「ZOOM F2-BT」製品レビュー:32ビット・フロート録音とBluetooth操作に対応した小型レコーダー

ZOOMが小型軽量なレコーダー「 F2-BT」を発売

 ZOOMからF1よりもさらに小型軽量なフィールド・レコーダーF2とF2-BTが発売されました。いずれも本体重量はたった32g(電池除く)で、32ビット・フロートでの録音が可能。ワクワクする以外何があるでしょうか。今回はBluetooth対応機のF2-BTの細部を見ていきましょう。

大小のゲイン別に2種類のA/Dを用意
32ビット・フロート対応編集ソフトが付属

 本体はプラスチック成型によって超軽量化されていますが、負荷がかかるような部分は金属製なので、過酷な現場での使用にも安心です。マイク接続部はスクリュー・ロック式のプラグイン・パワー対応コネクター。付属の無指向性ラベリア・マイクLMF-2はもちろん、他社製のプラグイン・パワー対応ラベリア・マイクも使用可能です。ただし、プラグイン・パワーはオフにできないので注意しましょう。録音形式は32ビット・フロート/44.1/48kHzに対応。24ビットは非対応です。

 

 アウトプットはステレオ・ミニ端子が1つで、ヘッドフォンの接続以外にも、カメラへの音声入力や、ワイアレス送信機との接続も可能です。映像に対してのガイド音声としての出力やメイン・レコーダーのバックアップ録音にも使えるため、とても便利だと思います。

本体上部。左から、USB Type-C端子、アウトプット端子(ステレオ・ミニ)、ラベリア・マイク接続用インプット端子(ステレオ・ミニ、プラグイン・パワー対応)

本体上部。左から、USB Type-C端子、アウトプット端子(ステレオ・ミニ)、ラベリア・マイク接続用インプット端子(ステレオ・ミニ、プラグイン・パワー対応)

 電源は単4乾電池×2本を使用し、最長14時間程度の連続録音が可能。ほぼ丸一日の現場でも回しっぱなしにできる時間なのは安心です。またUSB Type-Cを使用したバス・パワー駆動が可能なので、より長時間の使用をする際の選択肢があるのはありがたいですね。

 

 操作用のボタン・スイッチは、アウトプット・ボリューム・スイッチと再生/停止、ロック付き電源スイッチと録音スイッチのみ。ここでアレ? と思う人もいると思いますが、F2-BTには、こういったレコーダーに通常あるべき、マイクのゲイン・ボリュームが備わっていません。また、マイクプリは内蔵されていますが、ゲインは固定です。ここに本機最大の特徴である32ビット・フロート録音という部分が関係してきます。

本体には、アウトプット・ボリューム・スイッチ、再生/停止ボタン、録音スイッチ、電源スイッチのみを搭載。機種名の入った部分を開けると単4乾電池×2本が入れられるようになっている

本体には、アウトプット・ボリューム・スイッチ、再生/停止ボタン、録音スイッチ、電源スイッチのみを搭載。機種名の入った部分を開けると単4乾電池×2本が入れられるようになっている

 通常は音割れやゲイン不足が無いように適切なゲイン調整が必要ですが、本機はそれが完全に不要です。なぜかというと、通常は1つしか搭載しないA/Dコンバーターを本機は小さめなゲイン用と大きめなゲイン用に2つ搭載し、それらを統合して1つの録音データとして記録できるから。通常の24ビットではとらえることのできなかった広いダイナミック・レンジの音を32ビット・フロートでは扱えるのです。ただし、これは録音に限り、アウトプットからは24ビットにD/Aされた音が出るので、出力の際はボリューム調整が必要です。

 

 32ビット・フロート録音が優れているのは編集ソフト上での自由度。一見ひずんで見える波形でもゲインを下げることで奇麗な波形にできたり、一見波形が見えないほどの小さい音量でも、ゲインを上げることで使用に耐え得る解像度を獲得できたりします。ちなみに本機には32ビット・フロート対応の編集ソフトSTEINBERG WaveLab Castも付属します。

クリアで自然な音質のラベリア・マイク
Bluetooth 経由でのタイム・コード同期に対応

 実際F2-BTでテスト録音をしたところ、音質に関しては付属のラベリア・マイクのとても素直な音も相まって、クリアで自然な印象でした。普段他社のラベリアは幾つか使用していますが、それらと比べてもしっかりとプロ仕様の音質です。32ビット・フロートを生かすにはSN比が良いマイクでないと意味が無いため、この点もよく考えられています。

 

 また、録音スイッチを押した後にHOLDにすることで誤操作を防げるため、不用意に録音が止まることが無いのは安心です。録音スイッチを押してラベリア・マイクを適切な位置に付ければクリアでひずみの無い音が録れるというのは画期的ですし、現場での心配事も減ってほかにリソースを割けるので、これだけでも本機を購入する動機になると思います。

 

 ちなみに、ひずまないというのはあくまでマイクプリやA/Dでの話であり、ラベリア・マイク自体の最大SPL値以上の音はやはりひずみます。とは言え、通常の話声や笑い声、叫び声くらいではひずむことの無いマイクなので心配不要でしょう。

 

 F2とF2-BTは、Bluetoothの有無以外の機能は同じです。今回の機種はBluetooth対応のF2-BTなので、APPLE iPhoneアプリのF2 Controlを使用したリモート・コントロールも試しました。入力レベルの確認やローカットのオン/オフ、録音/再生なども簡単で便利です。Bluetooth経由でのタイム・コード機器との同期にも対応しているため、要求レベルの高い現場にも対応できる本機のポテンシャルには驚くばかりです。

 

 F2-BTは初めてラベリア・マイクを使う人にも、業務で使用する人にもお薦め。何よりゲイン調整というわずらわしい部分が無いことは画期的です。価格もリーズナブルなのでぜひ一家に1つ、いや3つ4つそろえてみてはいかがでしょうか。

 

森田良紀
【Profile】studioforestaを拠点として録音からミックス、マスタリング、撮影、配信まで行う。近年は長年の配信経験を生かして大森靖子、清春、ビッケブランカなどの配信を多数手掛けている。

 

ZOOM F2-BT

オープン・プライス(市場予想価格:22,500円前後)

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SPECIFICATIONS 
▪入力:ステレオ・ミニ(スクリュー・ロック付き、2.5Vプラグイン・パワー対応) ▪出力:ステレオ・ミニ(スクリュー・ロック付き) ▪記録メディア:microSD/microSDHC/microSDXC(Class 4 以上、最大512GB、別売り) ▪記録フォーマット:WAV(32ビット・フロート/44.1/48kHzモノラル、BWFフォーマット対応) ▪電源:単4乾電池×2またはACアダプター(ZOOM AD-17、別売り) ▪外形寸法:57.5(W)×22.4(H)×46.4(D)mm ▪重量:32g(電池を除く)

 

F2-BTの製品情報

 

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