「RAMSA WS-HM5064 / WS-HM518L」製品レビュー:ホールのメイン・システムを想定した2ウェイ・スピーカー&サブウーファー

RAMSAより新たなPA用スピーカーWS-HM5000シリーズが発売

 PANASONICの業務用音響機器ブランド=RAMSAより新たなPA用スピーカーWS-HM5000シリーズが発売された。今回は、2ウェイ・モデルのWS-HM5064とサブウーファーのWS-HM518Lをチェック。RAMSAのデジタル・パワー・アンプWP-DM900シリーズと併せて使ってみた。

WS-HM5064は新設計ホーンによる
かぶりや抜けの無い音場が特徴

 WS-HM5064とWS-HM518Lは落ち着いた黒色のエンクロージャーを有し、半ツヤの高級感漂う仕上げとなっている。重厚さもあり、構造面の強度がしっかりしている印象だ。

 

 15インチ・ウーファーのWS-HM5064は446(W)×780(H)×490(D)mmというサイズだが、重量は約32kgで、このクラスでは標準的。大きさに対して、実際に持ってみると軽く感じる。エンクロージャーは木製合板に凹凸のある塗装を施行。金属製グリルのパンチング・ネットは開口部が多いものの、一つ一つが六角形のため強度が期待できる。

 

 正面の内部は新設計のSCWG(Square Contour Wave Guide)ホーンが上半分を占める。このSCWGホーンは斜め方向の指向性も制御することで、かぶりや抜けの無い音場を実現するという。WS-HM5064の指向角は60°(水平)×40°(垂直)、シリーズ機のWS-HM5104は100°(水平)×40°(垂直)となっているが、ホーン・ローテーション可能なため、横向きの設置にも対応。底面と右の側面にはゴム足があり、それらを受ける穴が天面と左の側面にあるのでスタッキング時に便利だ。また、フライングのためのM10ナットが計12カ所あり、幅広いセッティングをサポートする。スピーカー・スタンドを使う際には別途マウント・アダプターが必要だ。

 

 高域にコンプレッション・ドライバー、低域に38cm(15インチ)径の新開発コーン型ユニットを備え、ホーン上部左右にバスレフ・ポートの開口部を設置。背面には入力とパラレル接続用のスピコン端子、パッシブ/バイアンプ駆動の切り替え部がある。

WS-HM5064の背面には、パッシブ/バイアンプ駆動の切り替え部(写真上)やスピコンの入力およびパラレル接続のための端子(同下)が装備されている

パッシブ/バイアンプ駆動は、内部のケーブルで切り替える

 サブウーファーWS-HM518Lもバスレフ型で、46cm(18インチ)径のコーン型ユニットを搭載する。サイズは780(W)×518(H)×635(D)mmとなっており、一発入りのサブウーファーとしてはしっかりとした容積。重量は約48kgだ。前面にスピコンの入力を1つ、背面にはスピコンの入力およびパラレル接続用端子を1つずつ装備。床置き専用で、天面にはグラウンド・スタッキング金具やスピーカー・ポールのためのM20ナット、シリーズの2ウェイ機をスタッキングする際のゴム足の受け穴が用意されている。

WS-HM518Lの背面。スピコンの入力とパラレル接続用の端子がスタンバイ

指向性制御によりタイトな音のWS-HM5064
WS-HM518Lは35Hz辺りまでの低域を再現

 今回は弊社スタジオFujiyama Recordings音泉の録音ブース(面積20m2程度)でテスト。サブウーファーWS-HM518Lを横向きに設置し、その上に2ウェイのWS-HM5064を縦に置くというグラウンド・スタッキングでのチェックとなった。ゴム足と受け穴がしっかりと組み合うのでセッティングしやすく、組んだ後の安定感もある。デジタル・パワー・アンプWP-DM900シリーズはDante入出力に対応する4chのDSP内蔵モデルで、RAMSAの音響シミュレーション・ソフトウェアPASDと連動可能。パネル上にスイッチやボリュームは一切無く、操作するにはWindows対応のリモート・コントロール・ソフトが必要なので、RAMSAのWebサイトから無償ダウンロードした。インストール後、パソコンとWP-DM900シリーズをLANケーブルで接続したら設定要らずで認識され、すぐ操作可能に。プリセットの呼び出し、EQやタイム・アラインメントなどの各種設定が日本語で行えるソフトなので、直感的に扱うことができた。

 

 WS-HM5064をバイアンプ駆動に設定。まずはSHURE SM58を使い、声のチェックを行った。WS-HM5064の低域ユニットは口径に見合わずレスポンスが速い印象だ。次に音楽ソースをWS-HM5064のみで鳴らしてみたところ、低域も伸びてはいるものの、やはりWS-HM518Lとの組み合わせは必須だと思った。また500〜600Hzと8kHz辺りに若干のピークを感じたが、狭い空間で鳴らしたせいもあるのだろう。むしろもっと距離を離して聴きたい印象だ。指向性の制御がうまくいっているようで、音像がタイトに感じる。

 

 WS-HM518Lを加えてみると、WS-HM5064を9dB下げたバランスで落ち着いた。18インチ一発のサブウーファーには物足りなさを感じることもあるが、WS-HM518Lはバスレフ・ポートのチューニングやエンクロージャーの容積が奏功してか、35Hzくらいまでの量感ある低音が得られる。

 

 置き方によってもアラインメントが変わるので、今回は試せなかったがPASDでの音響調整……特にFIRフィルターを使用できるのはうれしい。また、WS-HM5064×2台を横向きで縦に連結させリギング設置すると、エリア・カバーの自由度が向上。空間が縦に伸びたホールなどの会場や反響の多い場所にも有効だ。小ホールでは、WS-HM5064×2台+WSHM518Lをメイン・スピーカーとして使えるかもしれない。スピーカー・グリルにはスポンジが付いていないので、屋外や仮設現場ではなく固定設備に向くだろう。ただ、近年の固定設備に対してはサイズが大き過ぎる場合もあるだろうから、8〜10インチ・クラスのハイボックスの発売にも期待したい。

 

遠藤幸仁
【Profile】東高円寺にあるPAカンパニー、LSDエンジニアリングの代表でサウンド・エンジニア。Lucky Kilimanjaro、Lillies and Remains、ELEKIBASSなどのライブ・オペレートを手掛けている。

 

RAMSA WS-HM5064 / WS-HM518L

オープン・プライス

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SPECIFICATIONS
●WS-HM5064
▪形式:2ウェイ・バスレフ型 ▪スピーカー構成:38cm(15インチ)コーン・ウーファー+コンプレッション・ドライバー ▪指向性:60°(水平)×40°(垂直)/ホーン・ローテーション可能 ▪周波数特性(−10dB):51.5Hz〜1.5kHz(低域)、1.5〜18kHz (高域) ▪許容入力(ピーク):2,000W(低域)、200W(高域) ▪駆動方式:パッシブ/バイアンプ切り替え可能 ▪最大音圧レベル(ピーク):130dB(低域)、131dB(高域) ▪定格インピーダンス:8Ω(低域/高域共に) ▪外形寸法:446(W)×780(H)×490(D)mm ▪重量:約32kg
●WS-HM518L
▪形式:バスレフ型サブウーファー ▪スピーカー構成:46cm(18インチ)コーン型サブウーファー ▪周波数特性(−10dB):37.5Hz〜300Hz ▪許容入力(ピーク):3,200W ▪最大音圧レベル(ピーク):130dB ▪定格インピーダンス:8Ω ▪外形寸法:780(W)×518(H)×635(D)mm ▪重量:約48kg

製品情報