「RAMSA WR-DX350」製品レビュー:Dante接続に対応した32ビット/96kHz動作のデジタル・ミキサー

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 PANASONICが擁する、各種設備や放送施設用途の業務用音響機器ブランド=RAMSAより、設備向けコンパクト・デジタル・ミキサーのWR-DX350が登場した。デジタル・オーディオ・ネットワーク技術のDanteに対応し、最高32ビット/96kHzでの動作に対応している。

マトリックス・バスの数が多く
施設内の多くの音響コントロールが個別にできる

 外観は落ち着いた黒の半ツヤで高級感がある。定番機器になるべく、シンプルかつ重厚感のあるデザインにしているようだ。画面は10.1インチのタッチ・ディスプレイを採用。100mmのフェーダーは、各チャンネル用の16本とマスターの1本、計17本が並ぶ。フェーダー上部にはチャンネル名や設定値を表示する小型ディスプレイと、8色より設定可能なチャンネル・インジケーターを搭載。タッチ・ディスプレイ右側には、選択したチャンネルのゲインやパン、EQを操作するノブと、そのさらに右側にはアサイナブル・キー兼バス/マトリクス・チャンネルへの送りをフェーダーで調整する“センド&マスター機能”で使用するボタン×16個が配置されている。

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WR-DX350のトップ・パネル。画面はタッチ・ディスプレイになっているので、直感的な操作が可能だ。調整したいパラメーターに触れ、画面右下にあるTOUCH/PARAMETERノブでコントロールできる。フェーダーは16ch分+マスターの17本を搭載

 リア・パネルは、左上部にLAMP端子(XLR4ピン)、その下にアナログ・インとアウト(どちらもXLR)がそれぞれ16基ずつ並ぶ。右下には、32ch入出力DanteカードのWR-PC002が1枚備わっており(最大2枚を使用可能)、その左側にコンピューターと接続する制御用イーサーネット端子、モニター・アウトL/R(XLR)が用意されている。

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リア・パネル。アナログ・イン(XLR)×16系統、アナログ・アウト(XLR)×16系統が並んでいるほか、LAMP端子(XLR4ピン)やモニター・アウトL/R(XLR)、コンピューター接続用イーサーネット端子が用意されている。右下には32ch入出力DanteカードのWR-PC002があり、オプションでもう1枚を追加することができる

 WR-DX350は、オーディオ・インターフェース・ユニットのWR-SB350などの各機器への接続にDanteが使用可能だ。DanteカードのWR-PC002には2個のネットワーク端子(RJ45)があり、リダンダント接続でプライマリー/セカンダリーとして動作する。通常、Dante機器を複数接続するには、AUDINATE Dante ControllerというMac/Windowsに対応したアプリケーションでの設定が必要だが、WR-DX350とWR-SB350のみのシステムの場合は、WR-DX350上でDante設定やパッチが可能なので現場にとってはありがたい。

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オーディオ・インターフェース・ユニットのWR-SB350(オープン・プライス)。アナログ16イン/16アウトを備える。WR-DX350とはDanteで接続でき、最大4台まで使用可能だ

 入力バスはモノラル32ch+ステレオ8系統。出力バスはマスター・バスL/Rに加えてステレオ・リンク可能なモノラル・バス・アウト×16chと、モノラル・マトリクス・アウト×16chがあり、それぞれチャンネルごとにプリ/ポスト切り替えが可能だ。このクラスのミキサーとしてはマトリクス・バスが多く、施設内にある多くの部屋の音響を個別にコントロールできるのはありがたい。個人的にはマトリクス・バスをステレオ・リンクできたらより操作が簡単になると感じた。

 

フラットかつ若干硬質なサウンド
色付けが無く設備用途に向いている

 各チャンネルでは、4バンドのパラメトリックEQ+ハイパス・フィルター、ゲート、ダイナミクス(コンプレッサー)が使用できる。また、マスターではダイナミクスと4バンドのパラメトリックEQ、マトリクス・バスではダイナミクスと31バンドのグラフィックEQまたは8バンドのパラメトリックEQが使用可能だ。EQのバンド数が多く、例えばスピーカー・プロセッサーが無いシステムでいろいろな種類のスピーカーを接続する場合も、簡易的に調整できるのは便利。欲を言えばマトリクス・バス以外でもグラフィックEQが使え、パラメトリックEQでハイパス/ローパス・フィルターも選択できるとうれしい。

 

 WR-DX350の音質だが、ヘッド・アンプは素直でフラットかつ若干硬質な印象。トークなどの音を明りょうに出すのに向いているサウンドだ。EQやコンプも少しあっさりした印象だが、変に色付けが無いという特徴は設備用途には向いているだろう。

 

 WR-DX350には、WindowsやAPPLE iPadに対応したリモート・コントロール・アプリも用意されている。設備音響機器は設置を固定化していることが多いので、リモート操作ができることは必須であろう。また、国産デジタル・ミキサーで設備業務用のものは機能や拡張性が限定的な製品が多い中、Danteを採用して拡張性を担保しているのも魅力。Danteはもともと96kHzには対応していたが、採用/運用している機器が少なかった。これはDanteシステム内の中で、1つでも96kHzに未対応の機器があると、ネットワーク内では48kHzで運用するしか選択肢が無かったため。96kHz対応のDante機器を活用できるWR-DX350の今後が楽しみだ。

 

遠藤幸仁

【Profile】PAやライブ・レコーディングを行い、レコーディング・スタジオも持つLSDエンジニアリングに所属。現在はLucky Kilimanjaro、Lillies and Remains、ELEKIBASSなどを手掛けている。

 

RAMSA WR-DX350

オープン・プライス

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SPECIFICATIONS
▪入出力:48ch(モノラル32ch+ステレオ×8)/34バス ▪AD/DA:32ビット(内部信号処理分解能:32ビット/40ビット浮動小数点演算) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪ダイナミック・レンジ:108dB typ(IHF-A WTD) ▪SN比:-126dBu以下(ソース・インピーダンス150Ω、IHF-A WTD) ▪チャンネル間クロストーク:70dB以上(20Hz〜20kHz) ▪外形寸法:485(W)×265(H)×647(D)mm ▪重量:約16kg

 

RAMSA WR-DX350の製品情報

biz.panasonic.com

 

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