ハードウェア・モデリングから独自の製品まで、多くのプラグインを発表するSOFTUBE。当コーナーでは、プラグインのレビューと併せて、オリジナルのプリセットをダウンロードで提供します。今回取り上げるのは、バーチャル・モジュラー・シンセのModularです!
同じモジュールを幾つでも使用可能
皆さんこんにちは、モジュラー・シンセ奏者のHATAKENです。今回は、ハードウェア・モジュラー・シンセの使い手としての視点からModularをレビューします。日頃、物理的にパッチ・ケーブルを使い、ノブを指で調整しているので、Modularがモニター上のバーチャルな画面でパッチングやノブをマウスとカーソルを使って操作しなければならないと思うと“使いづらそう……”というのが第一印象でした。
しかしいざ使ってみるとどうでしょう、何かと快適であることが判明しました! パッチ・ケーブルがかさばらない、もつれない。ジャック間をドラッグしてつなぎ、外したらケーブルはすぐ消えてしまうので邪魔にならない。ケーブルでノブが見えないなんてこともなく、パッチ状況はカーソルをジャックに重ねれば表示されるため一目瞭然です。通常はパネル全景が見えているのでノブの値も認識しやすく、さらに同じモジュールを複数台使用できるのがソフトウェアならではのメリット。実機で複数台所有すると費用がかさみますしね。電源の消費量を気にせずに、コンピューターのパワーが許す限りモジュールを増加できます。近年、CPUの性能が上がったことも、Modularを実用可能にしているのではないでしょうか。
実機ではパッチングのセーブはできないので、面白いパッチング・アイディアを保存できることは、実機を使う身としては夢のようです。写真やメモ、各モジュールに備わる保存機能を活用することもありません。ソフトの場合はバッファード・マルチ(分岐)を使わずとも、一つのアウトプットに幾らつないでも信号が減衰することなく、同じアウト・ジャックに幾つでもパッチできたりするのはメリットですね。
HATAKEN's Presets:HATAKEN's Patch A
3基のオシレーターを融合
音域の異なる3基のオシレーターを、スケールを合わせて個別にシーケンサーで鳴らし、さまざまなディバイドのクロックを選択スイッチにアサインし、S&Hで選択させています。ランダムなようで大きなサイクルのジェネレーティブ・ミュージック風。100BPM想定です。
実機をエミュレートした拡張モジュールを用意
ModularはプラグインですのでDAWとの連携はもちろん、オーディオI/OやMIDIを使った実機との接続にも対応しています。レコーディングなどでモジュラー・シンセ的な音の要素を取り入れたいときに、実機のみを使うより速いでしょうし、保存が効くので再現性も心配いりませんね。
このように見ていると、実用面でもコスト・パフォーマンスの面でも、ソフトウェアであっても、一度モジュラー・シンセの魅力を知る上でも、持っていて損はないと思います。私は実機が大好きですが、保存、再現が容易なのでプロダクション作業をするならModularを選びたいです。正確にはハードとソフトでは音質も違います。しかし、実機のモジュラー・シンセかModularかを録音したものから判別するとなると、どちらが何かというのを当てる自信はありません。
さらに、Modularは圧倒的にリーズナブルで、コスパが高いです! しかも、SOFTUBEオリジナルのモジュールが20種類以上あり、基本のモジュールはすべてそろっています。標準搭載されているDOEPFERをはじめ、BUCHLA、MUTABLE INSTRUMENTS、4MS、INTELLIJEL、VERMONAといったブランドが誇る名機をエミュレートしたモジュール=Modularアドオンを購入して拡張も可能です。実機で販売されている機材を試せるのも魅力的ですね。入門者の方への学びの場として、“モジュラー・シンセとはどんなものなのか?”を知るためにも適しています。注目は玄人でもヒントになるような200以上のプリセット・ライブラリー。ほかの方が作ったパッチングの仕組みを探るのは良い勉強になります。
モジュラー・シンセが注目されて久しいですが、Modularを通してそれがどんなものなのか、音が音楽になる仕組みを知り、操作するうちに、音楽と音、音とノイズ、その境界線が消えていく。あなたを、あなたが持つ既成概念から解き放つアイディアをもたらすツールとなるかもしれません。
HATAKENs Presets:HATAKEN's Patch B
リズムを加えた飽きの来ないループ
フィルターでキックを作り、ベースやハットを加え、Pulse-Width Modulationを生かして飽きの来ないループを生成。そしてS&HのソロをVCAにゆっくりとしたモジュレーションをかけて出たり入ったり、パンさせたりしています。80BPMでどうぞ。
HATAKEN
1990年代よりシンセ奏者として活動。2013年から東京モジュラーフェスティバル(TFoM)をデイブ・スキッパーとともに毎年開催。世界中のモジュラー・シンセ・メーカーや、モジュラー・シンセを演奏するアーティストを招き、国内でのモジュラー・シンセの普及に努めている。