中田裕二 × ROSWELL PRO AUDIO Mini K47 〜Microphones for Creator【第1回】

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中音域に芯があってかなり太く響くとともに
絶妙にひずんでビンテージライクな質感が加わります

北カリフォルニアに拠点を置くROSWELL PRO AUDIO。数々のマイク・データベースを閲覧できるWebサイト=Recording Hacksを主宰するマット・マクグリン氏が創業したマイク・メーカーだ。“現代のワークフローに適したビンテージ・トーン”をコンセプトに、高品質でリーズナブルなコンデンサー・マイクを開発している。今月から4回にわたり、ROSWELL PRO AUDIOのマイクを愛用するプロのクリエイターに取材を敢行。初回はMini K47を使用するシンガー・ソングライターで、自らトラック・メイクも行う中田裕二に話を聞いた。

Text:Mizuki Sikano Photo:Chika Suzuki

 

ROSWELL PRO AUDIO Mini K47

オープン・プライス(市場予想価格:38,000円前後)

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Mini K47。出力端子はXLR端子で、48Vファンタム電源で動作する
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同梱のショック・マウント(左)。Mini K47とショック・マウントを収納するためのキャリング・ケースも付属している

SPECIFICATIONS
▪指向性:カーディオイド ▪カプセル:34mm径トゥルー・コンデンサー ▪周波数特性:20Hz〜16kHz ▪入力感度:14mV/Pa ▪ダイナミック・レンジ:81dBA ▪セルフ・ノイズ:13dBA ▪出力インピーダンス:114Ω ▪外形寸法:44(W)×150(H)×44(D)mm ▪重量:約325g(本体) ▪付属品:キャリング・ケース、ショック・マウント

 

抜けの良い中音域となめらかな高音域

 中田がROSWELL PRO AUDIOのMini K47を購入するきっかけになったのは、前作『DOUBLE STANDARD』のレコーディングだったと言う。

 

 「Sound DALIでレコーディングを行った際にNEUMANN U47を使ったことがきっかけで、家でも使えるビンテージライクなマイクが欲しくなったんです。しかし、本物のビンテージ・マイクは値段も高い上に、自宅で扱うのはとても難しいですよね。そこでU47をシミュレートした比較的新しいマイクを何種類か試してみたところ、Mini K47が圧倒的な個性を放っていたので購入を決めました。自宅でのデモ制作や本チャン録音で使っています。『DOUBLE STANDARD』に収録している「UPDATER」ではビンテージの質感を出すために、Mini K47をメイン・ボーカルに使いました」

 

 Mini K47は指向性がカーディオイドで、34mmラージ・ダイアフラムを装備したコンデンサー・マイク。周波数特性は20Hz~16kHzとなっている。

 

 「実際に使用してみると、僕自身の声質や目指している音楽性にもかなりマッチしてくれました。僕の声はハスキーで少しこもっているのと同時に、低~中音域の倍音が多めです。そのため、現代的なハイファイ志向のマイクで録ると、生々しく録れ過ぎてしまう印象でした。Mini K47は、高音域が思いっ切り抑えられていてマイルドな響きがします。僕はテンポが遅めのアレンジの中で中音域をじっくりと聴かせるボーカル・スタイルを採っているので、低~中音域の響き方はとても重要視しているんです。Mini K47は、中音域に芯があってかなり太く響くとともに、絶妙にひずんでくれてビンテージライクな質感が加わります。僕の声にはひずみ成分がわずかにあるのですが、そこも生かしてくれるような印象です。マイクとの距離は15cmぐらい離して録ることが多いですが、それ以上に離れて録ってみてもそこまで遠くに感じないですし、十分に拾ってくれます」

 

リップ・ノイズやポップ・ノイズを低減

 音楽制作での使用はもちろんのこと、最近はInstagramのライブ配信で使用する機会も増えたと中田は言う。

 

 「弾き語りの配信で使うとMini K47のクランチな音像がより際立つので、ラジオ・マイクのようなニュアンスに感じられます。マイキングは、アコギのサウンド・ホールに向かってMini K47を一本立てて、アコギとボーカルのどちらも録っているんです。とてもバランス良く収音してくれて、アコギは太く録れますし、ボーカルはちょうど良い距離感で歌っているように感じられます」

 

 Mini K47で録ったサウンドは、ミックスの中でも際立ってくると中田は話す。

 

 「ミックスをしていると、特に中音域の抜けの良さを感じます。また、Mini K47で録るとリップ・ノイズやポップ・ノイズが低減されていて、拾ってほしい声の帯域を中心に収めてくれるんです。サウンドに個性があるので、エフェクトなどを使ってローファイに仕上げなくても、少しコンプをかけるだけでアナログライクなニュアンスがほぼ完成します。プロセッシングでさまざまな手間が省けるのは、非常にありがたいですね。Mini K47ならば、コンプをかけ録りして、後処理ではEQで低域のカットと中高域を少し持ち上げるぐらいの処理しか行いません。過度な処理を要さなくとも、ビンテージ・マイクの質感を得られるのは大変大きな魅力です」

 

 キャラクターも強く、音質的にも優れたMini K47は、宅録初心者や女性にもお薦めできると中田は話す。

 

 「ほかの同価格帯のマイクと比較すると、ダントツでコスト・パフォーマンスに優れています! セッティングや後処理が楽なので、宅録初心者の方にお薦めです。また、声が柔らか過ぎてオケに埋もれがちな女性の方も使ってみてほしいです。Mini K47はどの音楽ジャンルにもハマるオールラウンダーではないかもしれませんが、“アナログの質感が欲しい”など狙いが定まっている人にはピッタリだと思います」

 

中田裕二

椿屋四重奏のボーカル&ギター/ソングライターとしてキャリアをスタートし、バンド解散直後からソロ活動を開始。自身のルーツである歌謡曲やニューミュージックを軸に楽曲制作を行い、この11月には10枚目のオリジナル・アルバム『PORTAS』のリリースを予定している。

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『PORTAS』
中田裕二
インペリアル/テイチクエンタテインメント:TECI-1712

 

ROSWELL PRO AUDIO Mini K47 製品情報

otaritec.co.jp

 

ROSWELL PRO AUDIO Mini K47

オープン・プライス

(市場予想価格:38,000円前後)

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