塩塚モエカ(羊文学)× ROSWELL PRO AUDIO Mini K87 〜Microphones for Creator【第2回】

f:id:rittor_snrec:20201201125024j:plain

クリアで抜けが良いのに明る過ぎない音像と
繊細な声の表現を収音する感度の高さが魅力です

北カリフォルニアに拠点を置くROSWELL PRO AUDIO。数々のマイク・データベースを閲覧できるWebサイト=Recording Hacksを主宰するマット・マクグリン氏が創業したマイク・メーカーだ。“現代のワークフローに適したビンテージ・トーン”をコンセプトに、高品質でリーズナブルなコンデンサー・マイクを開発している。そんなROSWELL PRO AUDIOのマイクの魅力について、プロのクリエイターに話を聞くこの連載。今回は、羊文学のギター・ボーカルの塩塚モエカにMini K87を1週間ほど試用してもらい、その使用感を詳しく聞いた。

Photo:Chika Suzuki

 

ROSWELL PRO AUDIO Mini K87

オープン・プライス(市場予想価格:52,000円前後)

f:id:rittor_snrec:20201201125231j:plain

Mini K87。出力端子はXLRで、48Vファンタム電源で動作する
f:id:rittor_snrec:20201201125457j:plain
f:id:rittor_snrec:20201201125505j:plain
同梱のショック・マウント(左)。「セッティングしたときに安定感があって、丈夫な作りだと感じた」と塩塚。Mini K87とショック・マウントを収納するためのキャリング・ケースも付属している

SPECIFICATIONS
▪指向性:カーディオイド ▪カプセル:34mm径トゥルー・コンデンサー ▪周波数特性:20Hz〜16kHz ▪入力感度:14mV/Pa ▪S/N比:82dBA ▪セルフ・ノイズ:12dBA ▪出力インピーダンス:112Ω ▪外形寸法:150(H)×44(φ)mm ▪重量:約325g(本体) ▪付属品:キャリング・ケース、ショック・マウント

 

楽器や声の魅力的な帯域をきちんと収音する

 自宅でのレコーディングでコンデンサー・マイクを使用するのは、今回のROSWELL PRO AUDIOのMini K87が初めてのことだったと塩塚は言う。

 

 「レコーディングではビンテージのコンデンサー・マイクを使用してきましたが、大きくて重い上に扱いが難しいイメージを抱いていました。そういった理由もあり、宅録ではダイナミック・マイクを使うことが多かったんです。なので、今回初めて自宅でコンデンサー・マイクを使用しました。Mini K87はサイズが小さい上にとても軽いので、セッティングがとても簡単で扱いやすかったです。専用のキャリング・ケースもコンパクトなので、私のアコギ・ケースのポケットに収納することができました。これならば、リハーサル・スタジオなど外出先への持ち運びがしやすそうですよね。それに加えて、筐体にプリントされているロゴもかわいかったり、見た目もすごく良いなと思いました」

 

 Mini K87は指向性がカーディオイドで、34mmラージ・ダイアフラムを装備したコンデンサー・マイク。周波数特性は20Hz~16kHzとなっている。今回は弾き語りでの音楽制作に使ってもらい、感想を聞いてみた。

 

 「まずメイン・ボーカルに使ったのですが、音が奇麗でとても感動しました。クリアで抜けの良さもありつつ、明る過ぎない“温かい”音像で録れるマイクという印象です。繊細な声の表現をしっかりとキャプチャーしてくれる感度の高さも魅力だと思います。楽器や声の魅力的な帯域をきちんと収音して、ふくよかにバランス良く鳴らしてくれました。私は、レコーディング・スタジオなどでは、落ち着いて歌うためにもEQで高域を下げてモニターすることが多いんです。でも、Mini K87の高域は耳に痛くないサウンドなので、そのままでも心地良く歌って録音もできました。普段はマイクとの距離を10~15cmほど離して録ることが多いですが、それよりもオフめでコーラスを録った際にも、きちんと質感が収音されいたと感じます。私はコーラスでは息を多めに混ぜて歌うことが多いので、空気と自分の声がバランス良く混ざっている様子を奇麗に録れたのがうれしかったです」

 

リップ・ノイズやシビランスを低減

 ボーカルだけでなくアコギの録音でも、Mini K87は活躍してくれたと塩塚は続ける。

 

 「アコギのサウンド・ホールに向かってMini K87を15cm以上離すことで、響きの柔らかいウォームなサウンドで録れました。中低域のボディ鳴りが豊かに収音されているのに加えて、フレット上で指を移動をしたときの“キュッ”っていう音が美しい響きで録れたのが印象的です。音の輪郭もよく見えますし、弦の余韻や空間の奥行きまでしっかりと再現されていて素晴らしいと思います。アコギは響きが重要な楽器なので、あたたかい空気感と共に録れるMini K87は弾き語りをする方にも重宝すると思いました」

 

 Mini K87で録ったことで、以前よりもテイク録りや後処理がスムーズになったそうだ。

 

 「Mini K87で録った音は、ノイズが少ないんです。ウィンド・スクリーンが無くてもリップ・ノイズを気にすることは少なかったですし、耳障りなシビランスもあまり無いと感じました。そのため、テイク録りも楽になりましたね。後処理では、リバーブを深めにかけて思いっきり広げても、ニュアンスや存在感が失われません。欲しい帯域が録れているので、EQでニュアンスを足す作業も減ったなと思います」

 

 扱いやすく音質的にも優れたMini K87は、宅録初心者やライブでの使用にもお薦めしたいと塩塚は言う。

 

 「変な癖の無いサウンドなので、初めてマイクを購入する方や宅録初心者の方にもお薦めできます。ノイズが少ないため、宅録にはとても向いているなと思いました。ニュアンスが繊細に出るマイクなので、弾き語りでのライブに持ち込んで、アコギに立てるマイクとして使うのも良さそうです。私もとても欲しくなりました!」

 

塩塚モエカ

3人組オルタナティブ・ロック・バンド=羊文学のボーカル/ギター。同バンドの作詞/作曲も担当している。今年12月にはメジャー・デビュー・アルバム『POWERS』のリリースを予定。ソロでの弾き語り、劇伴制作、客演参加やCM音楽の歌唱など、活動の幅を広げている。

POWERS

POWERS

  • 羊文学
  • ロック

 

ROSWELL PRO AUDIO Mini K87 製品情報

otaritec.co.jp

 

ROSWELL PRO AUDIO Mini K87

オープン・プライス

(市場予想価格:52,000円前後)

f:id:rittor_snrec:20201201131135j:plain

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp