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Pro Toolsのエラスティックオーディオでタイミング修正/テンポ変更をする|解説:イロハ

Pro Toolsのエラスティックオーディオでタイミング修正/テンポ変更をする|解説:イロハ

 こんにちは、作編曲やエンジニアなどをやっているイロハです。制作中に本当は正しいリズムで演奏したものを録音できれば一番良いのですが、どうしても録音後にフレーズのヨレが気になったり、後から楽曲のテンポを変更しなくてはいけなくなるときってあると思います。そこで今回は、オーディオのさまざまな調整を可能にする“エラスティックオーディオ”という機能について解説していきたいと思います。

タイミング修正のための4種類のアルゴリズムから選択

 レコーディングが終わった後にもかかわらず、ミックスの段階で“やっぱりギターのアルペジオのヨレを少しだけ直してほしい……”などと頼まれることは多々あるかと思います。そんなときは、エラスティックオーディオ機能を使ってタイミングの修正をしてみましょう。

 

 まずは、修正を行いたいオーディオ・トラックのメニューでフラスコのようなマーク(エラスティックオーディオプラグインセレクタ)をクリックします。ギターならPolyphonic、パーカッションならRhythmicなど、オーディオ・ソースに合わせたアルゴリズムを選択してください。アルゴリズムは全部で4種類が用意されています。

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オーディオ・トラックのフラスコのようなマークがエラスティックオーディオプラグインセレクタ。オーディオ・ソースに合わせて、4種類のアルゴリズムから選択し、タイミングを修正する

 そして、デフォルトだと“波形”の表示になっているトラックビューセレクタを“ワープ”に変更すると、ダイナミクスに応じて線が表示されます。ここで修正を行いたい部分の波形の下半分をダブル・クリックすることで、△マークの付いた線を作成することができます。もともと線が表示されていない部分でも同様に作成されます。

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オーディオ・トラックでデフォルトでは“波形”と表示されているのがトラックビューセレクタ。ここから“ワープ”を選択する

 その状態にすると、前後で自由に動かせるようになります。このときに、タイミング修正を行いたい場所の前後にも△マークの付いた線を作成しないと波形全体が移動してしまいます。必ず作成するようにしてください。

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トラックビューセレクタを“ワープ”にして波形の下半分をダブル・クリックすると、下に△マークのついた線を作成できる。修正したい部分の前後にも同じものを作成し、線を左右にドラッグするとタイミングの修正が可能

 これは複数のトラックを修正したい場合においても有効です。編集したいトラックをすべて選択してcommand+G(Mac)、Ctrl+G(Windows)でグループ化していれば、同時にタイミング修正することができます。そのため、ドラムのマルチトラックなどを修正したい場合にも便利です。もちろん非破壊編集なので、後から何度でも編集できますし、サンプリングのネタやループなどを大胆に加工することで、オリジナルなグルーブにするのも良いと思います!

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ドラムなどのマルチトラックも、あらかじめcommand+G(Mac)、Ctrl+G(Windows)でグループ化することで、同時にタイミング修正可能

イベント操作ウィンドウでクオンタイズの設定を微調整

 僕はレコーディングだけではなく、作曲をする時にもPro Toolsを使うことがあるのですが、締切が迫っているとスピーディに仕上げなくてはならず、そう多く生楽器の録音に時間が割けないことがよくあります。上記の方法で一つ一つタイミングを修正していってもよいのですが、より速く全体のタイミングをざっくりと修正したいときには、オーディオにクオンタイズをかけてしまいましょう。

 

 まずは先ほどと同じように、エラスティックオーディオプラグインセレクタから任意のアルゴリズムを選択します。そしてトラックビューセレクタを“ワープ”に変更した後、修正したいクリップを選択しましょう。その後、イベント>イベント操作>クオンタイズでイベント操作ウィンドウを表示します。そうしたらMIDIのクオンタイズをかけるときと同様に、クオンタイズグリッドやスウィングの値を調整して適用していきます。

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エラスティックオーディオプラグインセレクタから任意のアルゴリズムを選択し、トラックビューセレクタを“ワープ”に変更した後、修正したいリージョンを選択した状態で、イベント>イベント操作>クオンタイズでイベント操作ウィンドウを表示。ここで設定した内容を適用すると、オーディオをクオンタイズできる

 細かい部分は思ったようにクオンタイズされていないところも出てくるので、確認しながら微調整していきます。この方法だと最初から調整していくより、かなり手早く修正できますので、デモ制作のときなどはある程度ラフに演奏して、この方法で修正してしまうことが多いです。

エラスティックプロパティからピッチ・シフトの値を設定

 また、ある程度作曲や録音が進んでから、急にキーやテンポが変更になるといったケースもよく起きます。この場合でもエラスティックオーディオ機能を使って録音し直さずに対応することができます。まずは先ほどと同じくアルゴリズムの選択を済ませておきましょう。その後、キーの変更によって音程をトランスポーズしたい場合は、変更したいクリップを選択した後にクリップ>エラスティックプロパティ>を選択します。そして、ピッチ・シフトの値を目的の音程になるように調整します。

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エラスティックオーディオプラグインセレクタから任意のアルゴリズムを選択し、︎変更したいクリップを選択した後にクリップ>エラスティックプロパティ>を選び、音程をトランスポーズする

 ちなみにアルゴリズムがPolyphonicかRhythmicのときしかピッチ・シフトの値が変更できないので注意してください! ピッチはクリップごとに変えることができるので、一部分だけ転調したい際にも有効です。もちろん、オーディオのトランスポーズはやり方がほかにも幾つかありますが、エラスティックオーディオは非破壊編集だということも含めて、選択肢の一つとして覚えておいてもよいと思います。

“ティック”を選択してテンポをセッションに追従

 テンポの変更時には、オーディオ・トラックの時計のようなマークをクリックし、タイムベースセレクタを“ティック”に変更します。この状態でセッションのテンポを変更すると、オーディオ・データも追従して速度が変わります。

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オーディオ・トラックの時計のようなマークがタイムベースセレクタ。こちらから“ティック”を選択すると、オーディオ・データも追従して速度が変わる

 タイムベースセレクタはデフォルトだと“サンプル”になっていますが、この状態だとオーディオの速度は変更されません。作曲でメインに使うときはタイムベースセレクタを“サンプル”にすることはあまり無いので、僕は初期設定で“新規トラックのタイムベースはティック”にチェックを入れています。

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筆者はタイムベースセレクタで“サンプル”を使うことがないので、あらかじめ初期設定の編集タブを選択してから、“新規トラックのタイムベースはティック”にチェックを入れている

 やはりピッチもテンポも極端に変更すると音質が劣化しますので、大きく変更があるときは演奏し直すのがベストだと思いますが、軽くチェックしたりするときには非常に便利です!

 

 前回のAudio to MIDIに引き続き、今回はエラスティックオーディオを使ったオーディオの編集についてお話しました。MIDIの編集と同じくらい、自由にいろいろなことを編集するのがどんどん可能になってきているように感じます。次回はあまり見かけないPro Toolsを使ったライブ・マニュピレートの方法についてお話しします!

 

イロハ

【Profile】洗足学園音楽大学および同大学院で作編曲を専攻。音響、演奏技術も学ぶ。在学中に結成したイロハオーケストラでは、作曲/指揮/リアルタイム・リミックスを務め、FUJI ROCK FESTIVAL 2017にも出演。作編曲やレコーディング・エンジニア、マニピュレーターをしながら、バンド活動も行っている。

【Recent work】

『Iroha - 'Only for C' (inspired by Pro Tools | Carbon) M/V』

 

AVID Pro Tools

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LINE UP
Pro Tools | First:無償、Pro Tools:35,300円、Pro Tools | Ultimate:94,500円
(いずれも年間サブスクリプション版の価格。永続ライセンス/月間サブスクリプションもあり)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14.6以降、INTEL Core I5以上のプロセッサー
▪Windows:Windows 10以降、INTEL Core I5以上
▪共通:16GBのRAM(32GBもしくはそれ以上を推奨)

製品情報