クボナオキ × ROSWELL PRO AUDIO Delphos II 〜Microphones for Creator【第3回】

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全帯域がフラットに聴こえてくるナチュラルな音質
歌い手を制限しない使い勝手の良さが魅力です

北カリフォルニアに拠点を置くROSWELL PRO AUDIO。数々のマイク・データベースを閲覧できるWebサイト=Recording Hacksを主宰するマット・マクグリン氏が創業したマイク・メーカーだ。“現代のワークフローに適したビンテージ・トーン”をコンセプトに、高品質でリーズナブルなコンデンサー・マイクを開発している。そんなROSWELL PRO AUDIO製マイクの魅力について、プロのクリエイターに話を聞くこの連載。今回は、プロデューサー、クボナオキにDelphosの使用感について話を聞いた。

Photo:Chika Suzuki

 

ROSWELL PRO AUDIO Delphos II

オープン・プライス(市場予想価格:110,000円前後)

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DelphosとDelphos IIともに出力端子はXLR
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Delphosはフロント左に装備されたスイッチで、指向性をオムニ/トゥルー・カーディオイドで切り替えられる。現行のDelphos IIではフィギュア8も使用可能。右には、−10dBのPADスイッチも装備している(写真左)。同梱のショック・マウントはフロント側が開いたデザイン

SPECIFICATIONS
▪指向性:オムニ/トゥルー・カーディオイド/フィギュア8 ▪カプセル:34mm径ラージ・ダイアフラム ▪周波数特性:20Hz〜16kHz ▪入力感度:35mV/Pa ▪SN比:82dBA ▪セルフ・ノイズ:12dBA ▪外形寸法:280(H)×60(φ)mm ▪重量:約850g(本体) ▪付属品:キャリング・ケース、ショック・マウント

 

22人のボーカルとも見事にマッチ

 クボが所有するROSWELL PRO AUDIOのDelphosは、指向性をオムニ/カーディオイドで切り替え可能なコンデンサー・マイク。現行品のDelphos IIはDelphosと同様の高品質なサウンドを提供するとともに、指向性にフィギュア8を加えたモデルになっている。

 

 「Delphosを使用し始めたのは、発売当初の2018年です。主にアコースティック・ギターのレコーディングのために2年以上使ってきました。曲作りで浮かんだアイディアをすぐ録音できるようにデスク横にセットしたまま使用したり、外出先へ持ち運んだりしましたが、これまで一度も故障したことはありません。僕はビンテージの真空管マイクのメインテナンスに日々苦労しているので、Delphosのように丈夫なマイクにはとても魅力を感じています。また、スタジオ以外の環境でプリプロを行う際にも大活躍でした。そのときに、Delphosのみで22人のボーカルを録音してみたところ、見事に全員の声とマッチしたんです。全帯域がフラットに聴こえてくるナチュラルな音質なので、歌い手を制限しないことが、使い勝手の良さにつながっているのだと実感しました」

 

 DelphosとDelphos IIに低容量のJFETを採用し、U67タイプのカプセルを搭載している。

 

 「女性のメイン・ボーカルや楽器録音でNEUMANN U67をメインに使って、アンビエンス・マイクが欲しいときにDelphosをよく使用しています。というのも、ウォームで豊かな中域などはU67と近いニュアンスを持っているから、U67の録り音と非常にマッチしてくれるので、扱いやすいんです。また、Delphosの高域はクリーンで奇麗なサウンドなので、オケでも際立って聴こえてきます。2kHz辺りがキラキラとしていて、明るさが感じられるんです。僕の所有するマイクの中では、NEUMANN U87とU67のちょうど真ん中ぐらいのブライトネスが欲しいときにDelphosを使います」

 

 U67との相性の良さはアンプから出るエレキギターの音を録る際にも生かせているとクボは語る。

 

 「ロックなニュアンスを出すためには、アンプから出るギターの空気感まで収音する必要があります。Delphosは遠めで録ってみても、実際の距離よりも近くに聴こえるんですよ。なので、フワッと響く音の残像だけでなく、ひずみ成分が空間に広がるときのおいしい音も、しっかりと収めてくれます」

 

 この近めに聴こえるサウンドは、アコギの録音でも生かされているそうだ。

 

 「抑揚を付けて弾いたときに、弱く弾いた部分も繊細にキャプチャーしてくれるのがありがたいです。また、バンドの中で鳴らすアコギは、1kHzと6.5kHz辺りの高域を足してかなりブライトに仕上げるのが僕の好みなんです。こういった音作りには、近めなニュアンスが合います」

 

おいしい部分がすべて録れる上にノイズが少ない

 ミックス段階では、Delphosのノイズの少なさに助けられているとクボは続ける。

 

 「Delphosはノイズが軽減されている上に、おいしい部分はすべて録り切ってくれるという優秀さを兼ね備えています。必要最低限の情報量を収めてくれるので、レコーディングからミックスまでスムーズに行うことができるんです。また、フラットに録れているので、EQ処理もしやすいですね。音に癖が無いので、エフェクトで個性的な音色にプロセッシングするときにも調整しやすいと感じています」

 

 クリーンでありながら温かみもあるDelphosは、オールマイティな活躍に期待ができるとクボは言う。

 

 「さまざまな音楽性やボーカリストにマッチしやすいサウンドです。ボーカリストの声質に合わせたマイク選びにおいても、良い選択肢になるのではないでしょうか。しかも手ごろな価格なので気軽に使用できます。また、Delphosはコンペで勝てるマイクの条件として挙げられる“抜けの良さ”もクリアしていると思うんです。その上、情報量が適切なので、忙しいプロデューサーには特にお薦めしたいです」

 

クボナオキ

SILENT SIRENの全楽曲のサウンド・プロデュースおよび作編曲を担当するほか、ラブライブ!、小倉唯、石原夏織、Poppin' Party、26時のマスカレイド、私立恵比寿中学などへの楽曲提供も行う。昨今では映画の劇伴、舞台の音楽監督、ライブ演出なども幅広く手掛けている

 

ROSWELL PRO AUDIO Delphos II 製品情報

otaritec.co.jp

 

ROSWELL PRO AUDIO Delphos II

オープン・プライス

(市場予想価格:110,000円前後)

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