「VIRHARMONIC Bohemian Violin & Bohemian Cello」バイオリンとチェロに特化したソフト音源

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フックアップが運営するオンライン・ストアのbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのはチェコ共和国に拠点を置くブランド、VIRHARMONICのソロ・バイオリン専用ソフト音源Bohemian Violinと、チェロに特化したソフト音源Bohemian Celloです。共にMac/Windows対応のUVI Workstation(無償)で動作し、AAX/AU/VSTプラグインおよびスタンドアローンとして使用できます。これらはキー・スイッチに頼らず、独自の“バーチャル・パフォーマー”によってMIDIノート情報から適切なアーティキュレーションを自動でセレクト。鍵盤演奏のみで豊かな表現を可能にします。サウンドも含めてしっかりとチェックしていきましょう!

独自のバーチャル・パフォーマーにより
各アーティキュレーションが自動選択される

 Bohemian ViolinとBohemian Celloを立ち上げると、とてもシンプルな画面が表れます(左ページ)。細かいパラメーターに惑わされずに“まずは作曲に専念してほしい”というメーカーの理念に基づき、メイン画面において設定項目は隠されているようです。

 

 画面中央の上部には、上からムード、アーティキュレーション、ダイナミクスに関する項目をテキストで表示。MIDIノートごとにどのアーティキュレーションが選択されているのか、またアップ・ボウ(上げ弓)とダウン・ボウ(下げ弓)のどちらで弾かれているかも確認可能です(画面①)。

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画面① Bohemian ViolinとBohemian Celloの画面中央の上部では、上からムード、アーティキュレーション、ダイナミクスに関する情報が表示される。さらにこれらの背景には、アップ・ボウ(上げ弓)とダウン・ボウ(下げ弓)の記号も示されるため、現在どちらで演奏しているのかも確認することができる

 さらにこれらの上にある“目のマーク”をクリックすると、画面両端にアルコ、ミッドアルコ、サステイン、ディミヌエンド、スピカート、ピチカートなど複数のアーティキュレーションやキー情報などが一覧で表示されます(画面②)。Bohemian ViolinとBohemian Celloでは、ここが唯一の設定画面となっているのです。アーティキュレーション名が記載された部分はスロットとなっており、クリックすることでこれらを自由に変更することができます(画面③)。

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画面② 画面上部の目のマーク(赤枠)をクリックすると、画面の両端に複数のアーティキュレーションやキー情報などが一覧表示される

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画面③ 設定画面に表示されたアーティキュレーション名をクリックすると、任意の設定に変更することが可能だ。バーチャル・パフォーマーは、フレーズの弾き始めは必ずダウン・ボウかつ、アーティキュレーションはアルコ(緩やかなクレッシェンド)かミッドアルコ(速いクレッシェンド)が選ばれる仕組み。そこから次のノートの間隔、音価、ベロシティによってアップ・ボウに切り替わるか、ダウン・ボウのままレガートで演奏するのかなどが瞬時に切り替わっていく

 各アーティキュレーションは独自機能であるバーチャル・パフォーマーによって自動選択されますが、ユーザーがキー・スイッチを押している間だけはこの機能が解除されるため、ピンポイントで切り替えることも可能です。この設定画面ではアーティキュレーションだけでなく、それらに対応するMIDIノートの位置確認や変更も可能なため、これまで使っていたストリングス系ソフト音源と同様のキー・スイッチ配置にすることもできます。

 

 ここで“ムード”についても触れておきましょう。ムードを変えると、バーチャル・パフォーマーが選択するアーティキュレーションや強弱もそれぞれ最適化されます。ムードには、標準的で幅広い音楽スタイルに対応するIMPROV、アップ・テンポな曲に最適で力強いダイナミクスと速いレガートが中心のCZARDAS、遅いテンポに最適でソフトなダイナミクスかつ、緩やかなレガートが特徴なEMOTIVEなどがあります。これにより、Bohemian ViolinとBohemian Celloの演奏スタイルとダイナミクスが大きく変わるのです。

 

