「iZotope Stutter Edit 2」製品レビュー:3つのエフェクト・モジュールを新搭載し モジュレーション・カーブを作成できるスタッター・プラグイン

f:id:rittor_snrec:20200708214025j:plain

 皆さんこんにちは、椎名豪です。普段、私はアニメ/ゲームの音楽を手掛けており、ゲーム『鉄拳』シリーズの制作では、スタッター・プラグインiZotope Stutter Edit 1をかなり多用しています。今回は、待ちに待ったStutter Edit 2がリリースされたので、早速レビューしてみたいと思います! 

各モジュールの順番を自由に入れ替え可能

 Stutter Edit 2はMac/Windowsに対応し、VST/AU/AAXプラグインとして動作します。立ち上げると、そのデザインがかなり一新されたことに驚きました。個人的には、スタッターの持つ未来的かつスタイリッシュなイメージにピッタリだと感じます。また、STUTTERやBUFFER、DISTORT、LO-FIなどの各エフェクト・モジュールは画面左端に縦一列で並べられ、すっきり見やすくなった印象。それぞれのモジュールをクリックすると、各パラメーターや後述する“Curve Editor”画面が表示されます。以前は画面全体に各モジュールとパラメーターがびっしり並んだレイアウトだったのですが、今回はモジュールごとにゆったりと表示されているため視認性が向上しているように思います。

 

 モジュール名の左側にある六角形のマークをクリックするとモジュールのオン/オフができ、右側にある3本の横線をドラッグすると、モジュールの順番を自由に入れ替えられるので便利です。

 

 Stutter Edit 2では、既存モジュールのアップデートに加えて、3つのモジュール=コム・フィルター/コーラス/リバーブが追加されました。これまでのモジュールは、どちらかというと派手なエフェクトを施せる印象だったのですが、追加分は空間系エフェクトが中心のためか、オケとなじむような効果や、よく聴くとシンセ・パッドの残響音がすごくねじれているといった、細かい処理ができるようなったと感じます。近年のチル系EDMのシンセ・リード/パッドに使ったり、映画などの効果音作りにも役立つでしょう。

EDMからFXまで充実したプリセット群

 各エフェクト・モジュールを使う上で外せないのが、今回の新機能“Curve Editor”です。これは各パラメーターをクリックすると自動的にモジュール設定画面の右側に表示され、ワンクリックで画面を拡大することができます。Curve Editorを使えば、パラメーターをDAWのテンポに同期させてモジュレーションを施すことが可能です。カーブは、Curve Editor画面右端にある12種類のプリセットから選ぶか、マウスでカーブ・ポイントを追加して作成することもできます。これによって、エフェクトのドライ/ウェット量をリズミカルに調整したりというような時間軸での変化を、視覚的に、そしてより自由にコンロトールできるようになりました。まさに“鬼に金棒”とはこのことです!

f:id:rittor_snrec:20200708214252j:plain

❶ Curve Editorのフル画面モード。画面ではディレイを扱っており、Lchのディレイ・タイムが1拍の間に2646.2msから2333.7msへ4回変化するカーブが描かれている。また、画面右端には12種類のカーブが用意されており、ここから好きなカーブを選択したり、グラフ内にマウスで新たなポイントを追加することも可能だ

 Stutter Editの魅力は、何と言ってもさまざまな効果をMIDIコントローラー一つ押すだけで実現できること。各モジュールを組み合わせたプリセットのことを“ジェスチャー”と呼びますが、これは画面上部の中央にある“Gesture Bank”から選択できます。正直な話、Stutter Edit 2のプリセットはすごいです……。具体的には、パッド・シンセに使えるような空間系エフェクト中心のものからSF系の効果音に即戦力となるもの、EDM、ダブステップ、グリッチ・ホップのフレーズ制作に使えそうなアグレッシブなもの、あとはトラップに特化したもの、怪獣の鳴き声のような音になるものなど、とにかくクリエイターの想像力を刺激するプリセットが満載です。テープ・ストップのプリセットも地味ですがかなり使えますので、まずはいろいろ遊んでみるのがよいかなと思います。

 

 ほかにもStutter Edit 2にはAUTOモードという新機能があり、ボタン一つで設定したエフェクトをトリガーし続けることができます。この状態からさらに任意のパラメーターにオートメーションを設定すれば、より複雑な処理を施せるでしょう。画面右下にはアウトプット・セクションが設けられ、リミッターも搭載されています。ここでのパラメーターにもCurve Editorが内蔵されているので、さらにダイナミックな処理が可能ですね。もはやStutter Edit 2はスタッターの域を超え、クリエイティブなサウンド/フレーズ生成ツールと言っても過言ではないでしょう。制作の強力なツールとなること間違いありません!

 

椎名豪

f:id:rittor_snrec:20200708214445j:plain

【Profile】東京を拠点に活動する作曲/編曲家。主にアニメやゲーム、舞台などの劇伴音楽を手掛けている。代表作には、アニメ『鬼滅の刃』、ゲーム『鉄拳』シリーズや『ゴッドイーター』シリーズなどがある

 

製品情報

www.izotope.jp

iZotope Stutter Edit 2

20,900円(税抜)

f:id:rittor_snrec:20200710113846p:plain

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp