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「RUPERT NEVE DESIGNS 5254」製品レビュー:ビンテージ志向の音とモダンな仕様を備えるダイオード・ブリッジ・コンプ

RUPERT NEVE DESIGNSから発売されたコンプ「5254」

 去る2月12日、その生涯を閉じたオーディオ・デザイン業界のレジェンド=ルパート・ニーヴ氏。NEVEをはじめ、FOCUSRITEやAMEKなど、さまざまなブランドで名機を残してきました。そのニーヴ氏が2005年に設立したのがRUPERT NEVE DESIGNS。同社のデュアル・モノラル/ステレオ・コンプレッサー5254をレビューします。

クラスA回路やカスタム・トランスを内蔵
12種のプリセットでコンプのタイムを選択

 NEVE DESIGNSのチャンネル・ストリップShelford Channelのコンプ回路をベースにしたクラスAの電子回路、そしてカスタム設計のトランスが搭載されています。ニーヴ氏の手によるダイオード・ブリッジ・コンプと言えば、1960年代の末に発売されたNEVE 2254がとても有名で、今回の5254の開発背景にも2254がある模様。とは言えオールドNEVEの再現ではなく、ビンテージライクなトーンと現代的な操作性&柔軟性を兼ね備える完全な新製品です。

 

 外観はShelford Channelと共通するモダンでスタイリッシュな1U設計。ブランド・ロゴをあしらった各チャンネルのVUメーターが印象的です。操作子に関してはスレッショルドやレシオ、出力ゲインに加え、現代のハードウェア・コンプに欠かせないサイド・チェイン・ハイパス・フィルター、コンプのかかった信号に原音をミックスできるブレンド用のノブなどを装備。そして目玉は“タイミング”というノブ。これはFAIRCHILD 660などのTIME CONSTANTさながらで、アタック/リリース・タイムのプリセットをFAST/MF/MED/MS/SLOW/AUTOの6種類から選択できます。また左隣のFASTスイッチを押すと、各プリセットのアタック/リリース・タイムを速めることが可能。つまり全部で12種類のプリセットを扱えるわけです。

チャンネルの操作子。ノブ類は、左からサイド・チェイン・ハイパス・フィルターのカットオフ周波数、スレッショルド、レシオ、出力ゲイン、タイミング、ブレンド。ボタン類については諸機能のオン/オフを行うもので、写真で緑に点灯しているのがハイパス・フィルター、白いのはリアのサイド・チェイン・インサート、黄色く光っているのがタイミングのFASTモードのオン/オフとなっている

チャンネルの操作子。ノブ類は、左からサイド・チェイン・ハイパス・フィルターのカットオフ周波数、スレッショルド、レシオ、出力ゲイン、タイミング、ブレンド。ボタン類については諸機能のオン/オフを行うもので、写真で緑に点灯しているのがハイパス・フィルター、白いのはリアのサイド・チェイン・インサート、黄色く光っているのがタイミングのFASTモードのオン/オフとなっている

 サウンドをチェックしていきましょう。生楽器中心のポップス曲のマスターにインサートし、ステレオ・ミックスの処理に試してみます。まずはステレオ・リンクのボタンをオンにしましょう。出力ゲイン・ノブはリンクしないのですが、ステップ式なのでマスターでの使用時も安心です。

 

 レシオを3:1に設定し、スレッショルドを思い切り下げて大胆にゲイン・リダクションしながら、タイミングのノブを回してみます。このタイミング・ノブが実に面白く、コンプレッションの具合はもちろん全体のトーンやバランスが激変するのです。基本的には最も左のFASTへ近付くほどより多くの倍音が生じ、右に回してアタック/リリース・タイムを遅めていけばスムーズなかかり具合となっていきます。そして、どのプリセットも音色が本当に素晴らしい。資料にある通りファットで、なおかつ豊かな倍音が加わり非常に魅力的な質感です。

 

 今回のソースにはMSというプリセットが最も好相性だったので、それを選択した上でスレッショルドを適正レベルに設定し、サイド・チェイン・フィルターでキックによるポンピングを抑制。しばらく聴いた後、バイパス・スイッチを用いて元音と比較してみたところ、しっかり煮詰めたはずのミックスがもう聴けなくなってしまうほどに、上質かつ押し出しの強い仕上がりだと思いました。抜群に状態の良いビンテージ・コンプを使用したときのような感覚で、個人的に本当に好みの質感です。

