ギター弾き語りからDJまで対応可能なシリーズ最小のL1 Pro8 〜ポータブルなコラム型PAシステム BOSE L1 Proを試す【第1回】

 BOSEのPAシステム「L1 Pro8」

 2月に発売となるコラム型ラインアレイ・スピーカーBOSE L1 Proシリーズ。今回は、シリーズの中で最小のL1 Pro8をピックアップし、PA/レコーディング・エンジニアであり、ギタリストとしても活動する西川文章氏によるレビューで紹介していく。コンパクトな筐体に秘めたパワフルなサウンドの秘密を、じっくりと解き明かしていこう。

用途別に高さを変更可能なアレイ・エクステンション

S1 Proは3つのパーツで構成される。

 L1 Pro8は3つのパーツで構成される。写真左のパワー・スタンドは、サブウーファーとミキサーを内蔵する。写真中央のパーツは中高域用アレイ。パワー・スタンドに直接接続して使用することも可能だが、写真右のアレイ・エクステンションを間に挟んで使用することにより、最長約2mに。スタンディングや着席、ステージ上への設置や直置きなど、さまざまなスタイルに対応できるようになっている。

マイク/ライン/Bluetooth入力対応の3chミキサー

パワー・スタンドには、3chミキサーを内蔵。ch1/2には、ファンタム電 源搭載のマイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)を備える

。ch3 は、Bluetoothによるワイアレス接続、またはAUX 入力(ステレオ・ミニ/T RSステレオ・フォーン)のいずれかを使用できる

 パワー・スタンドには、3chミキサーを内蔵。ch1/2には、ファンタム電源搭載のマイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)を備える。ch3は、Bluetoothによるワイアレス接続、またはAUX入力(ステレオ・ミニ/TRSステレオ・フォーン)のいずれかを使用できる。

リモート操作が可能になる専用アプリL1 Mix

L1 Proシリーズ各機種に対応のiOS/Android 対応アプリL1 Mixは、無償 でダウンロードできる

 L1 Proシリーズ各機種に対応のiOS/Android対応アプリL1 Mixは、無償でダウンロードできるようになっている。本アプリからは、VOLUME/TREBLE/BASS/REVERBの各パラメーターの調整をワイアレスで行うことができ、離れた場所から好みの設定に変更することも可能だ。

 

 そのほか、ToneMatch/System EQ設定の変更も可能。ToneMatchは、アプリ内の環境設定で、より詳細な設定を行うことができるようになっている。MICメニューには、各メーカーの代表的な機種があらかじめ設定されている。また、INSTメニューには、ギター、キーボード、DJなど、楽器ごとのプリセットが用意されているので、使用する機材に合わせて簡単に設定できるようになっている。

持ち運びや保管に便利な専用アクセサリー

L1 Pro8は、運搬や保管に役立つ専用アクセサリーも充実している

 L1 Pro8は、運搬や保管に役立つ専用アクセサリーも充実。パワー・スタンド用カバーのL1 Pro8 Slip Cover、専用バッグL1 Pro System Bagが別売りのオプションとしてラインナップされている。

スタンディングから着席のイベントまで対応する
幅広いカバレージ・エリア

 L1 Pro8はBOSE L1 Proシリーズの中で最もコンパクトなシステム。ポータブルでありながら、最大音圧118dB SPL(ピーク)、45Hzまでの低音を再生可能で、従来のL1 Compactと比較してもとてもパワフルなサウンドです。

 

 高音部は8個のドライバーをC字型に縦に配列することで、垂直のカバレージはより高いところから低いところまで、言い換えれば、スタンディングから着席のイベントまで対応。水平方向は180°のカバレージを保ちながら、よりクリアなサウンドをオーディエンスに届けることができます。低音部は従来の円形ではなく、縦長の楕円形に近い形をしたレース・トラック型サブウーファーを搭載。コンパクトでありながら、従来の12インチ・ウーファーに匹敵するほどの低音再生を実現し、これにより45Hzまでの超低音の再生が可能になっています。そして内蔵3chミキサーにはファンタム電源を装備した2chのマイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)を搭載しているので、コンデンサー・マイクやアクティブ・ダイレクト・ボックスなども使用可能です。もう1つのチャンネルでは、1/4インチ・ステレオ・フォーン、3.5mmステレオ・ミニ・ジャック経由での入力、Bluetoothによるワイアレス・ストリーミングが可能。さらに、リモート機能としてiOS/Android対応の専用アプリL1 Mixが用意されているので、ワイアレスでさまざまな調整ができます。

