「RAMSA WS-NF055」製品レビュー:インピーダンス切り替え機能を備えたPA用の2ウェイ・スピーカー

RAMSAWS-NF055
 RAMSAはパナソニックの手掛けるプロ・オーディオ機器ブランドで、今年で40周年を迎えます。無論、私たちサウンド・エンジニアからの信頼も抜群。ラインアレイ・スピーカーなども開発していますが、ここでレビューするのは屋内用のパッシブ・ニアフィールド・スピーカーWS-NF055です。日本のブランドが匠の技によって作り上げた本機、早速見ていくとしましょう。

16cm径のウーファーを搭載
ブラケットや安全ワイアーが付属

 RAMSAからはこの夏、ニアフィールド・スピーカーとして屋内用3機種と屋外用2機種、天井埋め込み型1機種が発売されており、屋内用/屋外用のエンクロージャー色違い(ブラック/ホワイト)によりトータル11種類のラインナップとなっています。

▲シリーズ製品の一部。左からWS-NF075、WS-NF055、WS-NF015、WS-BN025、WS-BN010のブラック/ホワイトが並ぶ ▲シリーズ製品の一部。左からWS-NF075、WS-NF055、WS-NF015、WS-BN025、WS-BN010のブラック/ホワイトが並ぶ

 屋外用モデルもあるということは、野外での使用も安心ですね。この屋内用/屋外用の製品に共通しているのは、コーン・ウーファー+ドーム・ツィーターの2ウェイ構成で、パワー・アンプ用の入力が設備音響用の4極端子という点。ハンダなどは要らず、ドライバー1本で接続可能です。また、他ブランドだとオプション品になることの多い天井/壁への取り付け金具(ブラケット)とセーフティ・ワイアーが付属。これはなかなかうれしいですね。設置については、縦向きと横向きのいずれにも対応します。

▲︎横向きにして壁に取り付けているところ。付属ブラケット(写真右)と安全ワイアー(同上やや右)を使用 ▲︎横向きにして壁に取り付けているところ。付属ブラケット(写真右)と安全ワイアー(同上やや右)を使用

 入力インピーダンスの切り替えスイッチも特徴です。“ローインピーダンス・モード”はスピーカー1台を1chのアンプで鳴らすとき、“ハイインピーダンス・モード”は複数台を1chのアンプでドライブする際に使用します。さまざまなインピーダンスに対応できるため、ひとまず導入しておいて、後から用途に合わせていくような運用もできるでしょう。また本体上のスイッチなので、どのような環境でも素早くセットアップすることが可能です。

▲背面のインピーダンス切り替えスイッチ。8Ωに合わせるとローインピーダンス、167/330/670Ωはハイインピーダンスのモードだ。100系/70系のパワー・アンプ(出力電圧違い)と併用する際の入力電力も記載 ▲背面のインピーダンス切り替えスイッチ。8Ωに合わせるとローインピーダンス、167/330/670Ωはハイインピーダンスのモードだ。100系/70系のパワー・アンプ(出力電圧違い)と併用する際の入力電力も記載
▲インピーダンス切り替えスイッチの下方にある音声入力端子。4極のコネクター式端子台だ ▲インピーダンス切り替えスイッチの下方にある音声入力端子。4極のコネクター式端子台だ

 ここからはWS-NF055にフォーカスしてみましょう。本機は16cm径のウーファーを搭載し、許容入力は8Ωのローインピーダンス・モードで120W(プログラム)/60W(RMS)。ハイインピーダンス・モードは3種類用意されており、167Ω時に60W、330Ωで30W、670Ωだと15Wの定格入力となります。周波数特性は60Hz〜20kHz(−20dB)で、軽快なサウンドが期待できますね。

低域と高域のユニットのつながりが良く
どこにもピークが感じられない音質

 今回はローインピーダンス・モードに設定し、2つの現場で試してみました。最初は、ステージの間口が広い会場でリップフィル(中抜け補完用スピーカー)として使用。あえてチューニングをせず、ノーEQでスピーカーそのものの音質とパワー感をチェックしました。まずは、ウーファーとツィーターのバランスがよくできています。小型スピーカーにありがちな高域のピークが感じられず、ハイエンドまで奇麗に伸びているのです。低域に関しては、ウーファーの口径がそこまで大きくないためか非常にタイト。スピードが速くて、こちらも好印象です。また、音数が少ない楽曲でも、あらが目立ってしまうようなことはありませんでした。

 実は、どこかにピークを感じたりしたらEQで調整しようと思っていたのですが、その必要は無かったです。これなら小規模会場でのメイン・スピーカーとしても使えそうだなと思い、翌日に控えていたアイドルのインストア・ライブで使用することにしました。まずは店舗常設スピーカーの上に設置させてもらい、PAミキサーにマイク6本とCDプレーヤーをインプット。最初にSHURE SM58で自分の声を鳴らしてみたところ、定位感がとても良い!と感じました。ウーファーとツィーターのつながりが滑らかで、2ウェイながら非常に整った音質。先述の通り、ウーファー口径があまり大きくないので低域のもたつきも無く、素晴らしい出来栄えです。もちろん、低域が無いわけではありません。試しにミキサーのEQで63Hz辺りを3dBほど持ち上げてみると、16cm径ウーファーで鳴らしている感じがしなくなりました。量感を稼げたので、100人くらい居たお客さんにも満足していただけたのではないでしょうか。

 今回WS-NF055を試してみて、あらためて“小型スピーカーの性能はここまで来たんだな”と感じました。ますます余計なアウトボードを用意しなくてもよくなりますし、リーズナブルにハイクオリティな製品を手に入れられる時代がやって来たんですね。さすがは40周年を迎えるブランドです。今後、いろいろな現場でRAMSAのニアフィールド・スピーカーを見ることになるでしょう。

サウンド&レコーディング・マガジン 2019年10月号より)

RAMSA
WS-NF055
WS-NF055-K(ブラック)、WS-NF055-W(ホワイト):52,000円/1台
▪スピーカー構成:16cm径コーン・ウーファー(低域)+ドーム・ツィーター(高域) ▪周波数特性:60Hz〜20kHz(−20dB) ▪入力インピーダンス:8Ω(ローインピーダンス・モード)、167/330/670Ω(ハイインピーダンス・モード) ▪定格入力(ハイインピーダンス・モード):60/30/15W ▪許容入力(ローインピーダンス・モード):120(連続プログラム)/60W(RMS) ▪出力音圧レベル:88dB(1m/1W) ▪エンクロージャー:樹脂製/バスレフ型 ▪外形寸法:230(W)×300(H)×196(D)mm(金具無し) ▪重量:約3.8kg