「AVIOM A360」製品レビュー:モノラル/ステレオの両入力に対応した16chのパーソナル・ミキサー

AVIOMA360
AVIOMと言えば、最近ではインイア・モニター用のパーソナル・ミキサーが多くのコンサートで使用されています。設定が容易であることや、各社のデジタル卓とシームレスに接続できることなどが人気の理由でしょう。そして今回、新機能を備えたモデルA360が発売されました。

AVIOM独自のデジタル伝送方式
“A-Net”で音声を受信


A360は、A-16IIの上位機種にあたる16chのパーソナル・ミキサーです。AN-16/I V.2という専用のインプット・モジュールを用いることで、AVIOM独自のデジタル・オーディオ伝送規格“A-Net”で信号を受けることができ、AN-16/I V.2を2台用いるとすべてのチャンネルがステレオになります。また、同じA-Netシステムの中でA-16IIと混在させて使うことも可能です。外観から見ていきましょう。カラーはブラックで、トップ・パネルはA-16IIより大きく、ボディは薄く設計されています。重量はほぼ変わらない1.54kg。操作子に関しても、チャンネル・セレクト・ボタンやボリューム・コントロール・ノブの配置が大きく変わっておらず、A-16IIのユーザーでもなじみやすいと思います。ボタンのタッチは実に軽く、自照式なので視認性に優れています。そのほか、マイク・スタンドに取り付ける際のマウント・アダプターのネジ位置もA-16IIと同じです。 

スムーズで聴き取りやすい音質
専用ソフトで事前の仕込みが可能


今回は16ステレオ・インプットで使用してみました。スペック・シートを見てみると、周波数特性は“2Hz〜22kHz”と極めてワイド。早速手持ちのパラ素材を立ち上げて、A-360とA-16IIの音質を聴き比べてみると……その違いに驚きました。とにかくスムーズかつひずみ感の少ない音で聴き取りやすいのです。ボリューム・コントロールは両機共にステップ式を採用していますが、A360の音量変化は極めてリニアな印象です。各チャンネルは、低域寄り〜高域寄りまで7段階のイコライジングが可能。パンニングの自由度も高く、モノラル・チャンネルの定位調整はもちろん、Spread機能を使用すればステレオ・チャンネルのイメージを変化させることができ、聴きやすいモニター・ミックスを簡単に作り出すことができます。背面のステレオ・ミックス・アウトはライン・アウトとヘッドフォン端子を兼ねており、フォーンのものとステレオ・ミニのものをそれぞれ1つずつ装備。どちらかの端子のヘッドフォンしか手元に無いという場合も変換アダプターを用意する必要はありませんし、2つの端子は同時に使えるため一方をヘッドフォン、もう一方をスピーカーにつなぐことも可能。マスター出力には、トーンを調整するための3バンドEQが搭載されています。A360には、A360 Channel ManagerというWindows対応の無償ソフトが用意されています。これを使用すれば、チャンネル・アサインをカスタマイズすることができ、作成したファイルはUSB経由でA360本体に読み込むことが可能です。異なる現場で同じ設定を使用する際に便利だったり、事前にセットアップが作れるのでセッティングが素早く行えます。また、ミュージシャンによって異なる要望にも対応しやすいでしょう。従来と変わらないA-Net環境の中で、音の良い機材へ移行できるのは素晴らしいことです。今回紹介した機能を使いこなし、素晴らしいモニター環境を作っていただければと思います。 
▲背面には、左からライン・アウトとヘッドフォン端子を兼ねたステレオ・ライン・アウト(ステレオ・ミニ、フォーン)やモノラル・ライン・アウト(XLR)、USB端子、モードの切り替えスイッチ、A-Netイン(Cat 5e)を装備 ▲背面には、左からライン・アウトとヘッドフォン端子を兼ねたステレオ・ライン・アウト(ステレオ・ミニ、フォーン)やモノラル・ライン・アウト(XLR)、USB端子、モードの切り替えスイッチ、A-Netイン(Cat 5e)を装備
    (サウンド&レコーディング・マガジン 2013年11月号より)
AVIOM
A360
99,750円
▪チャンネル数:モノラル16/ステレオ16 ▪量子化ビット数:24ビット ▪サンプリング・レート:44.1kHzまたは48kHz ▪周波数特性:2Hz〜22kHz(+0.2dB、−3dB) ▪外形寸法:279.4(W)×46.6(H)×175.2(D)mm ▪重量:1.54kg