ジャンルを問わず、多くの音楽制作の場で使われてきたLive。その愛される理由を探るべく、さまざまなフィールドで活躍するクリエイターたちにアンケートを実施した。Liveのお気に入りポイントと、Live 11で新搭載された中からお薦めの機能/デバイスを紹介してもらおう。
kz(livetune)が語るAbleton Liveのココがすごい!
【Profile】トラック・メイカー/プロデューサー。Vocaloidの初音ミクを使った楽曲で注目を集め、2008年にメジャー・デビュー。ソロ・ユニットlivetuneのほか、モデルのやのあんなとのユニット=livetune+としても活動する。
Liveのお気に入りポイント
ブラウザーコンテンツパネル
ブラウザーコンテンツパネルはとにかくアクセスしやすく、本当に使い勝手が良い。Live 10ではコレクション機能が追加されたので、使用頻度の高いものをまとめておけるようになってさらに便利になってありがたかったです。また、これはいろいろなところで話しているのですが、Ping Pong Delayがエフェクトの中ではめちゃくちゃ重宝しています(Live10.1でDelayに統合されてしまいましたが)。この質感だけはどうしてもPing Pong Delayでしか出せないんです。リードやシーケンス、ボーカルでも使っています。
Liveのお薦め機能/デバイス
Upright Piano
付属音源は普段あまり使わないので注目していなかったのですが、SPITFIRE AUDIOと共同開発のUpright Pianoはめちゃくちゃ音が良いです。シチュエーションは選ぶと思いますが、アタック感も音の伸びの良さもアップライト・ピアノ音源としては屈指の出来だと思います。また、コンピング機能の追加は本当に助かりました。特にMIDIトラックにも対応しているおかげで、メロに悩んだときにMIDIトラックをどんどん生成して画面がぐちゃぐちゃになり、どれがどれだかわ分からなくなっていく地獄から解放されたのは本当にありがたいです。
Yunomiが語るAbleton Liveのココがすごい!
【Profile】札幌出身、東京在住のトラック・メイカー。独自の“Kawaii”音楽性と、EDMやフューチャー・ベースなどを取り入れた楽曲で注目を集める。トラック・メイカー/ボーカリストのYUC'eとともに未来茶レコードを主宰。
Liveのお気に入りポイント
CV Tools
昨年から制作にモジュラー・シンセを取り入れたので、CV Toolsは欠かせない存在です。私はEXPERT SLEEPERSのES-3経由でシンセを操作していて、オーディオだけでなくCV信号もLiveから送信することができるのが大変便利なポイント。同期のためにCV Clock Outからシンセにトリガー信号を送る際、Live側でDivisionを切り替えられるため、2倍や1/2倍といったフレーズ・パターンをついでに録音しておく癖が付きました。そうしてセッションビューのスロットに録りためたクリップを、Push 2を使って演奏してトラックを組み立てています。
Liveのお薦め機能/デバイス
コンピング
セッションビューからアレンジメントビューに移動し、ミックスの作業に入った後も、新たな楽器を追加したくなることがあります。以前は、再びセッションビューに戻ってからモジュラー・シンセの録音などをしてましたが、お待ちかねのコンピング機能が追加されたことで、例えばサビのハイハットの音だけを録音し直すといったことが容易になりました。周期の長いLFOなどを駆使するモジュラー・シンセの音作りの性質上、どうしても長い演奏の中から気に入った部分を使うといった録音になりがち。コンピング機能は、楽曲全体のグルーブを感じながら理想のテイクを追求するのに最適な選択です。
角田隆太(モノンクル)が語るAbleton Liveのココがすごい!
