XLII 〜ヒップホップやレゲエ、ベース・ミュージックを得意とするビート・メイカー/DJ

XLII 〜ヒップホップやレゲエ、ベース・ミュージックを得意とするビート・メイカー/DJ

今回登場するのはヒップホップやレゲエ、ベース・ミュージックを得意とし、これまでにMINMIやSHINGO★西成、上地雄輔、DOZAN11(三木道三)、あっこゴリラといったアーティストの楽曲を手掛けてきたビート・メイカー/DJ、XLIIだ。日本に約18年間滞在し、国内だけでなく国外でも幅広く活動している。そんな彼に、音楽制作や機材に対するこだわり、独自の音楽哲学などを伺った。

Interview:Susumu Nakagawa Photo:AmonRyu

【Profile】ウクライナ生まれ、英国育ちのビート・メイカー/プロデューサー/ラッパー/DJ。2004年より日本に移住し、現在は東京を拠点に活動。DJとしてはULTRA JAPANやULTRA KOREAをはじめ、EUやアジアのフェスやクラブを回る。ヒップホップやベース・ミュージックを専門とする。

 Release 

『Like Dew in the Sun』
XLII
(XLII)

モニターKH 310 Aは30Hz付近まで出せる。これならサブウーファーが無くても問題ありません

プライベート・スタジオ

 このスタジオは3年くらい使っています。以前は3階建ての一軒家を借りて、その一室をスタジオにしていました。契約更新をきっかけに今のスタジオに来たのですが、もともとあるアーティストが使っていたスタジオの録音ブースだったこともあり、防音施工がきちんとされている点が魅力です。ただ、個人的に次のスタジオは窓があってリラックスできるスタジオにしたいなと思っていますね。

都内某所にあるXLIIのプライベート・スタジオ。メイン・マシンはAPPLE MacBook Proで、DAWはABLETON Live、モニター・スピーカーはNEUMANN KH 310 A、 YAMAHA HS5、AVANTONE Active Mixcubes Blackを使い分けている。全面に防音施工がされているため録音も可能

都内某所にあるXLIIのプライベート・スタジオ。メイン・マシンはAPPLE MacBook Proで、DAWはABLETON Live、モニター・スピーカーはNEUMANN KH 310 A、 YAMAHA HS5、AVANTONE Active Mixcubes Blackを使い分けている。全面に防音施工がされているため録音も可能

DAW

 コンピューターはAPPLE MacBook Proで、DAWはABLETON Liveです。以前はSTEINBERG Cubaseをメインに使っていましたが、EUツアー中にUSBドングルを忘れたので急きょLiveで曲作りをしてみたら、意外と使い勝手が良かったのでそのまま現在まで使い続けています。Liveは作業工程がスムーズなところが魅力ですね。最新版のLive 11ではコンピング機能が追加され、1つのトラックに複数のテイクを残しておけるようになりました。なのでプログラミングだけじゃなく、ボーカル・レコーディングもLiveで行っています。

ABLETON Liveのフィジカル・コントローラーPush 2

ABLETON Liveのフィジカル・コントローラーPush 2

オーディオ・インターフェースとマイクプリ

 オーディオ・インターフェースはRME Fireface UCXを長年愛用しています。UNIVERSAL AUDIOのオーディオ・インターフェースの音質も好きなんですが、RMEの方がより硬い音がするので好みです。例えるなら、RMEはドイツっぽくて、UNIVERSAL AUDIOはアメリカっぽいイメージですね(笑)。Fireface UCXで録るのは、ほとんどがボーカルです。マイクプリはAVALON DESIGN VT-737SPで、普段ボーカル録りに使っているコンデンサー・マイクのNEUMANN U 87 AIと相性が良いと思ったので購入しました。真空管サウンドが心地良いです。AKG C 414 XLIIも持っているのですが、これは製品名に自分の名前が入っていたので“絶対に買わねば!”と思って手に入れました(笑)。U 87 AIとキャラが違うのでシンガーによって使い分けています。

オーディオ・インターフェースはRME Fireface UCXを使用(写真右上)。ラックの最下段にはAVALON DESIGN VT-737SPを格納する

オーディオ・インターフェースはRME Fireface UCXを使用(写真右上)。ラックの最下段にはAVALON DESIGN VT-737SPを格納する

モニター環境

 制作時のメイン・モニターは、3ウェイ・タイプのNEUMANN KH 310 A。30Hz付近まで出せるので、これならサブウーファーが無くても問題ありません。超低域のレスポンスが速いため、サブベースのアタックが分かりやすくて重宝しています。音の解像度が高いのに耳が疲れにくいというのも、魅力の一つです。このKH 310 AとYAMAHA HS5を交互に切り替えながら制作することが多いですね。ミックス・チェックで活躍するのがAVANTONE Active Mixcubes Black。最初はモノラルで鳴らし、耳に痛い周波数帯域や位相のずれ、リバーブ成分などを確認しています。この作業が終わったらステレオで鳴らし、その次にKH 310 AとHS5、最後にAPPLE iPhoneの内蔵スピーカーやAirPods Proなどでチェックするという流れです。

