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Jeff Miyaharaのプライベート・スタジオ|Private Studio 2021

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ここで音楽が生まれていることを知らしめる
渋谷の新名所に生まれたクリエイティブ・スペース

 SMAP、加藤ミリヤ、JUJU、JAY’ED、西野カナ、JASMINE、ONE OK ROCK、安室奈美恵など、260組以上の楽曲にかかわってきたプロデューサー、Jeff Miyahara氏。彼の新しい拠点は、昨夏オープンの渋谷の新名所MIYASHITA PARK内に生まれたEDGEof CREATIVE内にあるSTUDIO SIXだ。Miyahara氏とともにスタジオ設立と運営に携わるKen Masui氏にも、話を聞いていく。

Text:iori matsumoto Photo:Takashi Yashima

アーティストが遊びに来ることで
音楽と文化作りの距離を縮めたい

 JR線沿い、渋谷MIYASHITA PARKの北端に位置するホテルsequence Miyashita Park。その建物内のEDGEof CREATIVEオフィスに、STUDIO SIXは誕生した。Masui氏はMr. Childrenなど多岐にわたる作品へ携わる音楽プロデューサーであるが、起業家としての顔も持つ。

 「僕はMIYASHITA PARK全体のコンセプト作りにもかかわったのですが、ここに音楽スタジオがあることが、公園やホテルにとってパブリシティになると考えたんです。海外では、市民がスタジオのある場所を知っていて、“ここにミュージシャンが居るかもしれない”というのを思って見上げたりする。“あそこで何かやっているんだ”ということがワクワクする。スタジオがクローズドな場所になるのは、あまり面白くないと思ったんです。ここにスタジオがあり、アーティストが遊びに来ることで、音楽と文化作りの距離を縮めて、そういう物語が作れるのではないか?と考えました

 もともと、国際的なビジネス・インキュベーション・センターとして渋谷を拠点にスタートアップ支援をしていたEDGEOFからクリエイティブ部門が独立したEDGEof CREATIVE。Masui氏は、そのパートナーとして、それまであまり接点が無かったMiyahara氏に声をかけた。

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SONY C-800Gを両手に持つJeff Miyahara氏。背後に見える夜景は渋谷スクランブルスクエアの灯り

  「EDGEof CREATIVEでは音楽のことをしたいと考えましたが、一緒にやるなら、音楽しか知らない人は嫌だと思った。Jeffは、僕と同じようにアメリカ育ちで、さまざまなビジネスにも取り組んでいる。もちろん彼がヒット・メイカーだということは知っていました。それで、バンドを組むときのように、こういうことをやりたいと彼に提案したんです。キャラクターも僕と対照的だし、お互いに無いものを持っているから」

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EDGEof CREATIVE創業者のKen Masui氏。Mr. Childrenの作品にミュージック・ディレクター兼クリエイティブ・ディレクターとして携わる氏は、音楽もビジネスも、僕としては同じことをやっている。ベテラン・アーティストをどう刺激してクリエイティブになってもらうのかと同じように、街や世界に対してどうしたらもっと面白いことができるのかを提案しているんです」と語る

  そうした経緯で、このSTUDIO SIXはEDGEof CREATIVEに参画したMiyahara氏の新たな拠点として機能することになった。氏は音楽とクリエイティビティについてこう語る。

 「僕はこれまで約260組のアーティストをプロデュースしていますが、音楽やアートは発信力が強い。個々のアーティストの関心事や、音楽にまつわるテクノロジーの中に事業に関する大きなヒントがあるんです。配信やクラウドがその良い例で、音楽が次世代のテックのリーダーシップを持っていると僕は思っているんですよね」

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EDGEof CREATIVEのオフィスから見た風景。奥がSTUDIO SIXで、作業の様子が伺えるよう設計されている

お互いの表情やニュアンスを伝えるには
ボーカリストが隣に居る方がいい

 STUDIO SIXのデスクにはアウトボードも埋め込まれているが、基本的にはAPPLE Mac Pro+Logic Pro Xのイン・ザ・ボックスで制作するスタイルを採用。インプットにはAPI 500互換モジュールを使用し、あちこちに動画用カメラも置かれている。

 「オンライン・ワークショップやセミナー動画もアップしています。30分で作曲、30分でアレンジ、30分でミックス……といったコンテンツを仕上げていく。その動画編集も行うので、16Core/3.2GHz、192GB RAMというハイスペックなマシンにしました」とMiyahara氏。

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メイン・モニターにはBAREFOOT SOUND MicroMain 27、ニアフィールドにはYAMAHA NS-10 Proを採用。DAWはAPPLE Logic Pro Xをメインとしている。ディスプレイは6K Retina仕様のAPPLE Pro Display XDRを採用する

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動画セミナーなどの収録を想定して、BLACKMAGIC DESIGN Pocket Cinema Camera 4K×2も用意

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APPLE Mac Proは16Core/3.2GHz、192MB RAMというスペックで、イン・ザ・ボックスでの制作の要となっている

 モニター・スピーカーにはBAREFOOT SOUND MicroMain 27が採用されている。試聴させてもらうと、このモデルの特徴と言えるローエンドが、だぶつき無く聴こえた。そうMiyahara氏に伝えると、その秘密をこう語ってくれた。

 「スタジオ設計はアコースティックエンジニアリングさんにお願いしましたが、後ろのバッフル・ボードやその背後にベース・トラップを用意するなどして、ビルの一室にもかかわらずいい環境に仕上げてもらいました

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インプットの要となるAPI 500互換モジュールは、RUPERT NEVE DESIGNS R6にインストール。左の2つはTHE DON CLASSICSのキットNV73(プリアンプ)とU76(コンプ)を元にしたTONEFLAKEカスタム。続いてA DESIGNS P-1、RUPERT NEVE DESIGNS 511、EARTHWORKS 521 ZDTといったプリアンプ類と、GRACE DESIGNのコンプM502。上のヘッドフォンはAUDIO-TECHNICA ATH-M50X

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上からメインのD/Aとして使っているDANGEROUS AUDIO DAC-ST、モニター・コントローラーの同社Monitor ST、メインのオーディオI/OであるUNIVERSAL AUDIO Apollo、キュー・ボックス用D/AのLYNX STUDIO TECHNOLOGY Aurora 16、AVID Pro Tools|HDX用インターフェースとして使用するPRISM SOUND ADA-8XR。SPL MixDreamは以前使っていたサミング・アンプ

 また、Miyahara氏のこだわりは、ボーカル・レコーディングにある。ブースは設けず、自分の隣で歌ってもらうという。

 「ブースに入ってしまうと、セパレートされてしまう。お互いの表情やニュアンスを伝えるには、ボーカリストが隣に居て直接顔が見える状態がいいんです。またマイクもたくさんそろえているのは、ボーカリストごとに最適なものを選びたいから。Aメロ、Bメロ、サビといった曲のパートごとで適したマイクに変えることもよくあります」

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マイク類。上から時計回りにTELEFUNKEN Ela M 251 E、NEUMANN U67(Klaus Heyne Custom)、U47(Stephen Paul Audio Custom)、SONY C-800G、NEUMANN U49、もう1本のC-800G、HORCH RM2 J、NEUMANN U67(Klaus Heyne Custom)、BRAUNER VM-1(Klaus Heyne Edition)、AKG C24

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キュー・ボックスはTRITECH CB-Q1

 スタジオ誕生から数カ月、既に両氏と縁のあるアーティストがここを訪れたり、制作を行っているという。設備的にはプライベート・スタジオだが、機能としては冒頭でMasui氏が述べたようにパブリックなスタジオだとも言えるだろう。

 「Jeffが作っているときに、勝手に入っていって、自分のアイディアを言ったりすることもありますが、彼は一回それをやってみる。ノーとは言わないんですよ。そして僕もJeffも“なぜ歌うのか?”ということはアーティストに言いますね。自分のストーリーに向き合って、何をどう表現するのかということを突き詰めていく。そのときの道具がスタジオであり機材であると思うんです」

 二人は、オーディション機能を持つ音楽アグリゲーターSPINNUPを通じたアーティスト・プロデュースも展開。第1弾として日本とペルーをルーツに持つR&Bシンガー、Jhonatanを支えていくという。日本が誇る大メジャー・バンドとヒット・チャートを支えてきた二人のプロデューサーは、このSTUDIO SIXを拠点にまだ新しい先を見ている。

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デスク左のラックに収まった機材は、既に使われていないそうだが、デジタル・パッチのCM LABS Sixty FourやMUSE RESEARCH Receptor 2などからは、以前から新しい環境構築にMiyahara氏が関心を寄せていたことが伺える

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ROLAND TR-808は、XLR出力やチューニング機能などを追加したモディファイ版。使用することはまれだが、ここを訪れるアーティストのあこがれの象徴として置いてあるという

Equipment

[DAW System]
Computer:
APPLE Mac Pro
DAW:APPLE Logic Pro X
Audio I/O:UNIVERSAL AUDIO Apollo、PRISM SOUND ADA-8XR
Controller:NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrols S88
AD/DA Converter:DANGEOUS AUDIO DAC ST、LYNX STUDIO TECHNOLOGY Aurora 16
Clock Generator:BLACK LION AUDIO Micro Clock MKIII

[Recording & Monitoring]
Monitor Speaker:BAREFOOT SOUND MicroMain 27、YAMAHA NS-10 Pro+BRYSTON 4B
Headphone:AUDIO-TECHNICA ATH-M50X、ULTRASONE Pro-900I
Monitor Controller:DANGEROUS AUDIO Monitor ST
Microphone:AKG C24、BRAUNER VM1(Klaus Heyne Edition)、HORCH RM2J、NEUMANN M49、U47(Stephen Paul Audio Custom)、U47 FET、U67(Klaus Heyne Custom)、U87(Klaus Heyne Custom)、SHURE SM7、SONY C-800G、TELEFUNKEN Ela M 251E、etc.

[Outboard & Effects]
Mic Preamp:A DESIGNS P-1、EARTHWORKS 521 ZDT、THE DON CLASSICS NV73(TONEFLAKE Custom)、RUPERT NEVE DESIGNS 511、etc.
Compressor:THE DON CLASSICS U76(TONEFLAKE Custom)、GRACE DESIGN M502、etc.

[Instruments]
Rhythm Machine:ROLAND TR-808

 

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Jeff Miyahara

【BIO】1977年ロサンゼルス生まれ。日本と韓国をバックグラウンドを持つ。少女時代、東方神起、SOL(BIGBANG)、ボーイズIIメンなど海外勢のほか、SMAP、加藤ミリヤ、JUJU、JAY’ED、西野カナ、JASMINEなどの作品を手掛ける

Recent Work

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  • 三浦春馬
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  • ¥510

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