ハードウェア・モデリングから独自の製品まで、多くのプラグインを発表するSOFTUBE。当コーナーでは、プラグインのレビューと併せて、オリジナルのプリセットもダウンロード可能となっています。今回取り上げるのは2つのプラグイン、VocoderとTape Echoesです!
FREEZEでアルペジエイターのような効果を演出
まずはボコーダー・プラグイン、その名もVocoderを紹介します。ボコーダーとは戦前に軍事用機器として発明され、多くのミュージシャンに音楽へと応用された、いわゆる“ロボット・ボイス”を生成するエフェクター。入力したオーディオ信号が、シンセの音階や和音に作用し発声されるという仕組みです。近年、ボーカル・エフェクトの有効な表現方法として見直され多用されている印象で、私が作曲した三阪咲「僕でいいじゃん」の中でもコーラスの一員として使っていて、アイディア次第で独特の雰囲気を出すことができます。
それではプリセットを作成した手順を追いながら各パラメーターを見ていきます。まずは下段左のCARRIER SYNTH。波形を選びPWMつまみでモジュレーションの幅を決めてサウンド・メイクできるもので、かなり大きな変化があり面白いです。今回は、特徴的なモジュレーションを持つ矩形波を使ってみました。私はMIDIで音程を入力をしているので、Vocoder上で音程を設定するTRANSPOSE CHORDはオフにしましたが、単一の音をドローン的に鳴らす場合などにも有効だと思います。リズムのグルーブ感を出す場合、アタックは最速にするのが通例なのですが、ほんの少しだけ遅くした方が立ち上がりのグルーブが出たのでそうしてあります。
右側の各帯域のフィルターを調節するRESYNTHESIS CONTROLでは、入力信号の反応が可視化されており、画面上でバランスを取ることが可能です。有効にする帯域の数によって、レンジ、ボイス量が変動します。抜け感となじみのバランスを考えて、プリセットでは12の帯域を選択しました。
上段中央のUNVOICEDは、ディエッサーに引っかかるような高音の破裂音などに作用。SENSITIVITYつまみを使って感度を調整します。上げていくほど無機質な印象を付加できるもので、少しヒューマンな感じにしたかったこともあり絞り気味に設定しました。 その隣のFREEZEは小節単位で音節を維持し続ける機能。1/16をオンにするとアルペジエイターのように上下する効果が得られます。曲のコード進行に合わせてMIDIを入力しておくか、オクターブや5度などシンプルなMIDIを入力してみるのもいいかもしれませんね。作成したプリセットでも1/16をオンにするだけで変化を楽しめるように設定しておいたので、ぜひ使ってみてください。
Tomoki Kiuchi's Presets:SolidVocorder
グルーブ感のあるボコーダー・サウンド
楽曲を彩るコーラスに、もちろんソロとしても使えるように“グルーブが出る音”をテーマにしました。サウンド・デモでは“This is TK’s style Vocoder Sound DaDa DaDaDDa”と言っています。音作りの際は、言葉のリズムにグルーブが出るように設定していきましょう。
直感的な操作性を持つTAPE GLITCH
そして、Tape Echoes。こちらも名前の通り、アナログ・テープをシミュレートしたディレイ・エフェクトです。ディレイのプラグインは数あれど、このTape Echoesをチョイスする場合は、あらかじめ狙った音があるときでしょう、というくらい分かりやすいキャラクターを持っています。
視認性の高いDELAY TIMEスライダーや、FEEDBACKといった基本的なディレイの機能に加え、フィルターやひずみ、さらにテープの劣化具合をシミュレートするDIRTを搭載。ディレイに収まらない独特な音色作りが可能です。
また、面白い機能として、TAPE GLITCHをお勧めします。DOWN/UPの2つのスイッチがある、テープ速度を変化させたようなエフェクトです。再生しながらオン/オフしてみると効果が分かりますよ。最近のポップスでは巧妙なエフェクト・ワークが多用されているので、自ら操作するDIY的なエフェクトは、一期一会の楽しい要素になると思います。
Vocoder、Tape Echoesともに視覚的にも分かりやすいので、感覚を生かしてどんどん触ってみてください。2つを併用すれば、ボコーダーによるデジタルの洗練された趣がありつつも、生き生きとしたサウンドを演出することができます!私のプリセットも、そのお役に立てればと思います。
Tomoki Kiuchi's Presets:8Echo middleBPM
ローファイな楽曲のリードに!
Vocoderで作ったプリセットを、ローファイ系のリードに使えそうな設定にしてみました。Tape Echoesのキャラクターがよく出るように、DIRTは強めの設定にしたので、サウンドの特徴をつかんでもらえると思います。良い感じに汚れたリバーブの響きになってくれるのもお気に入りです。
木内友軌
音楽プロデューサー、作詞家、作編曲家。バンドとクラブ・シーンにて培ったハイブリッドなサウンドと、アーティストの潜在能力をマッチさせたプロデュースが定評。Web3における音楽プロデューサーとして、海外のプロジェクトにも積極的に参加。最新作は、新塘真理『ピンク髪と海のお話』