XLII愛用のヘッドフォンたち。左からSENNHEISER HD 25-1 II、SHURE SRH1840、ULTRASONE Signature Pro

XLII愛用のヘッドフォンたち。左からSENNHEISER HD 25-1 II、SHURE SRH1840、ULTRASONE Signature Pro

ビートはグルーブが一番大事。その次がオリジナリティ

インスピレーションと曲作りの手順

 インスピレーションはありません。やるかやらないか(笑)。普段は、大体Liveにそのとき思い付いたソフト・シンセを立ち上げて適当にフレーズを弾いてみたり、ラッパー向けやダンス・ミュージック系のトラックならビートから始めてみたりします。テンプレート・ファイルは使わないのがこだわりなんです。というのも、毎回同じ作り方をしていると自分が飽きてしまうから。なので、曲作りは毎回違うところから出発するというのが自分の考えなんです。

デスクにはチャンネル・ストリップ・プラグイン・コントローラーのSOFTUBE Console1がスタンバイ

デスクにはチャンネル・ストリップ・プラグイン・コントローラーのSOFTUBE Console1がスタンバイ

ビート・メイキングのこだわり

 グルーブに尽きます。ビートはグルーブが一番大事。自分は、リスナーの肩を揺らすことを目的としてビート・メイキングしています。グルーブの秘けつはドラムやパーカッションなどのリズム楽器をたくさん使うことと、これらを打ち込む際、グリッドに沿わないようにすることです。次に大切にしているのはオリジナリティ。自分は“誰々っぽいね”と言われるのが嫌いなので、例えばスネアじゃない音をスネアに使ってみたり、独特なスケールをメロディに使用したり、ありふれたコード進行をそのまま使わずにちょっとだけ崩してみたりといったことをしています。こうすることでXLIIなりのオリジナリティが出せるんです。既に誰かがやったことをそのままコピーするだけのビート・メイキングは、自分にはできません。

音楽制作システムのNATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3、サンプラーのROLAND SP-404MKII

音楽制作システムのNATIVE INSTRUMENTS Maschine MK3、サンプラーのROLAND SP-404MKII

MOOG Sub 37 Tribute Editionについて

 もともと自分はハードウェアに興味が無く、ソフトウェア派だったんです。ただコンピューターに縛られず、手と耳だけを使って直感的なサウンド・デザインもやってみたいと思い、アナログ・シンセのSub 37 Tribute Editionを購入しました。これなら直感的にノブが触れるので、よりサウンド・デザインに集中できます。ソフトウェアと違って電源を入れてすぐに音が出せるのも、当たり前のようだけれどすごく楽です。シミュレーションしたソフト・シンセと実機との音の違いは、正直曲に混ぜてしまうとあまり分からないと思います。ただ、曲を作っている本人が楽しい方を選べばいいんじゃないでしょうか。

アナログ・シンセのMOOG Sub 37 Tribute Edition

アナログ・シンセのMOOG Sub 37 Tribute Edition

各パートに使用する音源

 ドラムは、自分が好きなサンプル・コレクションから選ぶことが多いです。ベースはSub 37 Tribute EditionやU-HE Reproなど。好きなソフト・シンセはKILOHEARTS PhaseplantとARTURIA Pigments 3で、サウンド・デザインが好きな人にこれらは特にお薦めです。あとはNATIVE INSTRUMENTS KompleteやLiveに付属する音源などですね。

読者へのメッセージ

 正しい曲作り、正しいミックス、正しいアーティストって何でしょうか? 音楽制作や活動にルールはありません。オリジナリティさえあれば、今はどの国のどの歳のどんな人でも世界一の音楽家になれる時代だと思います。“常識やルールにとらわれず、自分らしさを宝のように守る”という意識を持つことが大切です。

XLIIを形成する3枚

『Funcrusher Plus』
カンパニー・フロウ
(Rawkus Entertainment)

 「ミドルスクール・ヒップホップを聴いて育ったのですが、このアルバムを聴いたとき、これまで僕がヒップホップだと思っていた常識がすべて覆されました!」

 

『The Maze To Nowhere』
ローン
(Wednesday Sound)

 「いまだにローンの音世界を超えるアーティストは現れません。ダークな電子音楽が、ここまでエモーショナルで美しくなれるとは。まるでベートーベン級の現代アート」

 

『Black Diamond』
ブラカ・ソム・システマ
(Fabric Records)

 「ディプロ、M.I.A.らが参加したアフリカのダンス・ミュージック。かっこいい音楽はUKとUSだけじゃないんだと知りました。音楽のクリエイティビティは無限ですね」

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp