LSDエンジニアリング × KORG SoundLink MW-2408 〜音の練達が使い始めたハイブリッド・ミキサー

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ヘッドルームに余裕があり対応力に優れている
さまざまなな音楽ジャンルで使えると感じました

 KORGが2020年5月に発売したアナログ&デジタルのハイブリッド・ミキサー、SoundLink。開発にはグレッグ・マッキー氏とピーター・ワッツ氏という2人の名オーディオ・エンジニアが携わっており、24chのMW-2408(写真)と16chのMW-1608の2機種をそろえている。アナログらしい操作性、デジタルならではの機能が見事に融合したSoundLinkは、プロのエンジニアの目、そして耳にどう感じられるのだろうか? ここでは、実際にSoundLinkを体験したエンジニアに登場いただき、そのインプレッションを語ってもらう。

Photo:Hiroki Obara

 

Overview:KORG SoundLink MW-2408 / MW-1608

価格:157,000円(MW-2408) 137,000円(MW-1608)

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 アナログ&デジタルのハイブリッド・ミキサー。チャンネル構成はMW-2408が8モノラル+8ステレオ、MW-1608(写真)が8モノラル+4ステレオ。ステレオ・チャンネルはモノラル兼用で、いずれの機種も全入力チャンネル・モジュールにXLRのマイク・イン(モノラル)を持つ。内蔵マイクプリは“HiVolt”を称する独自仕様。後段にコンプやEQを備える。AUXバスは4系統と豊富。機能面も充実し、MUSICIAN’S PHONES、ミュート・グループ、ブレイク、シーン・メモリー、サブグループなどを備える。内蔵マルチエフェクトはKORG製カスタム・チップ仕様で、ExciterやSub Bassなど個性的なものもスタンバイ。AD/DAにはVELVET SOUNDのコンバーターを使い、低ノイズを実現している。

 

きらびやかで中低域の密度が高い

 今回登場いただくのは、LSDエンジニアリングの遠藤幸仁氏と大屋努氏。PAやライブ・レコーディング、配信、スタジオ録音と、さまざまな業務に携わる彼らにSoundLinkの実力をチェックしてもらった。

 

 「出音はアナログならではのつやがあって、かつ自然なサウンドに聴こえました」

 

 そう語るのは大屋氏だ。歌でのチェックも行ったという。

 

 「ヘッドルームに余裕があり、激しく歌ったときもちゃんと受け止めてくれました。優しくささやくように歌うときには、チャンネルのコンプが活用できます。対応力が優れていて、バンドだけでなくクラシカルな音楽の現場など、さまざまなジャンルで使えると感じました」

 

 サウンドについて、遠藤氏はこう続ける。

 

 「マッキー氏が携わっていると言うことで、弊社にある古いMACKIE.のミキサーと音を聴き比べてみました。SoundLinkは新しいミキサーだけあって少しきらびやかで、中低域の密度が高い印象です。パッと聴いた感じでは重心が低く感じられるのですが、いわゆる古めかしさがあるわけではなく現代的な音。色付けは少なくギラついた音でもないため、あっさりめに感じてしまうかもしれませんが、それが自然なサウンドにつながっていると思います」

 

 彼らが語るサウンドの特徴を生み出しているのは、ワッツ氏が設計したHiVoltマイクプリの存在が大きいだろう。高いヘッドルームを持ち、温かみのある音楽的なサウンドをキャプチャー可能だ。入力された音は、同じくワッツ氏が手掛けたコンプや3バンドEQへと送られる。「クリエイター的な音作りに向いたEQです」と遠藤氏が語る。

 

 「HIとLOの周波数は固定で、カーブは緩め。がっつりとブースト/カットできます。MIDは周波数可変でQ幅が狭めになっていて、攻めに使えるなと。効きの良いEQに仕上がっています」

 

演奏者が簡単にモニター・バランスを調整できる

 クリエイターに向いた機能として、大屋氏はヘッドフォン・モニターの音作りに便利なMUSICIAN'S PHONES機能を挙げた。

 

 「AUX3とAUX4にはヘッドフォン・アウトが備わっていて、INJECT L/Rというノブを回すことでメインL/Rの音を混ぜることができます。ミュージシャンがモニター・バランスを簡単に調整できる秀逸な機能だと感じました。そのほかの操作性も含めて、ミュージシャン自らレコーディングやPAをするときに重宝するミキサーだと思います」

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大屋氏が「秀逸な機能」と評するMUSICIAN'S PHONES機能。AUX3とAUX4のアウトはXLR端子のほかにヘッドフォン・アウトも用意されており、その音量をPHONES LEVELで調整できる。さらに、INJECT L/RではメインL/Rの音をAUX3とAUX4に混ぜることができ、簡単にモニター・バランスを取ることが可能。演奏者が直感的に操作できるようになっている

 遠藤氏は「キーボーディストが楽器をまとめるサブミキサーや、ステレオ・バスを使った自宅制作でのサミング・ミキサーとしても活用できる」とコメント。さらにこう続けた。

 

 「今までもデジタルを取り入れたアナログ・ミキサーはありましたが、SoundLinkは各バスにグラフィックEQを使えたり、ステレオ・グループやミュート・グループの搭載で、一歩進んだハイブリッド・ミキサーになっていると感じました」

 

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大屋努(写真左)
LSDエンジニアリング所属。録音やPAではShe Her Her Hers、Saccharinに携わっている。自身のバンドaieではボーカル&ギターを担当

遠藤幸仁
LSDエンジニアリング代表。Lucky Kilimanjaro、Lillies and Remains、ELEKIBASSなどのライブ・オペレートを手掛けている

 

KORG SoundLink 製品情報

www.korg.com

 

KORG MW-2408 / MW-1608(写真)

価格:157,000円(MW-2408)、137,000円(MW-1608)

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SPECIFICATIONS
●MW-2408
▪チャンネル数:24 ▪外形寸法:480(W)×187(H)×530(D)mm ▪重量:9.3kg

●MW-1608
▪チャンネル数:16 ▪外形寸法:396(W)×187(H)×530(D)mm ▪重量:8.0kg

●共通
▪バス:メインL/R、サブグループ1〜8、AUX1〜4、FX、モニターL/R ▪ゲイン幅:−10〜+60dB(マイク・イン) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(+0.5、−1.5dBu)/アナログ・イン〜メイン・アウト ▪等価ノイズ・レベル:−128dBu ▪全高調波ひずみ率:0.004% ▪SN比:−70dBu(アナログ・インのメイン・アウトに対するSN比) ▪AD/DAビット・レート:32ビット ▪内部処理:32ビット

 

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