LEAPWING AUDIO UltraVox レビュー:4つのパラメーターでボーカル処理を行うプラグイン・エフェクト

LEAPWING AUDIO UltraVox レビュー:4つのパラメーターでボーカル処理を行うプラグイン・エフェクト

 UltraVoxは、ボーカル・ミキシングに必要なダイナミクスとEQ処理を高品位かつ簡単に行うことができるプラグインです。マニュアルによると“テクノロジーが創造性の妨げにはなってはならない”とありますが、これはどういうことでしょうか。早速見て行きましょう。

コンプレッションの効き具合を明暗で表現。コンプ/ゲート/ハーモニクス/エアーを調整

 UltraVoxは、Mac/Windows対応の64ビット・プラグインで、VST/AAX/AUで動作します。今回はMac(macOS 10.14.6)を使い、APPLE Logic X(バージョン10.5.1)上で動作確認を行いました。コピー・プロテクトとしてマシンIDとシリアル・ナンバーを紐付けるため、インストール時にアカウント登録したメール・アドレスとシリアル・ナンバーを入力します。コンピューターは2台まで同時に認証でき、3台目以降はマシンの認証を解除することで使用可能です。

 

 それでは操作画面を見ていきましょう。画面中央にある丸いレーダーのような部分には、DAWにおける波形表示の横軸が円形となって表されています。暗いオレンジ色が入力波形、明るいオレンジ色がコンプレッション後の出力波形になっていて、その明暗の差でコンプレッサーの効き具合を把握できるのです。DAWの波形表示に比べ、少ない面積でより多くの情報を表示し、時間とともに変化するレベルを視覚的にとらえることができます。

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画面中央には、音の再生とともに時計回りで回転しながら2層の波形が出現。外側の濃い色になっている部分が入力レベル、内側の明るい色で表示された部分が処理後の出力レベルを示している

 左端にあるのは入力ゲイン・コントロールと入力レベルのメーター。単位はLUFSで、4秒のピーク・ホールドが付いていて、ボーカル・レベルを適切な入力ゲインに調整できます。続いて左上のCOMPRESSIONスライダーでは、右にドラッグするほどコンプレッサーが深くかかります。右上はGateスライダーで、右へ行くほどゲートのスレッショルドが上昇。左下のHARMONICSスライダーでは、2次倍音および3次倍音がとても穏やかに付加されます。右下のAIRスライダーは直訳すると空気ですが、EQ調整で12kHz付近をなだらかにブーストし、ボーカルの高域成分を自然に強調。右端には、最終的な出力レベル(LUFS)のメーターと出力ゲイン・コントロールが備わっていて、簡単な操作で適切なボーカル・レベルに調整することができます。

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入力レベルは、メーター上に表示された白いスライダーをドラッグすることにより調整できる

ミキシングの知識の有無にかかわらず自然で扱いやすいボーカル・サウンドを得られる

 それではDAWのボーカル・チャンネルにインサートしてみましょう。デフォルトの設定では音量も音質も変化しないように設計されています。インサートしただけで10dBもレベルが大きくなるようなプラグインもありますが、UltraVoxは計画的なゲイン・ステージングの邪魔をすることが無いのが非常に好ましいことだと思いました。

 

 今回使用したボーカル素材は表現に応じて聴感上のレベルが小さ過ぎたり大き過ぎたりしていましたが、COMPRESSIONを上げるだけでピークが抑えられて聴きやすくなりました。また、2ms未満の比較的短いアタック・タイムと長いリリース・タイムのおかげで、ひずみを付加することなく自然とダイナミック・レンジを適切な範囲に収められます。次に、GATEでスレッショルドを歌の平均レベルより高くしたところ、歌以外の周囲の物音や空調ノイズ、ブレスなどが除去され、クリアなボーカルを得ることができました。HARMONICSは、聴感上変わらないくらい穏やかに変化しますが、正弦波で測定してみるとちゃんと倍音が付加されており、ひずみっぽくなるようなことは皆無で、非常に好ましい変化だと思いました。AIRは最大でも不自然な感じは無く、非常に軽快な空気感を得られます。このように、UltraVoxではミキシングの知識の有無にかかわらず、少ないパラメーター調整だけで自然かつ扱いやすいボーカル・サウンドが簡単に得られるのです。

 

 CPU負荷も非常に少ないため、例えばボーカリストが自宅録音をする場合などに、インサートしたままボーカルを重ねるような使い方にも良いと思います。モニター・チャンネルにUltraVoxをインサートしてモニタリングすることで、過度なコンプレッションによる失敗も防ぐことができるでしょう。

 

 その名前から、最初は1970〜80年代のニューウェイブ・パンク・バンドのボーカル・サウンドを得られるプラグインかと勘違いしましたが、UltraVoxはどちらかと言うとハイファイ系。透過的な処理で、優れたボーカル・サウンドを素早く実現したい人々のためのツールだと言えます。

 

Mine-Chang
【Profile】作編曲家/プロデューサーとしてアーティストへの楽曲提供やCM音楽などで活躍するとともに、prime sound studio form所属のレコーディング・エンジニアとしても活躍中。

 

LEAPWING AUDIO UltraVox

9,119円(価格は為替レートによって変動)

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REQUIREMENTS
▪Mac:OS X 10.13以降、AAX/AU/VST2/VST3対応のホスト・アプリケーション
▪Windows:Windows 8/10、AAX/VST2/VST3対応のホスト・アプリケーション
▪共通:64ビット、200MB以上の空き容量、インターネット接続環境、Eメール・アドレス(オーソライズ用)