現代の音楽制作に無くてはならないソフト音源。オールマイティに使えるものから特定のジャンルを象徴する製品、他者との差別化を図れる斬新な音源までそろい、まさに百花繚乱です。そうした数多くの選択肢の中から、プロの現場でリアルに重宝されているものとは何なのでしょうか? 本特集では、著名クリエイター18名に“マイ定番ソフト音源”を挙げていただき、その活用方法を語ってもらいます。
石野卓球
[石野卓球]1989年にピエール瀧らと"電気グルーヴ"を結成。ソロとしても作品を勢力的に発表し、DJ/プロデューサー、リミキサーとして多彩な活動を行う。小社刊『電気グルーヴのSound & Recording』も絶賛発売中
STEINBERG Retrologue 2
STEINBERG Retrologue 2
(Cubase Pro/Cubase Artist付属/STEINBERGオンライン・ショップでの単体販売10,000円)
野太い音を目指したバーチャル・アナログ・シンセ。シンク/クロス/XOR変調に対応した3つのオシレーター、24タイプのフィルター、3つのエンベロープと4つのLFOを備え、16個のモジュレーション・マトリクスを使ったルーティングが特に分かりやすく、多彩なサウンド作りにも対応。700以上のプリセットも備えています。エフェクトも内蔵しており、フェイザー/フランジャー/コーラス/ステレオ・ディレイ/アルゴリズム・リバーブ/4バンドEQなど最大6つを好きな順番でインサート可能。ステップ・シーケンサーは“アルペジオ”セクションにあり、ピッチ&ベロシティのほかに任意のパラメーターを3系統までアサインしてステップ・コントロールできます。
ステップ・シーケンサーでフレーズを作ると
手癖から解放されるし作業がとにかく速い
ソフト・シンセはここ数年変わっていなくて、使用頻度の順で言うとSTEINBERG Retrologue 2、U-HE Diva、Repro-1、WALDORF PPG WAVE 3.Vですね。俺がやっている音楽はこれで十分事足りる(笑)。ベース、パーカッシブな音、太さが必要な音はDivaやRepro-1、パッドやドローンはPPG WAVE 3.V、中域から上のシーケンスはRetrologue 2と用途が決まっています。Retrologue 2はSTEINBERG Cubase Pro付属シンセとはいえ、すごく使いやすくて、モジュレーション・マトリクスがいい。それからステップ・シーケンサーが付いているので、昔は鍵盤を弾いて1音1音打ち込んでいたのが、とりあえずノートを1小節分ダーって伸ばして、Retrologue 2内のシーケンサーでフレーズを作るようになりました。その方が手癖から解放されるし、とにかく速い。内蔵のエフェクトも使いますよ、ディレイとか。ただ、内蔵エフェクトをかけたときはモノラルで書き出すようにしています。リバーブで前後感だけ欲しいのに、ステレオだと広がって余計なときがあるじゃないですか。あと音色プリセットもよく使います。俺の場合、上モノでもコードでも“bass”っていう名前が付いたプリセットから探して、それを2オクターブ上げて使ったりしています。ベース系のプリセットは持続音やアタックが弱い音はまず無い……細かい音のシーケンスを作りたいのに、上モノのプリセットを選んだらパッドだったりするとイライラしますよね(笑)。
ちなみに最近あんまりハードは使わなくなりました。ついにROLAND Jupiter-6も売っちゃったし(笑)。ほぼ使わないので、だったら毎日使う人の手に渡った方がシンセも幸せだろうと思って。
この曲で活躍!
冒頭のシーケンスはRetrologue 2のステップ・シーケンサーで作っています。ベース系のプリセットのオクターブを上げて、鍵盤で打ち込むのではなく、昔SND SAM-16でやっていたようにアナログ・シーケンサー感覚でいじっていく感じ。Retrologue 2は良いシンセですが、難点を一つ言うなら老眼に優しくない(笑)。
製品情報
DAWに立ち上がる“マイ名機”の使い方
これが私の定番ソフト音源!