラック・ケース上に集約している

f:id:rittor_snrec:20211125165254j:plain

Push 2はステージ正面に向けて設置。パラメーターなどの情報は本体上部のカラー・ディスプレイに表示されるため、コンピューターを見ることなく操作することができる

f:id:rittor_snrec:20211125165309j:plain

Push 2はめちゃめちゃ楽しくて大好きな楽器

 「最初に買ったDAWソフトがAbleton Liveでした」という角田。以来、Liveをずっと愛用してきた。

 「レコーディングのときに作った音のディテールをライブでもそのまま届けたくて、まずは自分でマニピュレートをやれるか試してみようというところから始まりましたね。制作とライブがシームレスになったことは大きなメリットでした。Liveはユーザー・インターフェースも含め自分好みに変えられますし、コミュニティ感があって一緒に作っている雰囲気がするところも好きですね。“こういうふうに使えないかな?”と思って検索すると、誰かが既に記事にしてくれていたりするので、すごく助かります。柔軟性があって、取り込んだ音を遊び感覚で格好良い音素材に変身させる能力が高いですね。人によって使い方や出来上がる作品が全然違うのも魅力です」

 角田のLiveの活用方法に大きな変化を与えたのは、専用コントローラーAbleton Push 2との出会いだった。

 「ドラマーが見つからず、ドラムレス編成でライブをしないといけなくなったときに、シーケンスを使ったライブをすることになったんです。最初はそのコントローラーとしてPush 2を導入したのですが、いざ使ってみるとそれ以上に楽器としての可能性をすごく感じてすぐハマりましたね。使い始めてまだ1年くらいですが、めちゃくちゃ楽しくて、今では大好きな楽器です。音色を弾くキーボードとしても使えるし、UserモードでいろいろMIDIアサインできるので、曲の頭出しもコンピューターを見ずにPush 2だけで操作が完結していて、常に楽器プレイヤーとしてステージの上に居られるんです」

 制作とライブでLiveを連携しているという角田に、ライブ用プロジェクトの制作プロセスを尋ねてみた。

 「基本はレコーディングと同じ素材を使います。ただ、ライブでは生楽器のスペースを良いあんばいに残すことが大事なので、FXやシンセ・トラックを間引いて、空間を埋めるのは生楽器の倍音に委ねるようにしていますね。動作の重いプラグインが挿さっているトラックはオーディオに書き出したり、会場によってマスターEQを変えたりもします。バンド編成が変わったときのパートの差し引きも簡単にできて良いですよね」

 カウントやクリックはどのようなチョイスなのか?

 「ボイス・カウントは自分の声を録ってオクターブ上げたものです。よく使われる音源だと、鳴った瞬間、自分がどこの現場に居るのか分からなくなる現象が個人的にときどきあるので、少しオリジナリティがあっても良いかなと。一方クリックももともとは自分で生成した音を使っていたのですが、最近は聴こえやすさや疲れにくさなど、さまざまな現場で検証されてくぐり抜けてきた音の方が良いと思って、草間 敬さんが配信していたクリック・パックを使わせていただいています」

 

Ableton Live プロジェクト・ウィンドウ

f:id:rittor_snrec:20211125165819j:plain

①パフォーマンス音色
角田がライブ中にPush 2で演奏を行う音色は、プロジェクト上部に集約。トラック名を見ると、ピアノやベースのほか、MIDI同期で演奏するアナログ・シンセBEHRINGER Model D用のトラックも並んでいる

②楽曲のグループ化
演奏曲は、1曲ごとにグループ・トラックとして集約し、演奏順に配列。レコーディング時のプロジェクト・ファイルをドラッグ&ドロップで入れるため、テンポのオートメーションも自動的に描かれるようになっている

 

ビューはライブの質感によってどちらか選べる

 Liveでは、時間軸に沿って左から右へ流れるアレンジメントビューと、トラックごとにクリップ(素材)を縦に並べてループなどで展開させるセッションビューの2つの画面表示が選択できる。その使い分けについて角田に尋ねた。

 「ビューはライブの質感によってどちらか選べるので、展開に不確定要素が多いライブではセッションビューがやりやすいだろうし、作り込んだショウのような方向性ならアレンジメントビューの方が合うと思いますね。モノンクルではセッションビューも使っていましたが、最近はアレンジメントビューを使っています。仕込みが少なくて済むし、リハーサルで曲の途中からやり直したりしやすいんですよね。各パートの波形が一望できるということも大きいです」

 過去のセッションビューを使ったライブでは、クリップの再生順序を設定できるフォローアクション機能を活用した。

 「イントロ、フック、1Aなどとシーンごとにクリップを分けて組んで、フォローアクションで次へ進むように設定していました。何回繰り返すか決まっていないところはフォローアクションを設定しないでループしたままにして、時が来たら次のクリップを押して進めるので、セッションビューを使うならPush 2があるとめちゃめちゃ便利ですね」

 モノンクルでは、ボーカル吉田沙良の歌声を聴かせるためにもLiveが重要な役割を果たしている。

 「モノンクルのライブは、歌からフォーカスをぶらさないことを第一義にしているので、ソリッドな音像かつ生演奏の空気感を残せるベストなバランスを考えて、最近はLiveを使った最小限のバンド編成でのライブに手応えを感じています」

 最後に、今後のLive活用について展望を語ってくれた。

 「シーケンス用のMacと別に、シンセの演奏専用にMac+Push 2を導入しようかと検討しています。セパレートすることによって、Push 2でできることがもっと広がると思うんです。自分がどういうことをやるようになるのかが楽しみですね」

 

 PICK UP! 
Liveと完全連動するPush 2

f:id:rittor_snrec:20211125171133j:plain

 角田が愛用するAbleton Push 2は、Live専用のMIDIコントローラー。クリップの選択やノート演奏が可能な8×8のパッドを採用し、各機能にスムーズにアクセスできるボタンやタッチ・センサー付きのノブを搭載する。カラー・ディスプレイではパラメーター情報やサンプル波形のほか、デバイスのグラフィック表示にも対応。コンピューターを見ずとも直感的な操作が可能だ。角田は「リアルタイムでエフェクトをかけたり、エフェクトの数値を変えたりを1台で完結するのがすごいですね。僕は1回のライブで6~7個のソフト・シンセを弾くので、その切り替えもすぐできるのは素晴らしいです」と話す。

 

f:id:rittor_snrec:20211125165603j:plain

角田隆太

【Profile】日本語ならではの詩情豊かなポップスにジャズのエッセンスを加えた、ジャンルレスな音楽を発信するソングライティング・デュオ=モノンクルのベーシスト。作編曲/作詞/ギター/Ableton Pushも手掛け、2021年にはモーニング娘。の「抱いてHOLD ON ME!」をファンク・アレンジでカバーして話題に。さまざまなアーティストの作品やライブにも参加する。

 Recent Work 

『ずるいよ』
モノンクル
(ソニー)

Ableton Live製品情報

Ableton Liveのご購入はこちらから

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp