IK MULTIMEDIA ILoud Micro Monitor チェック&レビュー 〜自宅のモニター・スピーカーをアップデート!

IK MULTIMEDIA ILoud Micro Monitor モニター・スピーカー チェック&レビュー

自宅のモニター環境をアップデートしたい人向けに、IK MULTIMEDIAのILoud Micro MonitorとILoud MTM、REPRODUCER AUDIOのEpic 5とEpic 55、そしてOUTPUT Frontierという話題のモニター・スピーカー5機種をピックアップ。D.A.N.の櫻木大悟とorigami PRODUCTIONSのエンジニア藤城真人氏にチェックしてもらい、レビュー・コメントをいただいた。ここでは、まずIK MULTIMEDIA ILoud Micro Monitorへの評価を見ていこう。

Photo:Hiroki Obara

IK MULTIMEDIA ILoud Micro Monitor

省スペースや可搬性重視のコンパクト・ボディながら
スタジオ・モニターとしてのサウンドを追求

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 設置スペースに限りのある場所でも、スタジオ・クオリティの音質が得られるよう開発されたモデル。内蔵DSPで位相や周波数特性を制御し、小型ながら45Hz(-10dB)という低域特性を誇る。デスクトップ設置時に音の乱反射を補正するDESKモードのほか、低域と高域のためのEQを装備。

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Lchエンクロージャーの背面。Bluetoothペアリング・ボタンやEQスイッチ、Rchとのリンク端子(付属ケーブルを使用)、ステレオ・ミニとRCAピンのライン・インL/R、音量ノブなどを装備

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底面のスタンドでは2段階の角度調整が可能。また、マイク・スタンドへの取り付けも行える

 SPECIFICATIONS 
■構成:3インチ・ウーファー+3/4インチ・シルク・ドーム・ツィーター ■形式:バスレフ型 ■周波数特性:45Hz~22kHz(-10dB) ■アンプ:クラスD、50W RMS、バイアンプ ■最大音圧:107dB@50cm(100Hz~10kHzの正弦波の平均) ■クロスオーバー:3kHz ■EQ:DESK、HF(4kHz以上を+2dB)、LF(250Hz以下を-3dB) ■外形寸法:80(W)×135(H)×90(D)mm ■重量:1.72kg/ペア ■価格:オープン・プライス(市場予想価格:40,700円前後/ペア)

 

櫻木大悟 レビュー・コメント

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 一般的な再生環境に近い目線で判断できる 

 中域がピシッと聴こえて、どことなく標準的なカー・ステレオの音を想起しました。この鳴り方は使い道があると思います。と言うのも、音楽の再生環境はリスナーによってまちまちなので、制作側は民生機でも良く聴こえるように音作りする必要があり、その際にILoud Micro Monitorがあれば一般的な環境に近い目線で判断できると思うからです。だから低域についても、メインのモニターとして考えるなら50Hz以下がもっと見えるとよいのですが、そうなるとスピーカーとしての役割が変わってしまうなと。あくまで“このレンジ感の中でもうまく鳴らせているかどうか”を確かめるような用途に効果的だと思いますし、ローエンドの処理が甘ければきちんと鳴ってくれないというシビアさも感じます

 

 聴感上は60Hz辺りまで見え、低音の存在感が小音量時にも薄くなりにくい印象。また、音一つ一つのポジショニングが明確な曲を聴いたときに、定位の再現性の高さを感じました。その点でもモニター向きですし、ヘッドフォンやハイエンド・スピーカーとの併用にも力を発揮しそうです。

 

藤城真人 レビュー・コメント

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 シビアに設置せずとも定位がとらえやすい 

 小型で軽量な設計とは裏腹に密度感や迫力のある音で、ローエンドまでは見えないものの低域の量感がきちんと分かります。無理にブーストしているような印象は無く、コンパクトな筐体の中で奇麗に鳴っている感じ。全体としては中域にピントを合わせたような音なので、ワイド・レンジなヘッドフォンと併用すれば自宅でのミックスにも効果的だと思います。高域に関しては、とりわけDESKモード時にスッと伸びる印象。このDESKモードが優秀で、設置面からの反射をきちんと計算した上での補正という感じです。EQの爪痕のようなものは無く、入れた途端に過渡特性(音の立ち上がり~減衰のつながり方)が飛躍的に向上しました。

 

 音量を変えてもあまり印象が変わらない高域に対し、低域は小音量時に“体感部分”が控えめに。でも見えなくなるのではなく、低音がどのくらい入っているかは判断できるはずです。シビアに設置せずとも定位がとらえやすく、スウィート・スポットは狭めですが50cmほどの距離での使用が想定されているでしょうから、用途に合っていると思います。

 

櫻木大悟
2014年に市川仁也(b)、川上輝(ds)とD.A.N.としての活動を開始。ディープでメロウなバンド・アンサンブルをポストプロダクションでエレクトロニックな質感として表現し、コアな音楽ファンからも絶大な支持を受ける。今回はD.A.N.の楽曲やテクノ~モジュラー・シンセ音楽を試聴ソースとして使った

藤城真人
1991年生まれ。PAやダブ・ミックス、レコーディングなどを独自に実践した後、origami PRODUCTIONSの所属エンジニアとして活躍。Ovallやmabanua、Kan Sano、碧海祐人ら、さまざまなアーティストの作品を手掛けてきた。今回はモダンなR&B~ポップスをリファレンス音源として使用

 

製品情報