ポリフォニック設定でコード演奏も可能
高音質かつリアルで有機的なサウンド

 実際に音を出してみると、鍵盤を無造作につま弾くだけでバイオリニスト、チェリストが弓を奏でているかのように有機的な演奏を表現できて驚きました。演奏フレーズの速さや強弱を変えても最適なアーティキュレーションやレガートの長さ、ベロシティ・バリエーションを選択してくれます。このバーチャル・パフォーマーはノート単体に着目するのではなく、次に続くノートの音価や間隔、ベロシティ情報を解析し、フレーズ全体として最適な奏法を導いてくれるようです。

 

 また、緩やかなフレーズから突発的に速いパッセージを弾くと、レガートのバリエーションでは対応できないと判断し、スピッカートやトリルに切り替わるのですが、そのつなぎ目がとてもスムーズ! ここが、Bohemian ViolinとBohemian Celloの優れているところだと感じます。

 

 Bohemian Violinでは、メイン画面中央にあるM(Maestro)ボタンをクリックすると“POLY-LEGATO”モードになり、コード演奏が可能です(画面④)。一方のBohemian Celloではアーティキュレーションで“CHORDS”を選択すると、レガートの長さが最適化され、ポリフォニックでの演奏が可能となります(画面⑤)。

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画面④ Bohemian Violinでは、メイン画面中央にあるMボタン(赤枠)をクリックすると“POLY-LEGATO”モードに切り替わる。このモードでは、コードを演奏することができる

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画面⑤ Bohemian Celloでは、アーティキュレーションのCHORDS(黄枠)を選択すると、レガートの長さが最適化されて、ポリフォニックでの演奏が可能になる

 さらにBohemian Violinのみ、アーティキュレーションとしてビブラート無しのNON VIBRATOを収録(画面⑥)。ソロ・ストリングス系ソフト音源ではビブラートの主張が邪魔になることもあるため、これは非常に助かります。

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画面⑥ Bohemian Violinのみ、ビブラート無しのNON VIBRATOをアーティキュレーションの一つとして収録している

 肝心のサウンドですが、Bohemian ViolinとBohemian Celloの両者共に、とても丁寧かつ繊細にキャプチャーされた高音質なサウンド。リバーブを完全にオフにしても豊かな響きを確認できます。音像はオンマイクでしっかり収録されている印象で、無伴奏の楽曲でも十分に使用できるクオリティ。不要な部屋鳴りも入っていないため、リバーブで空間の調整を行いやすいのも良いと思います。サウンド・キャラクターは癖が無く、音楽ジャンルを選ばずに幅広いシチュエーションで活用できるでしょう。

 

 これまでストリングスのソロ・パートをMIDI入力すると、どうしてもシンセのような“打ち込み感”が強くなってしまい、キー・スイッチによる操作や細かなMIDI CCデータの入力が必須でした。これらはとても時間のかかる作業となるため、筆者はソロ・パートのみバイオリニストやチェリストを呼んでレコーディングすることが多かったのです。しかし、今回のレビューを機に筆者はBohemian ViolinとBohemian CelloをCM曲の制作で使用。実際に音を聴いたプロデューサーは、“本物のプレイヤーが演奏していると思った!”と驚いていました。これからBohemian ViolinとBohemian Celloは、筆者にとってソロ・ストリングス系ソフト音源の定番となることでしょう。

 

VIRHARMONIC Bohemian Violin & Bohemian Cello

価格:Bohemian Violin/Bohemian Cello(いずれも25,190円)

 Requirements 
■Mac:OS X Mavericks 10.9〜macOS Catalina 10.15(32/64ビット)
■Windows:Windows 8〜10(32/64ビット)
■共通:4GB以上のRAM (8GB以上を推奨)、57.8MBの空きディスク容量、7,200回転仕様のハード・ディスクまたはSSD

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阿瀬さとし(Cojok/Smash Room)

Kco(vo、ac.g)とのアコトロニカ・ユニット=Cojokでギターとプログラミングを担当。現在Smash Roomに所属し、CMソングや映画サントラの制作、マニピュレーションもこなす。

 

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