「JBL PROFESSIONAL CBT 200LA-1」製品レビュー:50mm径のフル・レンジ・ユニット×32を備えるコラム型スピーカー

JBL PROFESSIONALCBT 200LA-1
CBT 200LA-1は、高さ1m/幅10cm弱のコラム型(柱状)キャビネットに50mm径のフル・レンジ・ユニット×16をラインアレイ状に配置したパッシブ・スピーカー、CBT 100LAを縦に2台連結し、ラインアレイ効果をより強化した1台。早速、その実力に迫るとしよう。

垂直方向の音質を均一化
指向角度は15°と30°を選択可


本機には、製品名の由来にもなっている独自の技術“Constant Beamwidth Technology”が採用されており、多くのスピーカーで狭くなりがちだった高域の垂直指向角度を拡大している。これにより、200Hz〜16kHzの垂直指向角度の差がわずか数度に抑えられているため、聴取位置によらず均質なサウンドが得られるという。スピーカー・ユニットをラインアレイ状に配置した場合、垂直指向角度の中で中高域にピーク/ディップ・ポイントが発生することがあり、聴取する高さによって音質が変化しやすいのだが、本機はそれを回避しているのだろうか?今回は35mm径パイプの角度可変式スタンドを使い、本機を床から80cmの高さに設置。距離を変えながら、座ったり立ったり脚立に上ったりして、あらゆる高さから試聴してみた。音のキャラクターはJBLらしい明るいトーン。聴取位置は最も高いところで約3mに及んだが、確かにどの高さでも音質の変化は感じられなかった。また垂直指向角度から外れると、音量が見事に減衰する。Constant Beamwidth Technologyにより、指向角の外への音漏れが軽減されているようで、天井への反射に起因する残響なども少なくなる。こうした特性を、スピーカー本体だけで実現しているのは素晴らしい。垂直指向角度は、上下2つのモジュールでそれぞれ15°(Narrowモード)と30°(Broadモード)を切り替えることができる。スピーカー・ユニットの取り付け角度を変化させることなく指向性を調整する場合、各ユニットのレベルやイコライジングに差を付ける必要が出てくる。大型システム向けのラインアレイでは、多チャンネルのパワー・アンプやDSPによってこれを実現しているが、本機は内蔵のパッシブ回路だけで2種類の指向性を作り出すことに成功。これは驚くべきことだ。そして、実際にきちんと15°と30°が切り替わる。理論上は、指向角度を広げるほどに高域が少しずつロール・オフしていくのだが、本機では切り替えによる音質上の問題は感じられなかった。 

各モジュールを異なる指向角に設定し
距離による音圧差を抑制


さて、大型のラインアレイは複数のスピーカー・モジュールを“J”の形に設置することで、近距離と遠方の音圧を均一化させている。本機ではスピーカー・ユニットが一直線上に固定配置されているわけだが、先述の指向角度切り替え機能を応用することで遠方の音圧を引き上げ、距離による音圧差を抑えることができる。上のモジュールを15°、下のモジュールを30°に設定する“APG(Asymmetrical Progressive-Gradient)”モードで、この効果が得られるのだ。よくできた機能で、本機を可搬用スピーカーとして使った際、手軽にJ形配置の恩恵が享受できる。また、ライブ・ハウスなどでサイド・モニターとして使うことも可能。音量を抑えていてもステージ全体に満遍なく音が伝わるため、ステージ・サイドに立つ演奏者はうるさくなく、距離のあるセンターにはアレイ全体の音を必要十分な音圧で届けることができる。もしセンターにいるボーカリストがサイドにやって来ても、マイクにかぶる音量が低いため、ハウリング・マージンを多めに見積もることが可能だ。垂直方向の指向角度を見事にコントロールしたCBT 200LA-1。設備用/可搬用のいずれにも使いやすいモデルだ。  ▲前面のグリルを外したところ。50mm径のフル・レンジ・ユニット×16個を備えたモジュールが縦に組み合わさっている▲前面のグリルを外したところ。50mm径のフル・レンジ・ユニット×16個を備えたモジュールが縦に組み合わさっている    (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年11月号より)
JBL PROFESSIONAL
CBT 200LA-1
283,500円/1本
▪スピーカー構成:50mm径フル・レンジ・スピーカー×32 ▪指向性:150°(水平)×15°(垂直/Narrowモード)、30°(Broadモード)、22°(APGモード) ▪許容入力:650W ▪周波数特性:80Hz〜20kHz(−10dB) ▪外形寸法:99(W)×2,000(H)×153(D)mm ▪重量:15kg