【Profile】ボーカルの吉田沙良とともにモノンクルとして活動。ジャズを基調にした独自のポップ・サウンドと日本語詞を組み合わせた楽曲を生み出す。3月に配信シングル『抱いてHOLD ON ME!』をリリースした
Liveのお気に入りポイント
オーディオのMIDI変換
ギターなどのコード楽器のオーディオ・データを解析/抽出し、MIDIクリップにしてくれる“ハーモニーを新規MIDIトラックに変換”です。これによって自分の演奏したボイシングやグルーブ感を好きな音色のソフトウェア音源で鳴らすことができます。ポイントとなるのが、この解析はオーディオ・データに含まれる倍音などの影響で正確になされないことがあるということです。結果として、ミストーンやミスタッチを含むいびつなMIDIクリップが出来上がるのですが、この偶然性をうまく取り入れて楽曲のスパイスにします。目指すところは一緒だけれど、“ちょっと狂ってる自分のクローンが演奏している感じ”が割と好きで、グリッチ要員として使っています。
Liveのお薦め機能/デバイス
MPE対応
テンポ追従やランダマイズ、Inspired by Natureなどの新機能やデバイスをはじめとして、Live 11はラップトップ・ミュージックの有機化を大きく躍進させるアップデートばかりです。1つに絞るのが難しいですが、指先を伝ってエモーションを表現できる可能性が格段に広がったという意味で、MPE対応が最も大きなトピックだったのではないでしょうか。これによってパッドを押すという行為が、今までより一層、ただボタンをオン/オフしているだけという単純な作業ではなくなり、ラップトップが優れた感情表現の楽器として進化を遂げたように感じます。MPEにフル対応した(そしてできればスタンドアローンにも対応する)Push 3が出たら、もう最高です。すぐ買います、買わせてください。
Yaffleが語るAbleton Liveのココがすごい!
【Profile】小袋成彬や藤井風、iri、SIRUPなどの楽曲を手掛けてきたソングライター/プロデューサー。昨年9月には、欧州でのコライト旅から生まれた、自身名義としては1stアルバムとなる『Lost, Never Gone』をリリースした
Liveのお気に入りポイント
Pedal
Liveの良さの一つは、音源やエフェクトなどの付属デバイスとDAWシステムの連携がすごくシームレスにデザインされているところ。プラグイン・ウィンドウを開かなくてよかったり、オートメーションを描くときにパラメーターをいちいちアサインしなくてよいなど、その恩恵を受けるために基本的には付属音源やエフェクトを使っている。使うプラグインは音質と扱いやすさの比率が3:7くらいを目安にして選んでいて、音がどれだけ良くても動作が重いものは嫌いだ(こらえ性が無いので)。Live付属デバイスのようにイメージをすぐ実現できることが重要だと思う。
よく使うデバイスのPedalは取り回しがよいから好き。ぐちゃぐちゃな音にしたかったら、とりあえずPedalを挿している。パラメーターにSubとDry/Wetがあるのも良い。また、Drum Busは現代的なビートに必要な要素だけを抽出してあって素敵なデバイスだ。また、地味だけど一番革新的なものがRack。DAWに求めていることは、こういう派手じゃないけれどワークフローに直結する要素だと思う。
Liveのお薦め機能/デバイス
Hybrid Reverb
Live 11ベータ版のときから一番好きな新エフェクトがHybrid Reverb。Shimmerも使えるし、IRのカテゴリー“Textures”ではトーン自体がドラスティックに変わるから面白い。また、Rackのマクロはスナップショットに対応し、それをプリセット的に扱えるという発想は素晴らしいと感じた。それに伴って808 Core Kitなどの以前からあるプリセットのRackもアップデートされているのは地味にうれしい。リニューアルされたReduxはかなり使いやすく、ハイパー・ポップごっこが簡単にできる。SPITFIRE AUDIOの御家芸的なピアノ音源=Upright PianoがLiveネイティブの音源として扱えるのもうれしいところ。インディー/オルタナ系の音なので、少ない音数での存在感が魅力的だ。Chorus-EnsembleではVibratoが付いたのが面白い。サンプルとかにぶち込んで使うと良さそうだと感じた。
【特集】一歩先を行くDAW〜Ableton Live 11の可能性
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気鋭クリエイターが語るAbleton Liveのココがすごい!
Ableton Live 11 製品情報
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