ZAK × KORG SoundLink MW-2408 / MW-1608 〜音の練達が使い始めたハイブリッド・ミキサー

f:id:rittor_snrec:20201002114406j:plain

ステレオ・チャンネルとAUXバスの数がほかに無い魅力
内蔵エフェクトは音楽的な個性につながるサウンドです

音源制作はもちろん、ライブ・サウンドのオペレートにも独自の感性を発揮するサウンド・エンジニア=ZAK氏。自身のスタジオST-ROBOにはSoundLinkの24chモデル、MW-2408があり、折に触れて試しているところだという。実は16chのMW-1608も経験済みとのことだが、レコーディング/ライブの両視点を持つ氏としては、どのようなインプレッションを抱いているのか? ST-ROBOにて語ってもらった。

Photo:Hiroki Obara

“グループ→チャンネル”という使い方

 SoundLinkにはステレオのグループが4系統あり、複数のチャンネルをまとめて、音量を一括調整できます。しかも各グループに出力端子が用意されているので、それを空きのステレオ・チャンネルへ入力すればEQや内蔵エフェクト(以下、内蔵FX)をかけられる。ミキサーへ戻す前にアウトボードで処理することも可能です。この“グループ→ステレオ・チャンネル”というルーティングは、僕が昔からよくやっている手法で、ドラムのパーツをまとめて処理したいときなどに有効。グルーピングした音を大胆にEQしながら内蔵FXに送ると、かかり方に変化が加わって面白いと思います。ダブ的なアプローチですね。もっとも、そういう使い方が想定されているかどうかは分かりませんが(笑)。

f:id:rittor_snrec:20201002114538j:plain

写真の白いフェーダーで、ステレオ4系統のグループ(サブグループ)の音量を調整できる。各グループは、メイン・バスへのアサインをオフにすることも可能だ

 ステレオ・チャンネルに言及しておくと、数の多さが魅力です。MW-1608には4系統、MW-2408に至っては8系統も用意されています。MW-2408くらいのサイズの機種なら、普通は4系統ほどでしょうが、個人的には多ければ多いほど良いと思っていて。例えば、僕は舞台の音楽をワンマンでオペレートする際に、PIONEER DJ CDJを4台とラップトップ、サンプラーを全部アナログ卓に立ち上げるんです。ステレオ・チャンネルはすぐに埋まってしまいますし、残りの分でモノラル・チャンネルも結構な数を消費します。だからステレオ・チャンネルが多いのは便利で、シンセなどのステレオ・ソースが増えている昨今の現場にも有利だと感じます。SoundLinkのステレオ・チャンネルはマイクの入力も可能ですから、より幅広いシーンに対応できるでしょう。

 

音の存在感が魅力の内蔵エフェクト

 “多い”と言えば、AUXバスも両機種共に4系統と豊富です。僕はライブでコンパクト・エフェクターを多用するので非常にありがたい。しかも内蔵FXは専用のバスを持っています。コンパクトなミキサーには2系統+内蔵FX用という機種、もしくは2系統のうち片方を内蔵FXに充てるものが多いので、自由に使えるバスが4つもあるのは良いですね

f:id:rittor_snrec:20201002114612j:plain

黄色いノブがAUXセンド。全4系統と、このクラスのミキサーとしては数が多い

 内蔵FXに関しても、なかなか良いと思います。フランジャーやディレイ、リバーブなどを試してみたところ、32ビット処理ながら、出音に往年のデジタル・エフェクトのような存在感があるなと。最近のライブ用デジタル卓の内蔵FXは、解像度こそ上がっているものの奥行きが不足していると思うんです。故に、かなり深くかけないと存在感が出てこないのですが、SoundLinkの内蔵FXはかけたらすぐに分かる。それが音楽的な個性にもなりやすいと思うんです。

f:id:rittor_snrec:20201002114633j:plain

内蔵エフェクトは、フランジャーや空間系などを試用。1990年代に使っていた12~18ビット機の存在感ある音色をほうふつするという

 チャンネル・プロセッサーに関しては、EQの周波数ポイントの設定がアメリカ系のロックに向いている印象。その種の音楽では、キックやベースの重心が100Hz辺りにあるので、低域の周波数ポイントも100Hzになっているのでしょう。私感としては70Hzにしてほしかったけれど、ジャンルによっては音楽的なコントロールができると思います。

 

 実は今、ライブ用にMW-1608が欲しいと思っているんですよ。他社からも同じようなサイズのミキサーが発売されていますが、ほかに無い魅力は、やっぱりステレオ・チャンネルとAUXバスの数。先日、Buffalo Daughterの配信ライブで使ってみて、すごくやりやすかったから。

 

ZAK

録音、ミックス、ライブ・サウンドまで手掛けるエンジニア。フィッシュマンズ、坂本龍一、ブライアン・イーノ、アルヴァ・ノト、忌野清志郎、Buffalo Daughter、UA、クラムボン、相対性理論、水曜日のカンパネラ、青葉市子、きのこ帝国、長谷川白紙など、数多くのアーティストのプロダクションに携わってきた。映画音楽の制作や舞台音楽、リミックスなどもこなす

 

KORG SoundLink 製品情報

www.korg.com

 

KORG MW-2408 / MW-1608(写真)

価格:136,000円(MW-2408)、118,000円(MW-1608)

f:id:rittor_snrec:20200925130255j:plain

SPECIFICATIONS
●MW-2408
▪チャンネル数:24 ▪外形寸法:480(W)×187(H)×530(D)mm ▪重量:9.3kg

●MW-1608
▪チャンネル数:16 ▪外形寸法:396(W)×187(H)×530(D)mm ▪重量:8.0kg

●共通
▪バス:メインL/R、サブグループ1〜8、AUX1〜4、FX、モニターL/R ▪ゲイン幅:−10〜+60dB(マイク・イン) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(+0.5、−1.5dBu)/アナログ・イン〜メイン・アウト ▪等価ノイズ・レベル:−128dBu ▪全高調波ひずみ率:0.004% ▪SN比:−70dBu(アナログ・インのメイン・アウトに対するSN比) ▪AD/DAビット・レート:32ビット ▪内部処理:32ビット

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp