モノンクルが試すSE ELECTRONICSの真空管マイク3種〜RNT / Gemini II / Z5600A II

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2000年に創業し、自社工場でのハンド・メイドにこだわった製品を手掛けているSE ELECTRONICS。高いコスト・パフォーマンスと確かな実力で、幅広いユーザーから人気を博している。多岐にわたるマイクのラインナップで、フラッグシップ機として存在感を放つのが真空管マイクのRNT。今回は同じく真空管マイクのGemini IIとZ5600A IIとともに、その実力に迫っていく。ここでは実際に録音したサウンドを聴いていこう。試していただくのは、詩情豊かなポップスにジャズのエッセンスを加えた音楽を発信するソング・ライティング・デュオのモノンクル。吉田沙良にはボーカル、角田隆太にはガット・ギターで3機種をチェックしてもらった。2人にインプレッションを伺っていこう。

Photo:Hiroki Obara(except*)

何種類かコンデンサー・マイクを試して
RNTが一番沙良の声に合っていた

ー吉田さんは普段からRNTを使用していると聞きました。どういった経緯で導入したのですか?

吉田 自分がライブ・ミュージシャンだという自覚が強くて、最初は好きなように動きながら録れるハンドヘルド・マイクを好んで使っていました。自分の好きな目線に持ってこれるから楽だったんですね。でも使っているうちに、サウンドに納得できなくなってきたんです。

 

角田 ハンドヘルド・マイクで録った作品と好きなアーティストの作品を聴き比べて「何でこういう音にならないんだろう」という議論になったんですよ。それでレコーディング・スタジオで使われているサイド・アドレス型のコンデンサー・マイクを使ってみようということになったんです。何種類かコンデンサー・マイクのデモ機を試した中で一番良かったのが、RNTでした。価格が倍くらいのモデルも試しましたが、沙良にはRNTが一番合っていましたね。

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吉田沙良が普段から使用しているSE ELECTRONICのフラッグシップ・モデル、RNT(オープン・プライス:市場予想価格250,000円前後)。ハイパス・フィルター(40/80Hz)とゲイン(+12/0/−12dB)が用意されており、指向性は9種類から選択できる。マイクと電源ユニットには、RUPERT NEVE DESIGNSのカスタム・トランスを採用。カプセルは熟練工のハンドメイドで、SE ELECTRONICSの中でも最高級の仕上がりだという

吉田 高解像度なマイクもたくさん試したのですが、原音忠実なモデルは私には合いませんでした。生身の人間っぽい感じというか、リアル過ぎるテイストが好みじゃかったんです。RNTはとにかく色付けが完ぺきなんですよ。まさに私が求めていたマイクで、欲しい要素がすべて詰まっていると言えます。基本的にはナチュラルな特性でありながらも高域が豊かなので、ほかのマイクより天井が高い開放的なイメージで歌えます。あとサウンドだけではなく、距離感の描写力も最高なんです。私がコーラスを録音するときは、いろいろな声を出して遊びながら進めているんです。時にはさけぶこともあって、そういうときはマイクとの距離を結構取るんですけど、そうすると強弱がしっかり表れて臨場感のある音になるんですよ。離れたところからでも、良い遠い音がしっかり録れます。

 

角田 いつもカーディオイドで録っているのですが、距離感のニュアンスは僕もかなり感じますね。指向性を9種類から選ぶことができるので、そこもこれからいろいろ試していきたいと思っています。

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吉田紗良は愛機RNTについて「まさに理想のマイク。高域と距離感の描写力が秀逸です」と話す

 

ーRNTがRUPERT NEVE DESIGNSとのコラボレーション・モデルということで、今回は同社の2chマイク・プリアンプ5211も試していただきました。

吉田 5221は、倍音を付加するSILK機能がすごくよかったです。高域の倍音成分が増えるから、特にボーカルには最高だと思いますよ。歌っていて気分の良いサウンドです。

 

