MIDI/プラグイン/トラック再生でのオートメーションの書き方について 〜篤志が使うPro Tools 第4回

AVIDのDAW「Pro Tools」の使い方を篤志が解説する

 ギタリスト/作編曲家の篤志です。最終回では、僕が音楽制作で使用しているオートメーションについて、網羅的に紹介したいと思います。オートメーションを描く対象は、工程別にソフト・シンセを含むMIDIデータ、インサートしたプラグイン・エフェクトのパラメーター、トラックの再生パラメーターと3つに分けて考えると分かりやすいです。では、目的に沿って順番に見ていきましょう!

オートメーションを描いた後
手描きで細かく修正を加える

 まず最初は、MIDIデータにコントロール・チェンジなどを描き込む場合についてです。簡単なのは、普段通りにMIDIを打ち込む感覚で描く、レコード・イネーブル・モードをオンにして再生しながら描く、もしくはキーボードのモジュレーション・ホイールなど任意のMIDIコントローラーで動かすことです。

 

 例えば手描きでピッチ・ベンドを行いたい場合は、ペンシル・モードをフリーハンドなどに設定し、スマートツールを用いて描いていきます。Pro Tools上のトラックの中で、パラメーターに変化があるものはレーン表示のメニューの色が変わるので、後に手描きで細かく修正を加えることもできます。

トラックの下にある“▼”をクリックすると、オートメーション・レーン の追加表示をすることが可能。ここでは“ピッチベンド”を選択して、 ペンシルで一つ一つオートメーションを書いている

トラックの下にある“▼”をクリックすると、オートメーション・レーン の追加表示をすることが可能。ここでは“ピッチベンド”を選択して、 ペンシルで一つ一つオートメーションを書いている

 最近のソフト・シンセは動かせるパラメーターが増えました。そのため多くのソフト・シンセにはMIDI Learn機能があります。またフィジカル・コントローラーを使ったオートメーションは、バイオリン/ビオラ/チェロなどストリングスやブラス単体のボリュームといった、演奏表現としての感覚的なオートメーションを記録したい方にはとてもお勧めな描き込み方です。

Master Bypassオン/オフで
簡単に急激な音色変化を行う

 続いてプラグイン・エフェクトなどで使うオートメーションです。これは、積極的なエフェクトを狙う場合と部分的な補正などに使う場合とがあります。

 

 まずはプラグインを開いてウィンドウ上部にある四角が2つ重なったボタンをクリック。表示されるプラグインオートメーションから動かしたいパラメーターを選択して追加しましょう。

プラグインのウィンドウ上部にある四角が2つ重なったボタンをクリッ ク。プラグインオートメーションが表示される。ここでは、部分的に急激な音色変化をするのに便利なMaster Bypassを選択している

プラグインのウィンドウ上部にある四角が2つ重なったボタンをクリッ ク。プラグインオートメーションが表示される。ここでは、部分的に急激な音色変化をするのに便利なMaster Bypassを選択している

 積極的なエフェクトを狙う場合、Master Bypassオン/オフを使えば、変化させたいセクションだけプラグインをオン/オフできるので、急激な音色変化も簡単です。その部分のためだけにトラックを複製する必要が無くなるので、マシン・パワー的にもメリットがあるでしょう。特定の部分だけボーカルを際立たせたい場合や一発だけスネアがキツ過ぎるように感じる場合などは同様の方法が使えます。EQのフリケンシー/ゲインやコンプのアタック・タイム/スレッショルドなど連続可変的なパラメーターをオートメーション対象にすると、部分的な補正を自然に加えることも可能です。

EQのバンド・ゲインをペンシルで部分的に補正した様子。その下のオートメーション・レーンはMaster Bypassで、オン/オフすることで曲のパートごとのメリハリをつけている

EQのバンド・ゲインをペンシルで部分的に補正した様子。その下のオートメーション・レーンはMaster Bypassで、オン/オフすることで曲のパートごとのメリハリをつけている

休符の多いギター・フレーズは
VCA系コンプでアタックを強調

 ギターに対して行うオートメーションとしては、ディストーション・ギターのミュート中だけコンプをオンにしたり、リード/オブリ・フレーズのときだけEQで目立たせたりと、さまざまな使い方ができるかと思います。僕がよく使うお薦めの2パターンをご紹介いたします。

 

 深いディストーション・ギターやシンセのノコギリ波など、ダイナミクスの無いパートにコンプをかけることはあまり無いかもしれません。しかし、僕は狙って休符の多いフレーズを作ることが多く、その際はWAVES DBX 160 Compressor / Limiterなどに代表されるアタックに特徴のあるVCA 系コンプを深めにかけています。そうすることで、発音のタイミングのみアタックを強調して、休符フレーズをより生かすことができるからです。これも必要なときだけオン/オフできるようにオートメーションに追加しています。

WAVES DBX 160 Compressor / Limiter。深いディストーション・ギターで休符の多いフレーズの発音のタイミングのみアタックを強調する目的で使う

