ライブPAから店舗BGMまで活用可能な可搬性とパワーを兼ね備えるL1 Pro16 〜ポータブルなコラム型PAシステム BOSE L1 Proを試す【第2回】

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 コラム型ラインアレイ・スピーカーBOSE L1 Proシリーズ。今回は、シリーズの中でも可搬性とパワーのバランスに優れたL1 Pro16をピックアップする。レビューを担当するのは原宿ストロボカフェでPAエンジニア兼店長を務める吉田裕也氏。シンガー・ソングライターanzuによるアーティスト目線での使用感も併せて注目してほしい。

 

16基のドライバーを搭載し水平180°をカバーする中高域アレイ

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 L1 Pro16は3つのパーツで構成される。写真左から、サブウーファーとミキサー内蔵のパワー・スタンド、高さを調整できるアレイ・エクステンション、中高域用アレイ。中高域用アレイには、16基の2インチ・アーティキュレーテッド・ネオジム・ドライバーを搭載し、180°の水平カバレージを誇る。サブウーファーには、10×18インチのレース・トラック型ドライバーを採用している。

 

ツマミ1つで複数パラメーターを調整可能な内蔵ミキサー

 サブウーファーを搭載したパワー・スタンドには、3chミキサーを内蔵する。マイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2、Bluetoothワイアレス接続またはAUX入力端子(ステレオ・ミニ/ステレオ・フォーン)×1がスタンバイ。

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チャンネル・パラメーター・コントロール(緑枠)
音量、高音(TREBLE)、低音(BASS)、リバーブを調整できる。チャンネルのエンコーダーを押すとコントロールするパラメーターを変更でき、回すことで各項目の値を設定する

 

専用アプリL1 Mixで使用機材に合わせたセットアップを提供

 L1 Proシリーズ各機種に対応のiOS/Android対応アプリL1 Mixは、無償でダウンロード可能。Bluetooth LE接続でミキサーの各パラメーターを調整できる。ToneMatch/System EQ設定も変更でき、ToneMatchは、アプリ内でマイク/インストゥルメントのそれぞれをより詳細に設定可能だ。

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L1 Mix内のToneMatchのマイク設定から“︎Shure”を選択すると、SHURE SM57やSM58など主要な機種を選択でき、最適な音質補正が自動的に行われる

 

パワー・スタンド用カバー&専用バッグ

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 L1 Proシリーズは別売りで専用アクセサリーもラインナップ。L1 Pro16用にはパワー・スタンド用カバーL1 Pro16 Slip Coverと専用バッグL1 Pro16 System Roller Bagを用意。


ネジや工具が一切不要の簡単なセットアップ
3chミキサー内蔵のパワー・スタンド

 BOSEより以前から販売されているポータブル・ラインアレイPAシステム、L1シリーズ。今回は最新のL1 Proの中から、L1 Pro 16を紹介していく。

 

 L1 Pro 16全体の大きさは355(W)×2,012(H)×456(D)mmで、重量は22.9kgとなっている。弊社では以前発売されたL1 Compactを所有しているが、それと比べると一回りほど大きい。筆者はL1 Compactのサウンドを気に入っているので、しっかりとした大きさや重量感から、L1 Pro16への音の期待が高まる。

 

 主なパーツは3つ。本体となるサブウーファー・パワー・スタンド、ポール状の細長いパーツの中高域用アレイ、それらの間を中継するアレイ・エクステンションの3点だ。アレイ・エクステンションを挟んで使用することにより、ステージの高さやスタンディング/着席など会場の環境に合わせてカバレッジを最適化することが可能となっている。ネジや工具などは一切不要で、差し込むだけで簡単にセットアップできるのも手軽でとても良い。

 

 本体のサブウーファー・パワー・スタンドには3chミキサーを内蔵。ch1/2にはXLR/TRSフォーン・コンボ端子&ファンタム電源付きのマイク/ライン入力を備える。ch3はステレオ・フォーンおよびステレオ・ミニのAUX入力や、Bluetoothによるワイアレス接続が可能だ。

 

低域から高域まで奇麗に整えられた高音質
聴き慣れた曲も新鮮なサウンドに聴こえる

 今回は弊社ライブ・ハウス=原宿ストロボカフェにて製品テストを行った。まずはch1にSHURE SM58をつなぎ、声でのチェック。BOSEらしい低域から高域まで奇麗に整えられた高音質はL1 Pro16でも感じられる。本体に搭載されているミキサー部分のエンコーダーはシンプルにVOLUME/TREBLE/BASS/REVERBとなっており、1つのボタンを押して調整したいパラメーターをセレクトしていく。TREBLE/BASSで高域/低域の増減を調整するだけで、大げさではなく程良い具合でのイコライジングがされていく印象がした。また細かいポイントだが、ツマミを動かすと自照式のコントロール・メーターが光り、L1 Compactより視認性が良くなっている。このさりげない改良点が個人的には気に入った。

 

 L1 Proシリーズ各機種に対応のiOS/Android対応アプリ“L1 Mix”を使用するとBluetooth LE接続による遠隔での操作が可能となる。このアプリでは、本体内蔵のToneMatchに関する詳細設定が可能。マイク、インストゥルメンタルで各メーカーの代表的な機種があらかじめ設定されていて、使用する機材に合わせて簡単に設定できるようになっている。あらためてSHURE SM58をセレクトしてみると、さらにイコライジングが最適化された印象を持った。

 

 次に、Bluetooth接続でスマートフォンから音楽を流してみた。Jポップからジャズ、クラシック、ロック、EDMとさまざまなジャンルを聴いてみたが、キックやベースといった低音のパワフルさ、高音の倍音まで明りょうに聴こえ、普段聴き慣れている音楽でも新鮮な音となって聴こえてきた。SYSTEM EQを“MUSIC”モードに変えてみると低音がさらに強調され、ダンス・ミュージックは特に気持ち良く聴こえる。例えば、アパレルや飲食店のBGMスピーカーとしてL1シリーズを使えばお客さんは音にこだわったお店だと認識するだろう。

 

弾き語りにマッチするLIVEモード
アコギの細かなニュアンスを正確に伝えられる

 シンガー・ソングライターのanzuさんに協力いただき、実践的なテストも実施。ch1にボーカル・マイク、ch2にアコースティック・ギターを接続し、弾き語りで歌ってもらった。弊社ライブ・ハウスと同規模のカフェ・ライブを想定し、モニター・スピーカー兼FOH PAとしてアーティスト本人の横から少し斜め後ろの位置に設置してみた。

 

 アーティスト本人に演奏してみた感想を尋ねたところ、“指のタッチ一つまで細かく表現されているような音質”と感じたそうだ。SYSTEM EQのセッティングを変更した際の印象もそれぞれ異なる。OFFでは“フラットで素直な音の印象がした。演奏を丁寧にしなければという気持ちになった”という。MUSICモードは低音が強調された印象で、アコースティック・ギターでの演奏よりもDJプレイなどの音楽再生に合いそうだ。SYSTEM EQの中で一番マッチしたのはやはりLIVEモード。先述の通りTREBLE/BASS/REVERBは、程良いバランスで変化し、サウンド調整が破たんなく行える。ボーカルで不要とされる低域部分やギターの細かなニュアンスなどを正確に伝えられるようチューニングされている印象だ。

 

 持ち運びがとても手軽でサウンドも申し分無いパワフルさ。16個のドライバーによるJ字型アーティキュレーテッド・ラインアレイは180度の水平カバレージを実現している。この1台でクラブやバーといった小中規模の会場でハイクオリティのサウンドをオーディエンスにしっかりと届けられる製品だ。

 

吉田裕也
【Profile】ライブ・ハウス原宿ストロボカフェのPAエンジニア兼店長。ライブ・サウンドのほかにもSCANDALなどのマニピュレートも手掛けるなど、DAWソフトへの造詣も深い。

 

BOSE L1 Pro16

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SPECIFICATIONS
■ユニット構成:2インチ径ネオジム・ドライバー×16基+10×18インチ楕円形サブウーファー ■指向特性:水平180°×垂直0〜−30° ■最大SPL:124dB ■外径寸法:355(W)×2,012(H)×456(D)mm ■重量:22.9kg

REQUIREMENTS(専用アプリL1 Mix)
■iOS:12.0以降、iPhone/iPad/iPod Touchに対応 ■Android:6.0以降

 

製品情報

pro.bose.com

 

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