角田 SILKを多めにかけると、いわゆる“NEVEっぽいサウンド”になるのかなと思いました。SILK無しだと無色透明なサウンドで録れるので、利便性が高そうです。SILKはオケになじませるのにも使えそうなので、ライン・アンプとしても優秀だと思います。−6dBの出力も備わっているので、積極的な音作りも行えますよね。

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今回のチェックで使用した2chマイク・プリアンプの5211。倍音を加えるSILK機能を搭載しており、連続可変のTEXTUREノブで付加する量を調節する

生楽器のキャプチャーしづらい低域を
しっかりと収音してくれるZ5600A II

ーGemini IIはいかがでしたか? 真空管が2個内蔵されているのが特徴のモデルです。

角田 やはり3機種の中で圧倒的に真空管の機材らしいサウンドがしていました。特に中域が盛り上がってくるところが特徴で、イギリスの音楽っぽさを感じます。真空管のサウンドが好きな人にぜひ試してほしいですね。背面から真空管が見えるのも格好良いです。

 

吉田 SILK機能で倍音を足した状態が好きでしたね。明るくなるので、私の好きなRNTの音色に近付く感じがします。

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Gemini II(オープン・プライス:市場予想価格130,000円前後)は、真空管を2つ内蔵したカーディオイドのコンデンサー・マイク。入力段に 12AX7、出力段にはトランスの代わりに12AU7を採用している。出力段に真空管を使うことで、一般的にトランスで生じてしまいがちな高域のロールオフを回避するという。PAD(−10dB)とベース・カット・フィルターを実装している

 

ーZ5600A IIも試していただきました。

角田 ガット・ギターにはZ5600A IIが一番合うように感じました。生楽器に通じることかもしれませんが、生で演奏してるときには体感できている低域が、録音時にうまくキャプチャーできないことがあるんです。Z5600A IIはしっかり低域を収音してくれてるので、自然な質感でとらえられました。真空管マイクの温か音色を持ちつつ、ソリッドなアタック感を出してくれるんです。

 

吉田 私は逆に低域が控えめだと感じました。音の立ち上がりが速いので、ボーカルならロックやポップスが得意そうです。子音を無理なく引き立ててくれるんです。プリアンプで色付けする必要が無いくらい、しっかり個性があります。

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角田隆太の弾くガット・ギターと相性が良かったというZ5600A II(オープン・プライス:市場予想価格85,000円前後)。PAD(−10dB)とベース・カット・フィルターを備え、指向性は9種類用意されている。SE ELECTRONICSとしては、今回試したモデルの中で唯一、ベース・アンプへの使用も推奨しているモデルだ

 

ー3機種が共通して持っているSE ELECTRONICSらしさはありましたか?

吉田 どれも好きだったので、私はSE ELECTRONICSの音が好きなんだと思います。レコーディングだけではなくライブでもSE ELECTRONICSのマイクを使ってみたいです。SE ELECTRONICSは価格が安過ぎず高過ぎないのも良いところですよね。手に届く価格帯でありつつ、信頼の置ける素晴らしいマイクです。

 

角田 どれも個性的で良かったですね。音色からこだわりが伝わってきます。いつもRNTを使っていますが、ここまで熱意を持って真空管マイクを作っているメーカーだったんですね。北欧的なシンプルなデザインですが、音色は中高域に個性があるイギリスっぽい印象です。

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「中高域がおいしいイギリス的な音。音色からこだわりが伝わってくる」と語る角田隆太

モノンクル
MONONKVL

【Profile】CITIZENクロスシーのCMソング「Every One Minute」が話題を呼んでいる吉田沙良と角田隆太のソング・ライティング・デュオ。1月16日に横浜、2月22日に大阪で初のビルボードライブ公演が決定している

 

SE ELECTRONICS RNT / Gemini II / Z5600A II 製品情報

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www.digimart.net

 

製品レポート「SE ELECTRONICSの真空管マイクを追え」

www.snrec.jp

 

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