お薦めのFL Studio付属プラグイン・エフェクトや便利ツールを一挙紹介!|解説:KO3

KO3がお薦めするFL Stuido付属ソフト・シンセ7選|解説:KO3

 こんにちは、DJ/トラック・メイカーのKO3です。主にダンス・ミュージックの制作をしています。前回は僕がよく使うIMAGE-LINE FL Studio付属のソフト音源を紹介しましたので、今回はそのプラグイン・エフェクトや便利ツールを紹介しましょう。

Juno-6の内蔵コーラスを再現したVintage Chorus

 まずはFL Studio最新バージョンの20.9で追加されたVintage Chorus。こちらはROLAND Juno-6に搭載されたコーラス・エフェクト部分をモデリングしたプラグインです。多くのメーカーがこのようなプラグイン・エフェクトをリリースしている中、最初から付いてくるのはうれしいですね。

最新バージョンのFL Studio 20.9で追加されたコーラス・エフェクトのVintage Chorus。ビンテージ・シンセROLAND Juno-6に搭載されたコーラス・エフェクト部分をモデリングしている

最新バージョンのFL Studio 20.9で追加されたコーラス・エフェクトのVintage Chorus。ビンテージ・シンセROLAND Juno-6に搭載されたコーラス・エフェクト部分をモデリングしている

 “コーラス”というエフェクトは、原音に10〜30ms程度のとても速いディレイを加えることで、音に揺らぎを与えるもの。モノラルの音源に広がりを持たせたり、厚みを出したいときなどに使います。

 このVintage Chorusは3種類のコーラス・モードやモジュレーションも搭載。広がり方がとても自然で温かい音色が好みです。僕は画面右端にあるMIXフェーダーにオートメーションを描き、徐々に音が広がっていくような効果を演出することもあります。

 次はMaximusを紹介します。こちらのプラグインはマルチバンド・マキシマイザーというエフェクトで、ピークを処理して音圧を稼ぐことができるもの。同梱プリセットにはコンプレッサー、リミッター、ノイズ・ゲート、エクスパンダー、ダッカー、ディエッサーといった用途で使えるものもあるため、幅広く使うことができます。

マルチバンド・マキシマイザーのMaximus。LOW、MID、HIGH、MASTERの4つを切り替え、それぞれのダイナミクスを調整できる。FL Studio 20 Fruity Edition以外のグレードに標準搭載

マルチバンド・マキシマイザーのMaximus。LOW、MID、HIGH、MASTERの4つを切り替え、それぞれのダイナミクスを調整できる。FL Studio 20 Fruity Edition以外のグレードに標準搭載

 僕はMaximusを主にマスタリングの際に使うことが多いのですが、僕がMaximusを薦める理由はなんといっても視認性の良さ、そして操作性の良さにあります。画面左端にあるLOW、MID、HIGH、MASTERの4つを切り替え、画面上段のアナライザーを見ながらサクサクと作業を進めていくことができるのです。このアナライザーがあることで実際、音にどのような変化が起こっているのかを視覚的に確認でき、大きなメリットと言えるでしょう。また画面中段の右端にあるBANDSをクリックすると、LOW、MID、HIGHの各バンドが対応する幅とプリゲイン量を確認することもできます。

アタック/リリースを個別に調整するTransient Processor

 Fruity Balanceもよく使うプラグインの一つ。こちらはステレオ・バランスとボリューム・レベルを操作できるという非常にシンプルなものです。そんな操作はミキサー側でやるから必要無いのでは?と思うかもしれませんが、僕のようにボリュームのオートメーションを頻繁に描く人にとっては必須と言えるでしょう。

ステレオ・バランスとボリューム・レベルを変更できるFruity Balance

ステレオ・バランスとボリューム・レベルを変更できるFruity Balance

 Fruity Balanceをマスターにインサートし、画面右側にあるボリューム・ノブでオートメーションを描くことで、ミキサーに備わるマスター・フェーダーをフリーな状態に保ちながらも、楽曲全体の音量を自由に変化させることができるのです。例えばビルドアップが進むに沿って音量を徐々に下げていき、ドロップに入った時点で元に戻すことで、相対的にドロップを大きく聴かせられるでしょう。

 ほかにはベースや上モノにインサートし、キックが鳴るタイミングでボリューム・オートメーション描くことで、疑似的にサイド・チェイン・エフェクトを再現することもできます。Fruity Balanceはミキサー側で各チャンネルの設定を変えずに、レベルを変えたいときに便利です。

 Transient Processorはダイナミクス系プラグイン。音のアタック、リリースを個別に調節することが可能です。ドラムやパーカッションに使う人が多いと思いますが、僕はボーカルにインサートし、ATTACK値を下げてディエッサーとして用いることもあります。DRIVEを回せばひずみを加えられるため、サチュレーションを付加することも可能です。

ダイナミクス系プラグインのTransient Processor。アタック/リリースをそれぞれコントロールできる。画面中央上段に位置するDRIVEでは、倍音を増強することも可能だ。最上位エディションであるFL Studio 20 All Plugins Bundleのみに付属している

ダイナミクス系プラグインのTransient Processor。アタック/リリースをそれぞれコントロールできる。画面中央上段に位置するDRIVEでは、倍音を増強することも可能だ。最上位エディションであるFL Studio 20 All Plugins Bundleのみに付属している

 Transient Processorを使ったテクニックとしては、ビルドアップで連打するスネアにインサートし、ATTACK値が徐々に上がるようにオートメーションを設定します。するとビルドアップに沿ってスネアの音色が前に出てくるようになるので、ほかとは一味違ったビルドアップを演出できるでしょう。

Patcherを用いて複数のプラグインを一つにまとめる

 ここからはエフェクトではないのですが、FL Studio付属のお薦めツールを紹介します。Wave Candyはオシロスコープ、スペクトラム・アナライザー、ピーク・メーター、ベクトルスコープを含むオーディオ分析/ビジュアライザー・プラグイン。簡単に言うとオシロスコープでは電気信号を、スペクトラム・アナライザーでは周波数を、ピーク・メーターでは音量を、ベクトルスコープではステレオの広がりを視覚化できます。ビジュアライザーの表示方法や色などをユーザーの好みに合わせて自由にカスタマイズできる点が面白いです。

オーディオ分析/ビジュアライザー・プラグインのWave Candy。オシロスコープ、スペクトラム・アナライザー、ピーク・メーター、ベクトルスコープを搭載している。画面サイズや背景の透明度など細かい部分まで自由にカスタマイズすることが可能だ

オーディオ分析/ビジュアライザー・プラグインのWave Candy。オシロスコープ、スペクトラム・アナライザー、ピーク・メーター、ベクトルスコープを搭載している。画面サイズや背景の透明度など細かい部分まで自由にカスタマイズすることが可能だ

 FL Studioはミキサー・ウインドウやトラック・ウインドウを任意の位置にレイアウトできるのですが、僕は普段からちょうど空いたスペースにベクトルスコープを配置しています。

 なお、SpectrumモードにおいてScaleを右いっぱいに回すと、スペクトラム・アナライザー画面左端に鍵盤が表示されます。これは、例えばダウンロードしたサンプル素材のメロディを確認する際などに使えるので便利です。

Wave CandyのSpectrumモードにおいて表示される、スペクトラム・アナライザー画面。Scaleを右いっぱいに回すと画面左端に鍵盤が表示されるので、音源のピッチを確認することができる

Wave CandyのSpectrumモードにおいて表示される、スペクトラム・アナライザー画面。Scaleを右いっぱいに回すと画面左端に鍵盤が表示されるので、音源のピッチを確認することができる

 最後にPatcherを紹介します。Patcherはインストゥルメントやエフェクトを一つのパッチにまとめることができるユーティリティ系プラグイン。一度オリジナルのチェーンを作ってしまえば、ほかのプロジェクトで読み込んで利用できるのがポイントです。あらかじめ用意されているプリセットも面白く、WAVES Vocal Riderのようなボーカル・オートメーションを自動生成できるものなどがあります。

Patcherは複数のプラグインを組み合わせたチェーンを一つのパッチにまとめることができるユーティリティ・プラグイン。操作するノブやフェーダーなど、インターフェースを自分でデザインすることも可能だ

Patcherは複数のプラグインを組み合わせたチェーンを一つのパッチにまとめることができるユーティリティ・プラグイン。操作するノブやフェーダーなど、インターフェースを自分でデザインすることも可能だ

 ユーザーのアイディア次第では、これまでにないユニークな機能を持つパッチを作成できるかもしれません。ぜひ興味を持った方は挑戦してみてください。僕がお薦めするFL Studio付属のプラグイン・エフェクト&便利ツールは以上です。今回で僕の連載は最後となりますが、いかがでしたでしょうか? 全4回、お付き合いいただきありがとうございました!

 

KO3

【Profile】東京を拠点に活動するトラック・メイカー/DJ。ポップなハウスから高速なレイブ・ミュージックなど幅広いジャンルを手掛け、トレンドを取り入れた最先端なトラック・メイクを得意としている。KONAMIの『beatmania IIDX』やTAITOの『GROOVE COASTER』といった音楽ゲームへの楽曲提供をはじめ、2017年にはアメリカLAで開催された大型コンベンション『Anime Expo』でのDJ出演など、国内外でのライブ活動も積極的に行っている。

【Recent work】

『Not Alone feat. MYLK』
KO3

 

IMAGE-LINE FL Studio

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LINE UP
FL Studio 20 Fruity:17,600円|FL Studio 20 Producer:28,600円|FL Studio 20 Signature:37,400円

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、INTELプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 10以降(64ビット)INTELもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM、XGA以上の解像度のディスプレイ

製品情報

hookup.co.jp