WAVES DBX 160 Compressor / Limiter。深いディストーション・ギターで休符の多いフレーズの発音のタイミングのみアタックを強調する目的で使う

 もう一つフレーズやオケとの兼ね合いでどうにも居場所の無いときや、1点に定位させていてうるさく感じるときは、WAVES Doublerを使って擬似的にステレオに定位させます。オケ全体にぼんやりと鳴るように処理することでフレーズを聴かせつつなじませることができるので、こちらもオン/オフをオートメーションに追加しておくととても便利です。

WAVES Doublerを使いステレオで広げて、オケ全体にぼんやりと鳴るようになじませる。オン/オフをオートメーションでコントロールする

WAVES Doublerを使いステレオで広げて、オケ全体にぼんやりと鳴るようになじませる。オン/オフをオートメーションでコントロールする

 おまけとして、かなり長いフィードバックの飛ばし系ディレイやリリースの長いリバーブなどを使用していると、再生を停止したのにいつまでも余韻が終わらないことがありますよね。そうすると、早くバウンスに取り掛かりたいのにディレイの終わり待ちなどでイライラするなんて場面もあります。そういったことを未然に防ぐためにも、狙った効果に影響の無いセクションでは、オートメーションでエフェクトをバイパスしておくことをお勧めします。

“touch”モードを選択して
パラメーターに触れた部分のみ変更

 最後にトラックの再生オートメーションです。こちらはボーカルのボリューム・オートメーションが真っ先に思い浮かぶでしょう。僕はオケの音圧の高低差が頻繁にあるようなアレンジをすることも多いため、かなり細かく描いています。 

ボーカルのトラックに施したボリューム・オートメーション。筆者はフェーダー型コントローラーを使って感覚的にカーブを描くようにしている

ボーカルのトラックに施したボリューム・オートメーション。筆者はフェーダー型コントローラーを使って感覚的にカーブを描くようにしている

 この際に僕はPRESONUS FaderPortなどのフェーダー型コントローラーを使うのが一番描きやすいです。耳に集中して音量を聴けるので、感覚に従って思い切ったカーブを描くことができます。手順は、ウィンドウ>オートメーションでオートメーション・ウィンドウを開き、描きたいパラメーターが赤くなっていることを確認。

ウィンドウ>オートメーションでオートメーション・ウィンドウを開き、描きたいパラメーターが赤くなっていることを確認する

ウィンドウ>オートメーションでオートメーション・ウィンドウを開き、描きたいパラメーターが赤くなっていることを確認する

 オートメーションの描き込みモードは“touch”がお薦めです。再生中に変化させたいパラメーターに触れたときのみ記録されます。このとき外部コントローラーはもちろん、画面内のフェーダー/パン/ミュートでも入力可能です。マウス操作は多少慣れが必要ですが、試してみる価値はあり。プラグインがオートメーション・ウィンドウで描き込み可能な状態かつ、プラグイン・オートメーションで選択済みの項目であれば、いじったツマミのデータはオートメーションとして記録されます。

オートメーションの描き込みモードは全5種類。オートメーショ ン・レーンに描き込んだオートメーション設定を反映しない“off”、反映させる“read”、楽曲再生中にフェーダー/ノブの変化を記録できてフェーダー/ノブを離した後は元の値に戻る“touch”、戻らず最後の値で終わる“latch”、再生時のフェーダー/ノブの変化をすべて記録する“write”がある。筆者は“touch”が操作しやすいと感じている

オートメーションの描き込みモードは全5種類。オートメーショ ン・レーンに描き込んだオートメーション設定を反映しない“off”、反映させる“read”、楽曲再生中にフェーダー/ノブの変化を記録できてフェーダー/ノブを離した後は元の値に戻る“touch”、戻らず最後の値で終わる“latch”、再生時のフェーダー/ノブの変化をすべて記録する“write”がある。筆者は“touch”が操作しやすいと感じている

 以上3つのオートメーションを駆使すると、かなり幅広い表現が可能になります。断片的でしたが、4回にわたり僕のPro Toolsの使い方を紹介しました。今回で僕の担当は最終回です。今までの内容が少しでも皆さんの参考になっていれば幸いです。ありがとうございました!

 

篤志

【Profile】1982年生まれ。サポート・ギタリストとして音楽キャリアをスタートさせ、KATTUNへの楽曲提供をきっかけに作編曲家としての活動を開始。音楽グループTHE 野党のメンバーとしての活動経験も生かして、藍井エイル、EXiNA、湘南乃風、ポルノグラフィティなどさまざまなアーティストへの楽曲提供/アレンジ/プロデュース/ミックスをトータルで手掛けている。それ以外にも、ミュージカル『刀剣乱舞』の舞台音楽などにかかわる

【Recent work】

篤志氏が担当した3LDKの音源

『Only One』
3LDK(植原卓也・平間壮一・水田航生)
(アミューズ)

 

製品情報

 

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