「HEXACHORDS Orb Producer Suite」AIがフレーズを作るシンセ内蔵プラグイン

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フックアップが運営するオンライン・ストアbeatcloudから、注目のソフトをピックアップ。今回レビューするのは、人工知能を搭載したプラグインがコードやメロディを自動で生成する、HEXACHORDS Orb Producer Suiteです。コード、ベース、メロディ、アルペジオのそれぞれに特化したプラグイン音源が全4種類収録されており、音源方式はウェーブテーブルを採用。Mac/Windowsに対応しており、AU/VSTフォーマットで使用できます。作曲家にとってはまさに夢のようなツールに思えますが、実際にどれほどの実力を持ち合わせているのでしょうか? がっつりチェックしていきたいと思います。

パート別に4種類のプラグインを収録
フレーズは内蔵のOrb Synthで再生

 Orb Producer Suiteには4種類のシーケンサー付きプラグイン音源が収録されています。Orb ChordsとOrb Bass、Orb Melody、そしてOrb Arpeggiosです。名前の通りコードのバッキング、ベース、メロディ、アルペジオのフレーズを、4小節のループで自動生成します。

 

 生成されたフレーズは内蔵のソフト・シンセ、Orb Synthの音色で再生されます(画面①)。Orb Synthは2オシレーターのウェーブテーブル・シンセで、フィルターやLFO、アンプ・エンベロープといったパラメーターを備え、空間系エフェクトやドライブ・セクションも搭載。数十種類ものカテゴリーに分けられたプリセットが多数用意されているので、音作りに明るい方でなくても安心して使うことができます(画面②)。ちなみにOrb Synthはbeatcloudで単品(8,000円)で購入することも可能です。

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画面① 4種類のプラグインには、2基のオシレーターやフィルター、LFO、アンプ・エンベロープなどを搭載する、ウェーブテーブル方式のソフト・シンセ、Orb Synthが内蔵されている。beatcloudではOrb Synthを単品(8,000円)で購入することも可能だ

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画面② Orb Synthの音色プリセット群。左上から下へアコースティック、ベース、コード、リード、パッド、パーカッシブ、プラック、ボイスとカテゴリーが並んでいる。一番下には自分で作った設定を保存できるユーザー・カテゴリーもスタンバイ

 まずは根幹となるOrb Chordsを立ち上げていきます。というのも、Orb Chordsで基準となるコード進行を作らないと、ほかの3種類のプラグインが使えない仕様となっているからです。Orb Chordsで作ったコード進行はORBマスターとしてほかのプラグインにも反映されるので、どのフレーズもコード進行的に破綻することがありません。これが感覚的に使える大きな理由となっています。

 

 肝心の生成方法は大きく分けて2通り。1つ目はキーや拍子といった条件を指定し、人工知能に人為的な希望を取り入れたコード進行を提案してもらう方法。そして2つ目は完全に人工知能にフレーズの内容を託すランダム機能を使う方法です。私は“早く次世代のテクノロジーを体感したい”という思いからランダム機能でコード進行を自動生成を試みたのですが、第一声は“ついに人工知能もここまできたのか”という感嘆の言葉でした。これまで音楽を自動生成するツールに対して“無機質でいかにもコンピューターで作った感じの仕上がりになりそう”というイメージを持っていたからです。しかしOrb Chordsは聴いているだけで心がワクワクするような、有機的なコード進行を幾つも提示してくれました! ランダム・ボタンをポチポチ押して再生するだけで、既にもう楽しいです。フレーズ生成は一瞬なので、短い時間で多くのパターンを試すことができます。

 

 この時点でテンションMAXなわけですが、Orb Chordsではプリセットからコード進行を選ぶことも可能です。そのラインナップはメジャーやマイナーの代表的なものから、アップリフティング、エピック、ダークといったカテゴリーに分類された複雑なコード進行までさまざま(画面③)。コード進行から作曲するのはよくある手法なので、良い機能だと思います。

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画面③ Orb Chordsはコード進行の自動生成だけではなく、80種類のプリセットからコード進行を選ぶこともできる。コード進行から作曲する際に便利な機能だ

ドラッグ&ドロップでMIDIデータに変換可能
複数のループをつなげられるテーマ機能を実装

 気に入ったコード進行が生成されたら、ほかのプラグインでフレーズを足していきます。次はOrb Bassを新規トラックにインサート(画面④)。Orb Bassではベースらしさを表現する上で大事なデュレーションも細かく指定できるため、しっかりシンセ・ベースらしいフレーズができました。

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画面④ Orb Chordsで作ったコード進行(画面上部のORBマスター)を元に、ベースのフレーズを自動で生成するOrb Bass。左の丸いORBボタンを押すことで、フレーズを生成可能だ。その周辺にあるデンシティ、リズム、フレージングといったパラメーターで、フレーズの方向性をコントロールできる。このページはノートに関する設定項目を集めたページで、ベロシティの指標を定めるページも用意されている

 続いて上モノ用のOrb MelodyとOrb Arpeggiosも、新規トラックに立ち上げます(画面⑤⑥)。こちらも人工知能が生成しているとは思えない自然なフレーズですが、正直メロディには物足り無さを感じてしまいました。そんなときは画面下部のMIDIエディターを使って、自分好みのフレーズにアレンジできます。さらにOrb Producer Suiteは自動生成したフレーズをDAWにドラッグ&ドロップして、MIDIデータ化する機能も実装。使い慣れたDAWでもフレーズをアレンジできるわけです。MIDIとして書き出せるとなると、好きなソフト音源でフレーズを鳴らすこともできますね。

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画面⑤ 人工知能がメロディを自動で生成するOrb Melody。生まれたメロディにアレンジを加えたい場合、画面下部のMIDIエディターで編集できる。また、画面右下の“DAWにドラッグ&ドロップ”と書かれたウィンドウをDAWにドラッグ&ドロップすることで、フレーズをMIDIで書き出す機能も備わっている。MIDI化することで、サード・パーティ製ソフト・シンセでもメロディを鳴らすことが可能となる。この機能はほかのプラグイン3種類でも共通して使用できる

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画面⑥ Orb Chordsで生成したコード進行に合ったアルペジオを人工知能が奏でるOrb Arpeggios。画面ではCmb7→Fmb7→Cmb7→Fmb7というコード進行に沿ったアルペジオが生成されている

 ここまでくるともっと長い音楽を作りたくなってきますが、そんなときに便利なのがテーマという機能。歌でいう1番、2番のような機能で、ループをつなげて再生することも可能です。これで長い音楽も自動生成できますね。

 

 音楽を作り続けていると、自分の好きなコード進行やフレーズが決まってくるもの。そういった癖から外れた楽曲を作りたい場合、Orb Producer Suiteで生成したフレーズをモックアップにして制作するのはいかがでしょうか? ループ音源などの音ネタを広げながら作曲するスタイルに似ていますが、Orb Producer Suiteなら気に入ったフレーズを簡単にアレンジすることもできます。

 

 個人的には劇伴などの大量発注があった際、ピンポイントで毛色の違う曲を混ぜる用途で活躍しそうだと思いました。自動生成の新たな可能性を示したOrb Producer Suiteは、今後力強い味方となりそうです。

 

HEXACHORDS Orb Producer Suite

価格:11,364円

Requirements
■Mac:macOS Catalina(10.15)対応
■Windows:Windows 10以降
■同時利用可能コンピューター:1ライセンスにつき3台

beatcloud.jp

 

土屋俊輔

プロキオン・スタジオに所属しているコンポーザー/アレンジャー。『鬼ノ哭ク邦』や『アナザーエデン』などのゲーム音楽を中心に手掛けている。『剣が君』シリーズなどでは、歌モノの制作も行う。

 

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