リア・パネルの端子群は、写真左からRchのライン・アウト(XLR)とライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)、両チャンネルのサイド・チェイン・インサート(フォーン)、Lchのライン・アウト(XLR)とライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)

リア・パネルの端子群は、写真左からRchのライン・アウト(XLR)とライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)、両チャンネルのサイド・チェイン・インサート(フォーン)、Lchのライン・アウト(XLR)とライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)

倍音によってつやのあるリッチな音に
いかなるソースも狙いの結果にしやすい

 ソースをビートの強い打ち込み曲のステレオ・ミックスに変更し、先と同じ要領でチェックしていきます。かなりローエンドの豊かな曲ですが、大胆にコンプレッションしても決して音がやせません。使用するタイミング・プリセットは、MSよりやや速めのMEDに決定。オーバーめにコンプレッションしつつ、ブレンド・ノブでコンプ信号と原音を1:1にします。現代的な質感の曲にもばっちりマッチすることが分かりましたし、ブレンド機能やサイド・チェイン・フィルターが付いていると格段にフレキシブルに使えることをあらためて実感しました。

 

 単体のトラックにも使ってみます。まずはアコースティック・ピアノでチェック。ピアノへのコンプレッションはコントロールが難しく、へたをするとリリースが不自然で安っぽい音になりがちですが、5254では絶妙に設定されたアタック/リリース・タイムによって的確な制御が可能です。今回はタイミングのMEDプリセットで、つややかな質感に仕上がりました。

 

 次はボーカル。テンポが速めで、言葉の数が多い英詞の歌です。タイミングをFASTモードのMFに設定し、しっかりとかけてみたところ、これも大当たり! EQが不要に感じるほど複雑な倍音構成となり、気持ち良く前に張り出してきます。

 

 最後はストリングスのバス・コンプとしてテスト。タイミングをSLOWにして、大胆にゲイン・リダクション。“かかりっぱなしで戻ってこない”設定にします。その後、BLENDで原音:コンプ信号=7:3ほどにしてみると、狙い通りの素晴らしい効果。倍音がしっかりと付加され、処理前に気になっていたピッチのやや不安定な部分が気にならなくなりました。アンビエンス感が程良く増し、リッチな質感です。

 

 いろいろとチェックしてきましたが、何に使っても狙い通りの仕上がりに持っていけるので、久しぶりに時間を忘れてグリグリとノブを触ってしまいました。特にマスターでの使用は、やり始めると抜けられなくなるくらいハマってしまい、お借りしているデモ機を返却するのが惜しくなるほど。プラグインのみのミックスに物足りなさを感じている方にも、ぜひ試してみてほしい一台です。

 

大野順平
【Profile】スタジオ・サウンド・ダリ所属のエンジニア。中田裕二、福原 美穂、SUGIZOらの作品を数多く手掛けるほか、baroqueや榊いずみ、浜端ヨウヘイ、叶和貴子といったアーティストにも携わる。

 

RUPERT NEVE DESIGNS 5254

オープン・プライス(市場予想価格:418,000円前後)

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SPECIFICATIONS
▪動作方式:ダイオード・ブリッジ ▪チャンネル数:2(デュアル・モノラル/ステレオ) ▪周波数特性:10Hz〜120kHz(±0.25dB) ▪入力インピーダンス:10kΩ ▪出力インピーダンス:40Ω ▪最大入力レベル:+26.7dBu ▪最大出力レベル:+26.7dBu ▪等価ノイズ・レベル:−104dBu ▪全高調波ひずみ率:0.0008%@1kHz ▪タイミング:FAST(アタック250μs〜2ms、リリース100〜200ms)、MF(アタック1〜5ms、リリース100〜200ms)、MED(アタック3〜18ms、リリース350〜700ms)、MS(アタック5〜40ms、リリース600ms〜1s)、SLOW(アタック10〜80ms、リリース800ms〜1.5s)、AUTO(アタック5〜40ms、リリース400〜900ms/T1/1~2s/T2) ▪外形寸法:483(W)×42(H)×209(D)mm ▪重量:4.5kg

 

製品情報

 

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