GENELEC GLM 4.1 × 美濃隆章 〜キャリブレーション速度の改善やプラス方向への補正を実現

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GENELECのSAM(Smart Active Monitor)システムの設定やキャリブレート、コントロールを行うGLM(Genelec Loudspeaker Manager)ソフトウェアがGLM4.1として大幅にアップデートした。前回、美濃隆章によるGLM4&同軸構造のThe Onesシリーズ8341Aの体験記を紹介したが、美濃は本格的に制作へ導入。GLM4.1も既に活用中とのことで、再度美濃のスタジオを訪ねたところ、GLMが制作へ与えた好影響や飛躍的な精度の向上が明らかになった。

Photo:Hiroki Obara

GLM4.1の進化ポイント

 GLM4.1の核となるのが、キャリブレーション・アルゴリズムのAutoCal 2だ。キャリブレーション速度が高速化し、完全にクラウドのみで動作することで、常に最新のアルゴリズムを利用可能に。さらに、100~300Hzの範囲を中心周波数としてプラス方向への補正を行うポジティブ・ゲインが搭載されるなど、補正応答性や精度が大幅に改善された。

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 REQUIREMENTS 
▪Mac:MacOS 10.11以降(INTEL製CPU。APPLE Silicon CPUの場合はRosetta 2使用)
▪Windows:Windows 10(64ビット版のみ)
▪共通:2GB以上のHDD容量、インターネット接続(インストールおよびGLM ソフトウェアのダウンロード 、Cloud AutoCal 2 を使⽤するキャリブレーション、Local AutoCal パッケージを最初に使⽤する際のマイクキャリブレーションファイルの⾃動取得など)
*測定には、別売りのGLM Kit(キャリブレーション・マイク+GLMネットワーク・アダプター)が必要となります

ダウンロードはGENELEC Webサイトより(無償)

音像がくっきり定位し奥行きが感じられる

 8341Aのサウンドを「ほかのスピーカーだと違和感があるくらい慣れました」と話すほど、使い込んでいる様子の美濃。あらためてその魅力を尋ねてみよう。

 「音像がくっきり定位するし、奥行きがしっかり感じられますね。聴いていて楽しい部分と正確性の両方を持っています。このスタジオは定在波の影響が前と後ろであるので、それをなるべく受けないように以前はスピーカーをかなり部屋の中央寄りに置いていましたが、補正のおかげで20cmくらい壁に近付けられるようになりました。設置場所の有効範囲がかなり広がり、部屋を広く使えることに気付きましたね」

 前回の取材段階で既に導入を決意していたという美濃。

 「試聴した時点で導入に迷いは無かったですね。ただ、一回り大きい機種の8351Bとは迷いました。ミックスなら8341Aで十分ですが、8351Bはさらにパワーがあり、生ドラムを大迫力で体感しながら録れるんです。でも持ち運ぶには8341Aが良くて。家でもスタジオと近い音で鳴らせて助かりますし、結果的にトータルですごく満足しています」

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同軸構造を持つThe Onesシリーズの8341AとGLMの補正効果により、以前より20cmほど壁に近付けて配置できるようになったという

 8341Aの導入は、制作効率の向上ももたらしたという。

 「スピーカーが信用できればできるほど、いろいろなシステムで聴き直す手間がだいぶ減ります。以前はヘッドフォンやラジカセで繰り返しチェックしていましたが、8341Aだけで周波数のへこみや出ている部分が確認できるようになりました。迷いが減って録りの段階から楽になりましたね」

低域のパワー感が濁ること無くリッチになった

 GLM4.1では、新たにポジティブ・ゲイン(プラス方向への補正)を搭載。美濃は補正の印象の変化をこう語る。

 「前バージョンでは、くっきり定位する反面、低域がややシャープになり過ぎる部分もあったんです。でも、GLM4.1でかなり変わりましたね。定在波がある44Hz、88Hz辺りはすっきりさせつつ、100~300Hz辺りの低域のパワー感が濁ること無くリッチになっている印象を受けました。太い音で、なおかつ立体的に聴けて、とても満足です。この帯域の確認のためにわざわざバウンスしてカー・ステレオで聴くこともあったので、そこがより正確になったのは大きいですね」

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美濃のスタジオでのリスニング・ポジションはちょうど定在波の“腹”に当たるといい、44Hz辺りに10dB以上の膨らみが生じるが、下画面のグラフで分かる通り、キャリブレーションで大幅にカットされている

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美濃のスタジオでの測定結果グラフ。青線の補正に適用されたフィルターを見ると、GLM4.1で実装された新機能“ポジティブ・ゲイン”によって、100〜300Hz付近で0dBを超える補正を行っていることが分かる

 左右対象のキャリブレーションも改善され、低音域のフィルターは個別に適用し、高音域のフィルターのみが左右対称に適用されるようになった。この変化に美濃は耳で気付いたという。

 「今までは左右同一のEQで補正した方が耳になじんでいたんです。でもGLM4.1にしてから、別々のEQ設定での位相ずれを感じにくく、すっきり聴こえるようになりました」

 スタジオ・モニターとキャリブレーション・ソフトの両者を自社開発するGENELECならではの優位性も語られた。

 「買って終わりじゃなく、どんどん良くなっていくので長く使えそうですし、良い買い物をしました。いずれはこの部屋を改装してサラウンド・ミックスもしようと思って。SAMシリーズであれば機種を混ぜて使えるのもすごいですよね。L/C/RはThe Ones、サラウンドは2ウェイのSAMスタジオ・モニターというシステムにしようかなと考えています」

 

美濃隆章
[Profile]ポストロック・バンド、toeのギタリスト/エンジニア。クラムボン、mouse on the keys、ゲスの極み乙女。、Chara、bonobos、LUCKY TAPESなども手掛けてきた

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