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パナソニックセンター東京 × パノラマティクス 〜今へ受け継がれるテクノロジーとヒストリー

パナソニックセンター東京 × パノラマティクス 〜今へ受け継がれるテクノロジーとヒストリー

東京都江東区有明にあるパナソニックセンター東京は、最新のテクノロジーが満載の体験型のショウルーム。こちらで12月26日まで開催されている展示が、3つの筒状の空間で先進の映像と音響を体験できる“immersion”と、パナソニックが生み出してきた製品が並ぶ“History”だ。監修は、パノラマティクス(旧ライゾマティクス・アーキテクチャー)主宰の齋藤精一氏。展示全体の音楽を、DJ UPPERCUTが担当した。展示に込めた思いを、2人に詳しく聞いた。

Photo:Takashi Yashima

 

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展示の監修を務めたパノラマティクス主宰の齋藤精一氏(写真右)と、展示全体の音楽を担当したDJ UPPERCUT(同左)

音を体で感じてもらいたい

 展示はパナソニックセンター東京の南入口から入ってすぐ、手前にHistory、奥にimmersionという配置で開かれている。immersionは、1200、1500、1800という3種類の円筒形のブースが用意されており、RAMSAブランドのスピーカーによる迫力のある音響や、360度に展開された映像と音響を体感できる体験型の展示だ。まず齋藤氏に、半密閉とも言える閉ざされた空間を作った理由について聞いた。

 

 「当初はVRグラスを使って何かできないかなという話をしていたんですが、コロナ禍になったことで安全上の問題が出てきてしまって。そういった中で、非接触で360度の映像/音響体験をできないかということを提案してみたんです。パナソニックさんにはプロジェクターもオーディオもあるんだからできるんじゃないかという無茶振りですね(笑)。昔からVRを使わない360度のものをコンセプトとして考えてはいたので、それを今回形にして作ってもらいました」

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immersionは2つに分かれた円筒が合わさり、半密閉の状態で展示を体感する。なお1200/1500/1800という数字は、それぞれの直径(mm)を表している

 3つのimmersionはそれぞれ内容が異なっている。1200は音を中心とした展示。1950年代から現代まで、10年ごとに区切られた各年代の音楽を1曲で振り返っていくものだ。1500と1800は、円筒の内壁に360度映し出される映像と、頭上にある2台のスピーカーにより包み込まれるような音響空間となっている。1500は世界平和への願いが、1800は日本の美しい風景とアスリートの情熱がテーマとしてあり、その映像の動きに合わせて、DJ UPPERCUTが音を後からシンクロさせて演出していった。3つの中で唯一、サブウーファーのWS-HM518Lが設置されているのが1200。その狙いについて齋藤氏に伺った。

 

 「サブウーファーを入れたのは音で勝負したかったからこそなんです。今ってどこもかしこも五感を全部刺激するようなものが多いですが、聴覚と触覚を使って感じる音を中心にしています。メディアとしての音にもう一度注目すべきではないかということを強く思っていて、ヘッドフォンを通したものではなく、自分の耳と空間の振動から伝わってくるものを体で感じてほしかったんです。スペクトルのような映像のモニターを付けてはいるんですが、小さなお子さんでも音だけで時代の変化を理解できるようなものにしたいと考えていました」

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immersion 1200の内部。L/Rにニアフィールド・スピーカーのRAMSA WS-NF075、サブウーファーとしてWS-HM518Lをセッティング。迫力たっぷりのサウンドとなっており、DJ UPPERCUTは「本当に良いサブウーファーですね」と絶賛していた

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immersion 1500再生中の内部。壁面に360度展開された映像が映し出される。スピーカーは頭上にRAMSA WS-AR080-Wを2台セッティング。immersion 1800についても同様のシステムが組まれている

 狭い半密閉空間という音響的に困難な状況の中、immersionの実現を支えたのがRAMSAの音響シミュレーション・ソフトウェアPASD。本来であればピーキーな特性になってしまう円筒の空間を、まずPASDでベースとなるチューニングを行うことである程度の基準までは音場を作ることができる。周波数特性だけでなく、位相特性の制御も行えるという点がimmersionにおいては大きな効果を挙げている。では音に特化したという1200の音楽を、どのような意図を持って作曲したのか、DJ UPPERCUTに聞いた。

 

 「機材の進化によって、音楽も進化を遂げたという部分を表現しています。1950年代ならモノラルのポータブル・ラジオから流れるビバップ、それからロック、ソウル、ディスコと変わっていくにつれて音響システムも進化している。時代とともにドラムの鳴り方も変わっている、というようなミックスの変化も感じてもらいたいですね。2010年代のEDMでは位相の広がった派手なサウンドになり、現在から未来ではもっとモノラルが芯にあるサウンドになっています。サブウーファーがあることでサブベースのような低域も出すことができたので、最終的には肌で体感してもらいたいということをゴールに設定していました」

