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AvidPlayでのDolby Atmos配信に挑戦! 〜【第18回】DIYで造るイマーシブ・スタジオ 古賀健一

 11月30日、ハープ奏者の宮本あゆみさん(Twitter:@ayumi_harp_0408)による「リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲 シチリアーナ」(作曲:レスピーギ)がDolby Atmosで配信されました。日本ではAmazon Music Unlimited、Apple Musicが対応しています。Dolby Atmosをインディーズ・アーティストがどうやって配信できるのか? その実験模様を書いてみます。

分配受け取りはPayPal口座でRole(s)にクレジットを明記

 この作品は2020年12月に東京オペラシティ3階にある近江楽堂で録音しました。当初はリアルタイムのバイノーラル配信を目的とし、後々自分たちのDolby Atmos実験素材のためにFukada Tree 2006の配置でDPA MICROPHONES 4006をメインにSENNHEISER Ambeo VR Micなどを組み合わせて録音しています。

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近江楽堂での収録の様子。Fukada Tree 2006配置でDPA MICROPHONES 4006をセットしたほか、ハープ正面の譜面台の脇にSENNHEISER Ambeo VR Mic、そのほかAKG C451Eなどを設置。生配信がメインなので映像チームも参加している

 Dolby Atmosのインディーズ配信で最も手軽なのは、AvidPlayを使う方法です。Avid Blogにやり方が紹介されていますが、見るのと実際にやるのとでは、全く違ってきます。本当に指定日に配信されるのか? Dolby Atmos音声になるのか? TIDALなど日本非対応のプラットホームでも配信されるのか? お金はきちんと振り込まれるのか?など、やってみないと分からないことだらけです。

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Avid Blogで紹介されているAvid Playでの配信方法。Dolby Atmosでの配信については、別ページも設けられている

 

 まず年間49.99ドルのAvidPlay Unlimited Dolby Atmos Music Distributionプランに加入。そして前々回説明したように、同じ尺のステレオ・マスター(今回は24ビット/96kHz WAV)とDolby Atmosマスター(24ビット/48kHz  ADM BWF)を準備します。ここで注意! 2つのファイル・ネームが同じでないといけません。しかし、どちらも拡張子は.wavで、見た目が全く同じ。容量違いのファイルが2個できます。これはマスター管理としてはダメだろう?と思いながら、保存フォルダーを分けました。ちなみにステレオもDolby AtmosもEANコード(=JANコード)は自動で取得してくれます。

 

 アートワークは10MB以内、4,000×4,000px以内を用意。ここの工程で、画像系ド素人の僕とあゆみさんは、1時間以上、サイズが違う、容量オーバーだとアタフタしました。

 

 ステレオのデモ視聴用の分数を指定して、ステレオ・ファイルをアップロード。ステレオは最後の検聴がAvidPlay上でできますが、その後アップロードしたDolby Atmos=SPATIAL AUDIO TRACK(S)は確認できません。不安になったので、もう一度Dolby Atmos Rendererに戻り、同じADM BWFを検聴しました。

 

 そしてジャンルなど細かい情報を入力し、最後に配信の支払い分配の登録。分配受け取りはPayPalアカウントで行われます。僕は会社でPayPalアカウントを持っているので、あゆみさんにPayPal登録をお願いし、2人のE−Mailアドレスを入力します。ここでRole(s)というそのプロジェクトでの役割を入力するところがあります。後々分かるのですが、ここの記載内容がそのままTIDALのクレジットになりました。なので、ロイヤリティが0%だったとしても、ここにミュージシャンやアーティストを入力するべきなのかもしれません。

 

 ここまで登録ができたら、配信するプラットフォームを選択。今回は実験的な意味合いもあったので、Dolby Atmos対応のAmazon Music、Apple Music、TIDAL、Hungama(インドのサービス)のみを選択。しかしこの原稿執筆時にAnghami(アラブのサービス)、Naver VIBE(韓国のサービス)という2つが増えていました。どうも12月19日にはこれらでもDolby Atmosでリリースされるようで、追加で配信申請。Naver VIBEのサイトは調べても調べても見つけられませんでしたが(笑)。

 

 登録は全部英語なので、苦手な僕らはたった1曲の配信手続きをするのに、2人で2時間もかかりました。

まさかのジャンル登録での配信エラー。ステレオとの音量差解消が課題か?

 何とか手続きを終え、あとは配信日を待つのみ!!だったのですが。11月20日の24時、待てども待てども配信スタートしません。寝て起きたらできているはずだと思い布団に入りますが、朝になっても夕方になっても、配信されません。

 

 実は登録時、気掛かりなことがありました。ジャンル選択の項目で赤文字が出るのです。でもジャンルはどう考えてもクラシック。あとはイージー・リスニングやインストゥルメンタルなど該当しそうなものを選んでいたのですが、登録時に何度やってもこのエラー・メッセージは消えませんでした。再度いろいろといじっていたら、ふとした拍子にクラシックを選ばずにおけばエラー・メッセージが出ないことを発見。再登録をしたところ11月30日で今度こそ配信手続きが完了しました。ですので“11月30日配信スタート!!”と言いながら、よく見ると11月20日発売と表記されているのはそのせいです。

 

 そして11月30日の0時を回ったところで無事Apple Musicの配信スタートを確認。しかし、TIDALとAmazon Musicは待てども待てども配信が始まりません。Hungamaはヒンディー語なので、もっと分かりません。また失敗したか?とあきらめかけたころ、Appleから遅れること19時間後、TIDALとAmazon Musicはぬるっと始まってました(笑)。Hungamaはチェックしようがないので、あきらめていましたが、今は配信されているようです。しかも、MP3はタダで聴ける?

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左から、Apple Music、Amazon Music、TIDALでの再生画面。それぞれにDolby Atmosを示すマークが付いているのが見て取れる。ちなみにTIDALは現状iPhoneでのDolby Atmos再生に対応しておらず、Dolby Atmos対応のAndroid機での再生となる

 ここまできて、ようやくやりたかった次のチェック項目に移れます。Apple MusicとAmazon MusicのDolby Atmosは音がどれくらい違うのか? そして納品規定の無いAmazon MusicのDolby Atmosのレベルはどうなるのか?

 

 文字数も残り少なくなったのでサクッと書きますが、Dolby Atmosのバイノーラル情報が反映されているであろうAmazon Musicより反映されていないAppleMusicの方が空間が広い。そしてAmazon MusicのDolby Atmos音声のレベルがステレオに比べて大き過ぎる!

 

 ポップスやロックなどでは気にならなかったのですが、ステレオ音声のラウドネス値が−18LKFSくらいのクラシック音声は、Dolby Atmosが聴感で4dBくらい違って聴こえましたた。正直、pp(ピアニッシモ)がf(フォルテ)に感じられるくらい違います。ステレオからDolby Atmosに切り替えた瞬間、ピアノの弾き方でフォルテくらいの音量で聴こえるので、違和感が半端じゃないです。

 

 この現象がなぜ起こっているのか確認したく、レコード会社の配信担当者やいろいろな方に聞いたのですが、どうもAmazon Musicにはそのような日本の窓口が無いようです。読者で知っているよ!という方が居たら、ぜひ教えてください。よろしくお願いします!

古賀健一

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【Profile】レコーディング・エンジニア。青葉台スタジオに入社後、フリーランスとして独立。2014年Xylomania Studioを設立。これまでにチャットモンチー、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Official髭男dism、ichikoro、D.W.ニコルズなどの作品に携わる。また、商業スタジオやミュージシャンのプライベート・スタジオの音響アドバイスも手掛ける。
Photo:Hiroshi Hatano