YAMAHA RUIO16-D レビュー:PA用デジタル卓でVSTプラグインを使用するためのオーディオI/O

YAMAHA RUIO16-D レビュー:PA用デジタル卓でVSTプラグインを使用するためのオーディオI/O

 YAMAHAからハーフ・ラック・サイズのオーディオI/O、RUIO16-Dが発売された。重量1kgで、持ち運びやすいサイズながら多機能な一台となっている。PAの現場で実力を発揮するであろう本機についてレビューしよう。

YAMAHAとSTEINBERGのプラグインが付属。音作りからレベル監視用までラインナップ

 RUIO16-Dは、デジタル卓にDanteで接続し、卓に入力した最大16chの信号へVSTプラグインをかけるためのオーディオI/O。卓の入力にプラグインをセンド&リターンでかけるような要領で、そのインターフェースとして機能する。プラグインを立ち上げる場所は、Mac/Windows対応の付属ソフトVST Rack Pro。これをインストールしたパソコンとRUIO16-DをUSB接続し、信号をやり取りする形だ。

 

 本体前面のマイク/ライン・イン(XLR)×2はプリアンプやファンタム電源を内蔵しており、Dante接続時にYAMAHAのデジタル・ミキサーであればch15/16にアサインされる。-26dBのPADが付いているため、卓とほぼ同じゲイン幅で入力音量の調整が可能だ。

 

 電源供給は、パソコンとUSB Type-Cで接続してバス・パワーを利用する。スイッチを切り替えることにより、汎用の5V電源アダプターなどでも駆動させることが可能だ。USB端子の両端には抜け留めのネジがあり、XLR入力端子も抜け止めの付いたタイプになっていて、安全性が確保されている。また、パソコン経由の音を手動でバイパスするトラブル防止用スイッチも付いており安心だ。

YAMAHA RUIO16-Dのリア・パネル。左からアナログ出力端子(XLR)×2系統、パソコン接続用USB Type-C端子、5V電源アダプターなど外部電源用USB Type-C端子、Dante端子(EtherCON)×2(プライマリー、セカンダリー)が並ぶ

リア・パネル。左からアナログ出力端子(XLR)×2系統、パソコン接続用USB Type-C端子、5V電源アダプターなど外部電源用USB Type-C端子、Dante端子(EtherCON)×2(プライマリー、セカンダリー)が並ぶ

 まずは普段使っている音響測定のマイクとラインの2系統の入力で使用を試みた。音響測定ソフト側ではRUIO16-Dを自動で認識する。アナログ入力はch15/16にアサインされるため、その設定変更が必要になったが問題無く作動した。

 

 続けてVST Rack ProをインストールしたパソコンとRUIO16-DをUSBで接続。Danteを使い、YAMAHAのデジタル・ミキサーQL5との接続を試みた。RUIO16-Dの16イン/16アウトはパソコン内のAUDINATE Dante Controllerに現れ、パッチングすることによってQL5との接続が可能だ。各チャンネルのインサートにRUIO16-Dで割り当てられたDanteチャンネルを入力することで、VST Rack Proが使えることになる。

 

 VST Rack Proでは好みのVST3プラグインを16chに対して使用することが可能だ。しかも、RUIO16-Dには33種類のYAMAHAおよびSTEINBERG製プラグインが付属している。MultibandCompressorなどのダイナミクス系、またVSTプラグインならではのDistortion、YAMAHAの定番リバーブRev-XやDelay、Chorus、そしてマスターに使えるGEQ-30やPEQ、Comp、さらに配信現場で使えるレベル監視プラグインのSuperVision、トータル・コンプのMaximizerやBuss Comp 369などもそろう。このように、RUIO16-Dでは自分専用のプラグイン設定を16ch分持ち運びできるようになるのだ。

VST Rack Proの画面

VST Rack Proの画面。16chに対してVST3プラグインをそれぞれ7つ使用できる。各チャンネルはミキサーのように扱うことができ、チャンネルごとの設定保存や全体をシーンとして保存することも可能。レイテンシー補正設定やMIDIリモート・コントロール設定も行える

常に同じ環境を持ち歩けるというメリット。アイディア次第で数多くの使い方が見つかる

 昨今のPAは配信のアウトプットを兼ねることがよくある。しかしPAの環境は、必ずしもDanteで構築された環境とも限らない。その場合は2chのアナログ・イン/アウトを利用して、コンプやレベル・メーターなどを使い配信アウトをコントロールすることができる。またアナログ・ミキサーであっても、RUIO16-Dを使うことで、ステレオ・マスターや重要なモニター・アウトに30バンドのグラフィックEQやパラメトリックEQをプリセットすることが可能だ。レイテンシーはPAで気になるレベルではないだろう。また2イン/2アウトの単体のリバーブ・マシンにもなるし、TestGeneratorを使えば、簡単にピンク・ノイズを出すこともできる。

 

 ほかにも、例えばパソコンもしくはスマートフォンから音源を再生し、RUIO16-Dをボリューム調整できるBGM出力として使用できるだろう。USBバス・パワーを供給できれば、プリアンプとヘッドフォン・アウトを利用して、音を聴きながらマイク・セッティングの確認などにも使えるかもしれない。また、アナログ・インの2系統を舞台で進行するためのガナリ・マイクや影マイクに利用しても、LANケーブルのみで音声信号を送出することができるのはメリット。その際、5Vの汎用電源アダプターが使えるのも便利だ。

 

 RUIO16-Dによって常に同じ環境を持ち歩けるということは、時間短縮も含め大きなメリットとなるだろう。ミキサーがDanteに対応していなかったとしても、音響測定をはじめ、アイディア次第で数多くの使い方ができることがお分かりいただけたかと思う。

 

 PAオペレーターにとって、その日のライブに結果を残すことは使命でもある。ミキサーをはじめ、慣れていないデジタル機器と向き合うことはとてもハードルが高いことで、そのハードルはどんどん上がっているようにも思う。時間内に結果を残すまでのプロセスは、機械と向き合うか、音と向き合うか、人と向き合うかだ。機械と向き合う時間が少しでも短縮されてスムーズになれば、より音や人と向き合う時間が増えることにもなる。RUIO16-Dはそのような環境作りに一役買う存在になる可能性を秘めているオーディオ・インターフェースだ。

 

山寺紀康
【Profile】PAをメインに手掛けるサウンド・エンジニア。角松敏生、浜田省吾、久保田利伸、スピッツなどのライブでPAを担当してきた。尚美学園大学の芸術情報学部情報表現学科で准教授を務める。

 

YAMAHA RUIO16-D

オープン・プライス

(市場予想価格:165,000円前後)

YAMAHA RUIO16-D

SPECIFICATIONS
▪サンプリング・レート:最高96kHz ▪シグナル・ディレイ:250μs未満 ▪入出力:XLR入出力端子×2系統、ヘッドフォン・アウト、Dante(16イン/16アウト)、USB Type-C(18イン/16アウト) ▪電源:USBバス・パワーまたは5V/1.5Aの外部電源供給 ▪外形寸法:180(W)×42(H)×121(D)mm ▪重量:1kg

製品情報