MOJAVE AUDIO MA-37 レビュー:SONY C-37Aを現代的な解釈で再現した真空管コンデンサー・マイク

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 広大なヘッドルームで知られるSONY C-37Aは、もともとレッキング・クルー(1960〜70年代にかけてロサンゼルスで活動したスタジオ・ミュージシャンの総称)に大変人気のあったマイクだ。U2やピーター・ガブリエルのプロデューサーとして知られるダニエル・ラノワのほか、近年ではボン・イヴェールなどが好んで使用したという。キャピトル・レコードやサンセット・サウンドなど、ロサンゼルスの老舗スタジオでは現在もよく使われている。その伝説的なビンテージ・マイクC-37Aを現代的な解釈で再現したというMOJAVE AUDIO MA-37を見ていこう。

カーディオイドとオムニの2つの指向性が選択可能

 MOJAVE AUDIOは、テクニカル・グラミーを受賞した経歴を持つデヴィッド・ロイヤー氏(ROYER LABSのリボン・マイクで有名)が、1985年にカリフォルニア州フラートンの自宅ガレージで始めたマイク・ブランド。ロイヤー氏は30年もの長い間C-37Aのファンであり、MA-37はC-37Aに対するロイヤー氏の現代的な見解として開発された製品とのことだ。

 

 C-37Aは6AU6という5極管の真空管を用いた設計であったが、MA-37は現在入手しやすいEF86管を用いている。またC-37Aはフィルターがハイパス3段、ローパス1段であった一方で、MA-37では現代の録音事情に合わせてハイパス2段のみへと変更されている。電源装置にあるコントロール・ノブで、M(フラット)、V1(100Hz)、V2(200Hz)の3つのフィルタリング・モードを選択可能だ。このハイパス・フィルターは自宅録音でも威力を発揮し、外部ノイズ(特に邪魔になる低域のグラウンド・ノイズ)を除去するためにうまく使うと重宝する機能である。

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MA-37の電源装置。右下にマイク・インとアウトが1つずつ並ぶ。右上のノブは、ハイパス・フィルターのモードを切り替えるもので、M(フラット)、V1(100Hz)、V2(200Hz)の3種類を選択できる

 またMA-37は、LUNDAHL製トランスを採用している。さらに、1930年代にRCAによって開発されSONYに採用された機械的アプローチを特徴とする、カーディオイドとオムニの2つの指向性が選択可能なカプセルを搭載。“シンプルでありながらエレガント”というロイヤー氏の設計哲学に沿って、回路は単段真空管アンプをベースにしている。見た目はC-37Aを踏襲しつつも、現代的でかわいらしいデザインになっている。

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付属のケース。マイク本体と電源装置、ケーブルがまとめて収まる作りになっている

ナチュラルで奥行きがある

 では実際にいろいろなシーンで使用して、そのサウンドを確認していこう。MA-37と同じ真空管系マイク代表としてNEUMANN U67を、そして一般的なコンデンサー・マイク代表としてAKG C414B-ULSを使って比較していく。また、マイク・プリアンプはNEVE 1073を用いた。

 

 まずはボーカル。ハイパス・フィルターのポジションはM(フラット)を選択した。第一印象は非常にナチュラルな音! 落ち着いていてとても自然な音だ。ウイスキーの宣伝文句では無いが、“何も足さない、何も引かない”という音である。一聴するとC414B-ULSやU-67に比べやや地味な印象に聴こえるかもしれないが、ナチュラルに録りたい場合や、エンジニアが加工するサウンドの土台として使う場合にはこういった音の方が扱いやすいだろう。C414B-ULSの方が高域成分が強くクリアに聴こえるが、人によってはそれが若干冷たい印象に聴こえそうなほどナチュラルな音だ。またU67と比べると周波数レンジは狭く感じるが、とにかくナチュラルな音なのでクラシック音楽や自然なボーカルの響きを生かしたい楽曲などには向いているのではないだろうか。

 

 続いてスチール弦のアコースティック・ギターに立ててみる。U67に比べて派手さは無いが、空間の奥行き感はそん色無いように感じた。次にナイロン弦のギターに立ててみる。これはドンピシャで合っているサウンドだ。MA-37はボサノバやクラシックの録音にはうってつけではないだろうか。ナチュラルで奥行き感もあり、このまま何ら加工しなくても申し分ないと思った。私の印象では、ドラムやパーカッションよりも、弦楽器や木管楽器、ナチュラルなボーカルに向いてるマイクだと感じた。ゲインは低めで、C414B-ULSに比べ−15dB、U67に比べて−20dBほどになっている。ぜひSN比の良い高ゲインのマイク・プリアンプとともに使っていただきたい。

 

 MOJAVE AUDIO MA-37は、C-37Aという60年も前のマイクの再現機のためゲインが小さめで、指向性の調整にマイナス・ドライバーが必要だったりと、現代のマイクに比べると使い勝手がこなれていない部分もある。しかしこのマイクにしか出せないナチュラルなサウンドは、作品の差別化に貢献するだろう。デジタル機材全盛のこの時代だからこそ、こういったマイクの価値が再認識されるのではないだろうか。ビンテージ・サウンドに興味のある方にはぜひ試していただきたいマイクである。

 

山田ノブマサ
【Profile】福山雅治、南佳孝らのミックス/マスタリングを担当。LOVE PSYCHEDELICOやダイヤモンド ユカイの制作ではミュージシャンとしての手腕も発揮。ジャズに注力したハイレゾ配信amp'box Lable主宰。

 

MOJAVE AUDIO MA-37

440,000円

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SPECIFICATIONS
▪指向性:単一指向/無指向 ▪感度:-46dB ▪周波数特性:30Hz〜18kHz ▪セルフ・ノイズ:18dB ▪出力インピーダンス:170Ω ▪最大音圧:120dB(PADオフ)、135dB(PADオン) ▪PADスイッチ:15dB ▪外形寸法:51(φ)×152(H)mm ▪重量:約454g(マイク本体)

製品情報