「ZOOM H8」製品レビュー:12tr同時録音可能なカラー・タッチ・スクリーン搭載ハンディ・レコーダー

ZOOM(ズーム)からハンディ・レコーダーH8が登場

Photo:川村容一(メイン)

 

 ZOOMからハンディ・レコーダーH8が登場しました。同社のH6はフィールド・レコーディングやライブ録音、配信などで目にしないことは無いくらいの普及率の高さ。筆者も使用していますが、昨今の用途には物足りない部分も出ており、新機種を切望していたところでフラッグシップ・モデルが発表されました。入力数の増加と多数のアップデートがされているようなので早速見ていきましょう。

既存のZOOM 製マイクが取り付け可能
Hi-Z スイッチ装備で楽器をダイレクトに接続

 入力はマイク/ライン・イン×6ch(XLR×4、XLR/TRSフォーン・コンボ×2)と標準付属のXYマイク(XYH-6)で最大8ch。

XYマイクXYH-6が標準付属(カプセルは交換可能)。本体上部にはゲイン調整ノブ、録音トラック選択ボタン、Hi-Z、PAD(−20dB)スイッチを搭載。タッチ・スクリーン下部には録音/再生ボタンを配置

f:id:rittor_snrec:20200824120334p:plain

左側にはXLR 入力×2、XLR/TRSフォーン・コンボ入力、SDカード・スロット(SD/SDHC/SDXC 対応)を搭載

f:id:rittor_snrec:20200824120353p:plain

右側はXLR 入力×2、XLR/TRSフォーン・コンボ入力が並ぶ。XYH-6は外部マイク(プラグイン・パワー対応)/ライン入力端子を装備

 それに加えカプセル部のバックアップ録音(−12dB)とL/Rミックスで最大12trの同時録音が可能です。マイク・カプセルは交換可能で、既存のZOOM 製品と互換性があります。コンボ端子にはライン楽器をダイレクトに接続でき、Hi-Zスイッチをオンにすればハイインピーダンスの楽器も対応可能です。今回は試せませんでしたが、今後発売予定の外部入力拡張ユニットEXH-8をカプセル部に取り付けて使用すると、4つのXLR 入力を追加し、外部入力を最大10chに拡張可能。そのほか別売オプションとして360度録音が可能なアンビソニック・マイクVRH-8や、XY方式とAB方式に対応するステレオ・マイク・カプセルXAH-8が発売される予定です。出力はヘッドフォンとライン出力(いずれもステレオ・ミニ)を搭載しています。

f:id:rittor_snrec:20200824120431p:plain

前面。ライン出力(ステレオ・ミニ)、電源/HOLDスイッチ、REMOTE端子、USB(Micro-B)端子、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)が並ぶ

 また、前面のREMOTE端子に別売のBluetoothアダプターBTA-1を取り付けると、iOSアプリからリモート操作ができるようになります。これは待望の機能でした。ほかには、給電とコンピューター接続用(最大12イン/2アウトのオーディオI/Oとしても使用可)のMicro-USB端子があります。

 

 そしてユーザー・インターフェースがタッチ・ディスプレイになりました。触る前は“この画面の大きさではタッチ操作がしづらいのでは?“と思っていましたが、実際は操作範囲に遊びがあり、快適に操作できました。スマホの操作に慣れた上でストレスを感じることが無かったというのは素晴らしいです。

使用環境に合わせて選べる3種類のアプリ
テスト・トーン機能で入力レベルの調整が容易に

 内部はアプリ形式で“FIELD”“MUSIC”“PODCAST”という3つのモードに分かれています。“FIELD”はフィールド・レコーディング向けのアプリで、H6と比較してもほぼ違和感無く操作できました。今回ノイズ・ゲートが搭載されたので、ノイズが気になる環境では威力を発揮するでしょう。ローカットが特定の周波数ではなく10〜240Hzの間で任意に設定できるのも良いです。コンプレッサーは個別にアタックやリリースが設定できるので自由度が高いですね。

 

 音楽制作に特化した“MUSIC”では、アプリ内部でのミックスが可能。ギター・エフェクトやEQまでかけられるので音作りの幅が広がり、とても魅力的でした。ミキサー画面があるため、H8単体でのミックス作業もしやすいです。

 

 “PODCAST”はサウンドをポン出しできるサンプラー的な機能のボタンが画面上に表示され、名前の通りポッドキャストやライブ配信に適した機能を持っています。このアプリでは入力数が2つ減り、そこにサンプラーで鳴らした音が記録されます。ここでもエフェクトが使用できるので、音声の加工も可能。さらに、オンラインで配信されたエフェクトを、コンピューター経由で追加できるという拡張性があります。

 

 各アプリは完成度が高く、説明書を見なくても操作に戸惑うことはあまり無いと思います。アプリという形を採ることで、今後アップデートで新機能の追加などがしやすいのではないかという期待も持ちました。

 

 また、小さいことですが、ライン出力レベルの設定にテスト・トーン機能が付いたことで、外部機器のレベル調整が格段にしやすくなりました。−12dBFSのサイン波なので外部機器側で−12dBを超えないように設定すれば音割れを容易に防げます。カメラに入力する際などにはとても有効でしょう。

 

 実際にライブや収録撮影で使用してみたところ、タッチ・パネルの操作性が本当に使いやすく、“もうH6には戻れない”と思いました。これは購入決定です。音質もH6より向上している印象で、プロとして実用に足るクオリティです。

 

 強いて改善してほしい部分を言うとすれば、FIELDモードにもモニター用のミキサー画面があると良かったです。EQも使えるとなお良いですね。そういったユーザーの要望がアップデートで改善/追加されることを期待しています。

 

 H8は初めてのハンディ・レコーダーとしても、所有機からの買い替えにもお薦めできる有能なレコーダーです。特にライブ配信などで小型スイッチャーに入力する手前の機器としては最高に使い勝手が良くなると思います。高音質配信をする際には導入を検討するとよいでしょう。

 

森田良紀
【Profile】studioforestaを拠点として録音からミックス、マスタリング、撮影、配信まで行う。近年は長年の配信経験を生かして大森靖子、清春、ビッケブランカなどの配信を多数手掛けている。

 

製品情報

ZOOM H8

オープン・プライス(市場予想価格:40,500円前後)

f:id:rittor_snrec:20200824120259j:plain

 

 

SPECIFICATIONS ▪入力チャンネル数:8(XYマイクカプセル、1〜4、A、B) ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪オーディオ・インターフェース:16/24ビット/44.1/48/96Hz(マルチトラック・モード)、24ビット/44.1/48Hz(ステレオ・ミックスモード)▪電源:単三電池×4、ACアダプター、USBバス・パワー ▪外形寸法:H8/116.4(W)×163.3(H)×48.6(D)mm、XYH-6/78.9(W)×60.2(H)×45.2(D)mm ▪重量:H8/354g、XYH-6/130g

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp