「IZOTOPE Neoverb」製品レビュー:3種類のリバーブ調合をアシスタント機能でサポートするプラグイン

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 Neoverbは、IZOTOPEの技術による直感的なワークフローとEXPONENTIAL AUDIOのリバーブを融合させたプラグイン。IZOTOPEは“最もインテリジェント”と銘打ち、操作性/サウンド共に優れた仕上がりだそうです。

LEXICON開発者による繊細でシャープな音質
Reverb Assistant機能でスタート地点を提示

 明るくアップテンポなポップスと、アートっぽいディープ・ハウスという対照的な方向性の2曲でNeoverbを試してみました。先述の通り、NeoverbのサウンドはEXPONENTIAL AUDIOのもので、その開発者はもともとLEXICONに居たのだとか。私は日ごろからLEXICON系のリバーブ・プラグインを愛用していますが、Neoverbを試して、あらためて自分はLEXICON系の音が好きだと再確認しました。ですが、Neoverbはより繊細でシャープな音質です。ソースを選ばず汎用性が高いと感じます。また、最近の製品らしい解像度の高さが印象的で、それが音の滑らかさを高めているように思います。リバーブ成分を大きくしても音像がぼやけにくいという意味でも使いやすく感じました。

 

 また、Neoverbの非常に便利な機能がReverb Assistant。数ステップの設定を行うだけで、AIによってリバーブの初期設定が自動生成されます。一般的な傾向として、リバーブはセンド&リターンで使用することが多いですが、そこにはリバーブ成分をEQ処理し細かくコントロールするという目的もあるでしょう。Neoverbでは、センド用のチャンネルを立ち上げ、EQとリバーブのプラグインを挿し、複数のプラグイン画面を行き来するという面倒な作業が数クリックで行えます。それだけでも大きなメリットと言えるでしょう。

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楽曲に合わせてリバーブの初期設定を自動的に提示するReverb Assistant機能。Style、Size、Dry/Wet、Toneの選択だけで設定は完了する

 そして実際に生成された設定は、どちらの楽曲も予想以上に高いレベルの結果で驚きました。非常に透明感があり美しくスタイリッシュな、いわば“今っぽい”リバーブができたのです。そのまま調整せずとも十分使えるレベルでしたし、ここからさらに数ステップ調整することで完全に自分の求めるサウンドにたどり着けました。“とりあえずのスタート地点”と言うにはかなり高い完成度で、作り込みに慣れたエンジニアにも非常に楽をさせてくれる優秀な機能だと感じました。

 

3つのリバーブを視覚的に操作するBlend Pad
Advanced Panelで各パラメーターを詳細設定

 空間別に分けた3種類のリバーブを頂点にした正三角形の中を動かしバランスを変えられるというBlend Padは、非常に直感的で使いやすく、数値ではなく聴感上でベストを探せます。より感性に沿ったワークフローは、クリエイターにとって非常に重宝する機能だと思います。

 

 通常どんな楽曲でもリバーブが1種類で済むことはほぼありません。例えば壮大なストリングス・シンセをホール・リバーブでより壮大にしつつも、ルーム・リバーブをうっすら混ぜて生っぽさを同時に演出することはよくあります。そういった技がNeoverbのみで済むように、そして1段階上のクオリティにより速く、より簡単に到達できるように設計されているのだと感心しました。

 

 画面下部のEQセクションでは、リバーブの前段と後段で3バンドEQが使えます。これはReverb Assistant無しで調整するにも十分な数でしょう。また、Reverb Assistantにより生成される、不要なレゾナンスを前段のEQで抑制するAuto Cut、リバーブのマスキングを勘案してEQを調整するUnmask機能も搭載。各適用量は0~200%で調整できます。

 

 さらに詳細な設定を行えるAdvanced Panel画面では、シンプルな操作性を維持しつつ、エンジニアが求める深度の調整が可能です。全パラメーターを調整するにはある程度リバーブの仕組みを理解していないと難しいですが、Reverb Assistant機能と併用することで理解を深められるので、ぜひ深く潜ってみてもらいたいです。細かい点では、TAILのTime設定を“秒”または“テンポ同期”で選べるのはトラック・メイカーに寄り添っていて面白いと感じました。

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Advanced Panelでは、3種類のリバーブの詳細なパラメーターをコントロールすることができる。画面下部には再生中の楽曲の周波数表示とともにPre EQ/Reverb EQの設定画面が表示される。IZOTOPE製プラグインと連携するMasking Meterも装備

 リバーブを使いこなすには、想像以上にEQの技術やアイディアが必要。しかし、Neoverbからは“エンジニア・レベルの高品質なリバーブと運用法を、非エンジニアにも浸透させたい”という姿勢や努力が随所に感じられ、実際そのハードルがかなり取り払われていると感じました。すべてのクリエイターにとって魅力的、かつ即戦力となる製品でしょう。

 

Atsushi Asada

【Profile】AmPm「Best Part Of Us」などヒット曲のプロデュースで注目を集める。現在はアーティストとしての自分を再発見し、音楽キャリアを軌道修正して“自分を感動させる音楽”の創造に専念。

 

IZOTOPE Neoverb

26,200円

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REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.13〜10.15(64ビット)、AAX/AU/VST2または3対応のホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 8/10(64ビット)、AAX/VST2または3対応のホスト・アプリケーション

 

IZOTOPE Neoverb 製品情報

www.izotope.jp

 

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