世界を驚かせるパッション

 齋藤氏が監修を務めたもう一つの展示がHistory。これまでパナソニックが開発してきた、時代の転機となったさまざまな製品が一同に会している。それぞれの展示下に配置されたスピーカーから、製品にまつわる音がループして鳴っており、全体が合わさることで一つの音楽として聴こえてくるという趣向だ。齋藤氏は「コロナ禍になる前からやりたかったんですよ」と語る。

 

 「これまでパナソニックさんが開発してきた製品には、日本だけじゃなく海外の人たちも“えっ?これもパナソニックだったの?あれもパナソニック?”と思うものがたくさんありますよね。これだけバリエーションの広い消費家電を作っているメーカーは日本でもほかには無いんじゃないかなと。いろいろな種類の製品が集まった中で、同期して1曲に聴こえるっていうことを何とかできないかと思い描いていました。これも無茶振りでお願いしています(笑)」

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Historyでは各展示台にスピーカーが搭載されており、製品にまつわる音声がループ再生されている。各展示のループはそれぞれが同期しており、合わせて聴くと1曲になるよう設定されている。Historyを進んだ先にimmersionがあるという構成だ

 ループを作成したDJ UPPERCUTいわく「テーマパークに来たような感覚にしたかった」とのことだ。

 

 「導線として、Historyからimmersionに向かっていくようになっているので、一つのアトラクションのようにしたかったんです。Historyで始まりを知った後に、immersionで今を知ることができるのが大事だと思ったし、そこにワクワクしてもらいたくて。ループについては、例えばラジカセだったら昔歌って録音したな、とかそういうことを思い出しながら作っていきました。ストレスにならないような周期で鳴るようにしたり、一つずつEQを調節したり、かなり試行錯誤しています」

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1954年製造のHi-Fiスピーカー、8PーW1。当時としては珍しいダブル・コーン方式を採用している

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1967年製造のラジオ付きカセット・テープ・レコーダー、RQ-231。ラジオ放送が録音できる、日本初のラジカセだ

 

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写真右が1965年に製造されたTECHNICSブランドの第1号製品となるスピーカー、Technics1。写真左は1984年に発売のRAMSA WS-A200

 展示のキーワードは“パッション”だったと話す齋藤氏。最後にこう語ってくれた。

 

 「ターンテーブルとかRAMSA製品の開発秘話とかを聞くと、これがなかったら音楽業界って今どういう方向に行っていたんだろうと思います。パナソニックさんのひらめきで世界を驚かせたいというパッションがあったからこそ生まれたものなのだろうなと。当時の開発者の方たちが何か面白いことが起きるんじゃないかという期待を込めて、本気で作ったものを集めています。そのパッションを知ってもらいたいし、物で見てもらいたいし、体で感じ取ってほしいですね」

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世界初のDJ用レコード・プレイヤーのTECHNICS SL-1200MK2。齋藤氏の思い入れも深い製品で「これは絶対外せませんでした。相当お世話になりましたからね」と語る

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Historyとは別に、施設内ではRAMSAラインアレイ・スピーカーのWA-LA500AWPも展示されている。東京2020大会でも活躍したRAMSAの“今”を表す製品だ

 

※お手持ちのスマートフォンやパソコンから館内を見学できるバーチャルショウルームが公開中です。

 

パナソニックセンター東京

(りんかい線「国際展示場駅」徒歩2分 または新交通ゆりかもめ「有明駅」徒歩3分)

〒135-0063 東京都江東区有明3-5-1
開館時間:午前10時から午後6時
休館日:月曜日、年末年始


齋藤精一
【Profile】パノラマティクス(旧:ライゾマティクス・アーキテクチャー)主宰。1975年、神奈川県生まれ。東京理科大学理工学部建築学科卒。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。Omnicom Group傘下のArnell Groupにてクリエイティブとして活動し、2003年の越後妻有アートトリエンナーレでのアーティスト選出を機に帰国。フリーランスのクリエイターとして活躍後、2006年に株式会社ライゾマティクス(現:株式会社アブストラクトエンジン)を設立。2016年よりRhizomatiks Architectureを主宰し、2020年には組織編成によりPanoramatiks(パノラマティクス)と改称。現在では、行政や企業などの企画、実装アドバイザーも数多く行う。2025年大阪・関西万博PLLクリエイター

DJ UPPERCUT
【Profile】東京出身。音楽プロデューサー。常々研究/経験を繰り返し培われてきた知識から生まれるその音質/音像は体感として人の心を揺さぶる。自身の作品リリースと並行して膨大な量のプロデュース・ワークをこなし、さまざまなアーティストの作曲、国内外のアート作品/映像作品を手掛けている。

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