Pro Tools|Carbonのパワーをこの手に! 〜ネイティブ&DSPを組み合わせたハイブリッド・エンジン搭載のオーディオI/O

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AVIDが発表したPro Tools用新世代オーディオ・インターフェースのPro Tools|Carbon。AVB接続での動作が可能で、FPGAとHDX DSPを内蔵し、AAX DSPプラグインによるリアルタイム処理によって、常に超低レイテンシーでのモニタリング環境を構築することができる。このPro Tools|Carbonの概要については2021年1月号にて紹介したが、本稿ではPro Tools|Carbonの真の力を紐解くべく、クリエイターとエンジニアにレコーディングで使用してもらい、そのインプレッションを伺った。Pro Tools|Carbonが音楽制作へどのような恩恵を与えてくれるのか、彼らの証言から追ってみよう。

Photo:Takashi Yashima

 

Pro Tools|Carbonが持つパワーとは?

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 AVB接続のオーディオ・インターフェース。カスタム設計されたFPGAと8つのHDX DSPを搭載しており、HDXカードを備えていないコンピューターの環境でもAAX DSPプラグインを使用できる。FPGAはオーディオのルーティングを、HDX DSPはAAX DSPでのリアルタイム・プラグイン処理を行い、常に1ms未満の超低レイテンシーでモニターが可能だ。ビット/サンプリング・レートは最高32ビット/192kHzに対応。マイクプリは8基がスタンバイしており、126dBのダイナミック・レンジを持つパッドレス設計となっている。4系統のマイクプリとフロント・パネルのインスト・インはインピーダンスを変えることが可能だ。モニター・セレクターやトーク・バック機能も備えている。

Specifications
●接続方式:AVB(イーサーネット端子) ●ビット&サンプリング・レート:最高32ビット/192kHz ●アナログ入出力:8イン+トーク・バック/18アウト(D-Sub 25ピン+ステレオ・メイン+ヘッドフォン×4) ●デジタル入出力:ADATイン&アウト×2系統(最大16イン/16アウト) ●ダイナミック・レンジ:126dB(マイクプリ)、120dB(ライン&モニター出力)、116dB(ヘッドフォン・アウト) ●入力インピーダンス:1k/5k/50kΩ(マイク・イン)、1M/32k/70k/90k/230kΩ(インスト・イン) ●DSP:HDX DSP×8コア

Requirements
●Mac:macOS 10.15.7 ●Pro Tools:Pro Tools|Ultimate 2020.11以降、Pro Tools 2020.11以降

価格:オープン・プライス(市場予想価格:435,000円前後)

 

Point ① AVB接続

 Pro Tools|Carbonの接続方式はAVB。イーサーネットでMacと接続が可能になっている。Macにイーサーネット端子が無い場合は、Thunderbolt 2またはThunderbolt 3からイーサーネットへ変換するアダプターを使用して接続する。

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ネットワーク・オーディオの規格、AVBでの接続に対応。市販のイーサーネット・ケーブルでMacとつなげれば、複雑な設定は必要無くオーディオ・ストリームが行える

Point ② 優れたインプット音質

 最高32ビット/192kHzに対応し、AD変換からPro Toolsの内部処理まで、すべて32ビットの解像度を保ったままオーディオ信号を扱うことが可能。マイクプリは“AVID史上最もクリーンなプリアンプ”を謳ったもので、126dBのダイナミック・レンジを持つ。

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マイクプリは8基を搭載。126dBのダイナミック・レンジで、パッドレス設計となっている

Point ③ HDX DSPを搭載

 HDXカードを搭載していないコンピューターでも、Pro Tools|Carbonを接続すればAAX DSPプラグインを使用できる。また、Pro Toolsの各トラックに表示された稲妻マークをオン/オフすることで、そのトラックにインサートされたAAXプラグインのネイティブ/DSPモードを切り替え可能。録音時のモニターでは遅延を抑えるためにDSPモードにし、録音後はネイティブ・モードに変更するなど、制作の流れに合わせて使い分けできる。

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Pro Toolsのミキサー画面。稲妻マーク(赤枠)でネイティブ/DSPモードを切り替える

Point ④ 4系統のヘッドフォン・アウト

 フロント・パネルには4系統のヘッドフォン・アウトを用意している。それぞれ独立したソースを再生することができるので、エンジニアと演奏者それぞれに合わせたキュー・ミックスを作り、ヘッドフォンでのモニタリングが可能だ。

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ヘッドフォン・アウトのレベルは左側のエンコーダーで調整可能。系統切り替えはヘッドフォン・マークのボタンで行う

Point ⑤ モニター設定がPro Tools上で可能

 本体のスイッチで切り替えできる3系統のモニターと、4系統のヘッドフォン・アウトのソースは、Pro Tools上から設定が行える。ほかにも、本体上のスイッチの機能アサインや、トークバックのレベル、DIMのレベルも調整可能。

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Pro Toolsのハードウェア設定画面でモニター・ソースの選択などが行える

Point ⑥ Variable Z

 8系統あるマイクプリのうちの4系統と、フロント・パネルのINSTインはインピーダンス可変Variable Zとなっている。マイクプリは、マイク入力のときに5k/50k/1kΩから選択可能。INST入力時は1M/230k/90k/70k/32kΩから選べる。マイクのリボン/コンデンサー/ダイナミックといった形式の違いで使い分けたり、エレキギターやベースを録音する際などに活用可能。音色変化も起こるので音作りの方法の一つとしても使える。

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インピーダンス切り替えはZボタン(赤枠)で可能

Point ⑦ 付属ソフトウェア&プラグインが充実

 Pro Tools年間サブスクリプション(永続パラシュート版)が付属。そのほかAvid Complete Plugin Bundleや、アナログのサチュレーションをトラックに加える追加機能HEAT、ソフト・シンセ/サンプラーのUVI Falcon、5.4GBのサウンド・ライブラリー、115種のAAXプラグイン(うち70種類はAAX DSPプラグイン)、ARTURIA Rev Plate-140やBRAINWORX BX_Console Nなど9種類の追加プレミアム・プラグインが同梱される。また、標準サポートも含まれている。

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付属プラグインの一部。AAX DSPプラグインは、ネイティブでの動作にも対応し、Pro Tools上で切り替えが可能

Pick UP!

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 2020年11月にリリースされたPro Tools最新バージョンではPro Tools|Carbonへの対応のほか、数々の新機能が実装された。画面が暗い配色になるダーク・テーマや、オーディオをMIDIへと変換するAudio to MIDI、Dolby AtmosのADMファイルのダイレクト・エクスポートが使用可能に。さらに、トラック上の複数のクリップを設定した分のスペースを空けて配置する、スペース・クリップ機能も追加。膨大なオーディオ・ファイルをインポートする音響効果やサウンド・ライブラリー制作で重宝するだろう。また、書き出しのワークフローをプリセット化することができるようになった新しいバウンス・ウィンドウが追加。ビデオ・インポート機能は強化され、MXF op-1aファイルからビデオとオーディオを同時にインポート可能になっている。さらに、Pro Toolsサブスクリプションとソフトウェア・アップデート+サポート・プランでは、CELEMONY Melodyne 5 Essentialが無償で提供される。

 

【本特集の続きは近日公開予定】

Pro Tools|Carbon 製品情報

www.avid.com

 

特集「Pro Tools|Carbonのパワーをこの手に!」 

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『特別企画・Pro Tools|Carbonのパワーをこの手に!』は、サウンド&レコーディング・マガジン 2021年2月号でもお読みいただけます。

 

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