パワー感のある中域の再生能力で
スネア/ギター/ボーカルをバランス良く再現

 では開封してセッティングしてみます。いわゆるモジュラー方式で、サブウーファー内蔵のパワー・スタンドにエクステンション部分、その上に中高域用アレイをつなげていきます。この辺りは従来のL1 Compactと全く同じなので、使ったことがある方は簡単にセットアップできると思います。高さは最長で約2m。これくらいの高さがあれば、スタンディングのイベントでもある程度後方まで音を飛ばすことができますね。

 

 まずはBluetooth接続でスマートフォンから音楽を再生してみます。用途に合わせてEQを最適化するSystem EQという機能も搭載されていますが、ここではオフにします。ここまでの設定も非常に簡単。出音は……めちゃめちゃ良いです。びっくりしました。高域と低域はもちろん、中域の再生もとても良いです。こういったコンパクト・アレイ・システムは、従来の機種を幾つか使用したことがありますが、高域や低域は割と出ても中域が物足りなく、パワー感の無いサウンドになりがちだと感じていました。しかし、L1 Pro8は全く問題ありません。スネアやギターの中域も、ボーカルも、全体のバランスやパワー感なども、スタジオ・モニターに全く引けを取らないサウンドです。そのまま音量をどんどん上げ、私の作業場のスペースでは限界な程に音量を上げていきましたが、音が破たんすることはなく、ピークに達するわけでもなく、淡々と音が響き渡りました。低音は量感が十分にあり、体感できる低域まで伸びていて、かつタイトで余計な濁りが全く無く、キレがあります。踊れます。歌えます。こいつはヤバイです……。小さめのクラブなどであれば、L1 Pro8が1台、もしくは2台あれば十分対応できるのではないかと感じました。

モードごとにキャラクターを調整するSystem EQ
マイクや楽器に適した設定が可能なToneMatch

 そのままSystem EQをLiveモードとMusicモードに切り替えて試聴してみます。Liveモードは低域と高域が抑えられ、歌や楽器の演奏向きに。Musicモードは低域が強調され、クラブ向きのサウンドになりました。

 

 今回は、System EQをLiveモードに設定し、NEUMANN KM184を使ってガット・ギターを収音します。マイクはスピーカー正面から1.5mくらいのところに設置。スピーカーに向かうような形でガット・ギターを弾いてみます。このようにスピーカーから離れた場所にセッティングする場合でも、専用アプリのL1 Mixを使うことで、ギターを弾きながら音量などを調節することができます。

 

 また、L1 ProシリーズにはToneMatchというプリセットEQを搭載。事前に登録されているマイク(Mic)の種類や、DJなどを含む楽器(Inst)を選ぶことで、ある程度EQが最適化されます。プリセットにKM184は無かったので、ここでは、ToneMatchはInstモードに設定し、楽器の種類は“AcousticNylon String w/cond”を選択。スピーカーの正面で結構な音量まで上げてもハウリングはしません。また、ToneMatchを使うことで、デフォルトの音より余計な低音と高音がカットされ、自然なガット・ギターの音になっていると感じました。L1 Pro8は、弾き語りなどで、メイン・スピーカー兼モニター・スピーカーとしての使用にも非常に良いと感じました。

 

 サウンドに関しては、お世辞抜きでこのクラスの製品では抜群だと感じます。パワーも十分ですし、ToneMatchなどの機能も使いやすく、シチュエーションを問わずクオリティの高いサウンドを簡単にオーディエンスに届けられる製品です。

 

西川文章
【Profile】大阪を拠点に活動するPA/レコーディング・エンジニア。大小さまざまな会場を回り、豊富な経験を持つ。かきつばたやブラジルなどのプロジェクトで、ギタリストとしても活躍している。

BOSE L1 Pro8

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SPECIFICATIONS
■ユニット構成:2インチ径ネオジウム・ドライバー×8基+7インチ×13インチ楕円形サブウーファー ■指向特性:水平180°×垂直40° ■最大SPL:118dB ■外径寸法:2,005(W)×318(H)×440(D)mm ■重量:17.65kg

REQUIREMENTS(専用アプリL1 Mix)
■iOS:12.0以降、iPhone/iPad/iPod Touchに対応 ■iAndroid:6.0以降

製品情報

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