底面左右にバスレフ・ポートを設置
フォーンやRCAピン入力にも対応
今回テストするのは、Mシリーズの中でも小型のM030。5インチ・ウーファーを積んだ2ウェイのアクティブ・モニターです。まず箱を空けて印象に残ったのはスピーカーの小ささで、正面からみるとA4サイズよりも小さく、奥行きも19cmと小ぶりで、これなら住宅事情に制限のある自宅スタジオでも使い勝手が良さそう。重量も4.6kgと軽量で、移動やセッティング変更も容易です。
筐体は、少し丸みを帯びた北欧らしいシンプルで格好いいデザイン。新設計のバスレフ・ポートが、スピーカーの下駄のような形状をした部分(内側)にあるのがユニークです。本体前面には電源オン/オフを表示するLEDがあり、本体背面に入力端子やスイッチ類がまとめられています。入力はXLR/TRSフォーンのコンボ端子と、DJ機器でよく使われるRCAピン端子にも対応。そのほかには、3段階の入力感度切替スイッチ、テーブルでの反射や低域を補正するためのEQスイッチ、壁際に設置したときに使用するBass level調整スイッチ、そして電源スイッチとメガネ型電源端子が装備されています。ボリューム・ノブは無いので、環境によってはモニター・コントローラーなどが必要になるかもしれません。
タイトでパワフルな低域が特徴
音量の大小で音像が崩れない
それでは実際に音を出してチェックしていきましょう。まずは、筆者のスタジオのスピーカー・スタンドに設置して、進行中のプロジェクトのミックスに使用しました。まず驚かされたのはそのサイズからは想像できないローの鳴り。タイトかつパワフルながらも誇張はなく、打ち込み系キックはアタックの量感が見えやすい印象を持ちました。これらはMシリーズのために新設計された、筐体の素材やバスレフ・ポートの形状によるところが大きいでしょう。さすがクリエイター向けとうたうだけあって、8000シリーズよりもノリのいい音がして、やる気にさせてくれます。
アンプはツィーター30W、ウーファー50Wで、苦情が来るくらいの音量まで無理なく鳴らすことができます。音量の大小によって音像が崩れることもなく、長時間聴いても疲労を感じにくい音だと感じました。ウーファーとツィーターのつながりもよく、GENELEC特有の奥行き感は健在です。M030でミックスしたものを、筆者が普段使用しているモニター・スピーカーに切り替えて鳴らしても同じようなバランスで聴こえ、派手な誇張が無いモニターだと感じました。
次にデスクの上に直接置いてテスト。通常こういったセッティングは、ローからローミッドが反射してぼやけた音になるケースが多いのですが、本体背面のトグル・スイッチで低域補正用EQをオンにすると、80Hz以下が2dB下がり、すっきり無理なくモニターできました。ローがタイトなので、EQでの補正無しでそのまま置いても結構いける音だったりします。
今度は壁際に置いたテレビの真横においてテスト。ノーマルのセッティングだとローエンドがだぶつき気味になりますが、背面のBass levelスイッチでウーファーのレベルを0/−2/−4dBで調節できます。すぐ後ろに壁があるような場合は−2dB、部屋の隅などに設置する場合は−4dBが良い感じになるでしょう。
通常のスタジオ・モニターは設置場所にシビアで、自宅で使うときはモニター本来の実力を発揮できない場所に設置せざるを得ない場合もあります。しかし、M030はそういったケースでこそ実力を発揮できると感じました。スタジオ用の8000シリーズより1ランク下という印象も無く、自宅スタジオで曲作りからミックス、マスタリング、ライブの準備にまでも使えるオールマイティな製品です。実勢価格がペアで15万円程度だそうで、GENELECが本気を出して作った高品質なクリエイター向けモニターと言えるでしょう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2013年11月号より)